出藍の誉れってどんな言葉?
“出藍の誉れ”という言葉を目にしたことはありますか? 読み方は「しゅつらんのほまれ」。これは、師匠よりも優れた弟子に対して使われる言葉です。この言葉の詳しい意味について、またなぜそのような意味つようになったのか、解説していきます。
「出藍の誉れ」言葉の意味
「出藍の誉れ(しゅつらんのほまれ)」は、以下のような意味をもつ言葉です。
弟子が師よりもすぐれているという評判、名声。
引用:小学館 デジタル大辞泉
「出藍の誉れ」は、弟子が師匠よりも大きく成長した際の誉め言葉に使います。師匠や弟子と聞くと少し堅苦しい印象もあり、現代においてはあまり使用されないように感じてしまいますが、これは教師と教え子などの関係においても活用できます。
言葉の由来
ではなぜ、弟子を誉めるときに「出藍の誉れ」と言われるようになったのでしょう。この言葉が生まれたのは、春秋戦国時代の中国です。当時活躍した思想家、荀子(じゅんし)が書いた『歓学』という思想書には「青は之を藍(あい)より取りて藍よりも青し」という一節があります。
青は之を藍(あい)より取りて藍よりも青し
《「荀子」勧学から》青色の染料は草の藍からとるが、それはもとの藍草よりももっと青い。弟子が師よりもすぐれていることのたとえ。出藍(しゅつらん)の誉れ。
引用:小学館 デジタル大辞泉
現代の意味に訳すと「学はもって已むべからず」は「学問に終わりはないため、決して怠ってはならない」となります。後半の「青は之を藍より取りて藍よりも青し」は、青色の染料を植物の藍から取ることが由来。「藍の葉から抽出される青色は、もともとの藍の葉よりもいっそう青くなる」ということを意味し、教えを受けた人が、教えた人よりも優れた能力を発揮することをたとえています。
▲藍の葉から青色の染料をとり、布を染める工程
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出藍の誉れの類義語
出藍の誉れと似た意味で使われる言葉は2つあります。1つ目は「鳶が鷹を生む」、2つ目は「青藍氷水」です。1つ目は比較的頻繁に耳にする言葉であり、馴染み深いといえるでしょう。2つ目は、出藍の誉れと同じく、普段はあまり聞かない言葉ですよね。それぞれの意味について、本章で解説します。
鳶が鷹を生む(とんびがたかをうむ)
「平凡な親から、優秀な子どもが生まれる」という意味で使います。言葉どおり「鳶」と「鷹」という2つの動物を比較し、優劣をつけた言葉です。鳶も鷹も同じタカ目タカ科に分類される鳥類ですが、鷹のほうが知能が高く、狩りが得意という印象が強いことから、凡庸なものを指して「鳶」、優秀なものを指して「鷹」と表現しています。
青藍氷水(せいらんひょうすい)
この言葉もまた、出藍の誉れと非常に似たニュアンスをもつ言葉です。「青藍」は「出藍」と同じく、藍の葉からとれた青色の染料のことを示します。氷水もまた「氷は水から作られるが、水よりも冷たい」という意味を表し、「教えを受けた人が、教えた人よりも優れた能力を発揮すること」をたとえています。
出藍の誉れの対義語
「出藍の誉れ」とは逆に、師匠が優れているにも関わらず、弟子が大きく成長できなかったケースに対する慣用表現もあります。出藍の誉れの対義語として知られる言葉は「不肖の弟子」と「瓜の蔓に茄子はならぬ」の2つです。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
不肖の弟子(ふしょうのでし)
師匠に似ず、出来の悪い「愚かな弟子」という意味で使われる言葉です。「不肖」という言葉には、未熟である、取るに足りないといった意味があります。つまり未熟で取るに足りない弟子が「不肖の弟子」ということです。
師匠よりも立派に成長した弟子を誉める「出藍の誉れ」とは、全く反対の意味であることが分かります。
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瓜の蔓に茄子はならぬ(うりのつるになすびはならぬ)
不肖の弟子とはまた違った意味ではあるものの、出藍の誉れの対義語として認識される言葉には「瓜の蔓に茄子はならぬ」というものがあります。
言葉どおり瓜という植物のツル(苗)から、茄子が育つことはないという意味です。この場合、平凡なものを瓜、優れたものを茄子と表現し、平凡な人からは平凡な人しか生まれないという意味です。
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【例文】出藍の誉れの使い方
では日常生活において「出藍の誉れ」という言葉を使うには、どのように活用すればよいのでしょうか。本章では「出藍の誉れ」の細かなニュアンスについて説明したのち、文章のなかで活用する場合の例文や、会話のなかで用いるための会話例を解説します。覚えた言葉を積極的に使ってアウトプットし、語彙を定着させましょう!
出藍の誉れは師匠も同時に讃える言葉
出藍の誉れは、弟子が師匠よりも優れているという意味で使われますが、決して師匠を貶めている言葉ではありません。「鳶が鷹を生む」のように、師匠を「平凡」と表現している言葉ではないのです。
優れた弟子が生まれることは、師匠の功績でもあります。弟子を立派に成長させた、師匠をも讃える言葉であるという点を忘れないようにしてください。
例文
・コーチとして彼に5年間野球を教えてきたが、今では私よりも速い球を投げるようになった。まさに出藍の誉れとはこのことである。
・当時中学生だった教え子が世間に出て活躍しているのを見ると、出藍の誉れだと思います。
どちらも師匠の視点から語られていますが、教え子の視点で「出藍の誉れ」を使うこともできます。
会話文の例
Aさん「先日、昔の教え子から連絡をもらったんだ。今は世界中を飛び回って、活躍しているそうだよ。」
Bさん「そうなのか。教え子が世間で活躍してくれるのは嬉しいものだよね」
Aさん「うん、正しく出藍の誉れだよな。私も教え子に恥ずかしくないよう、頑張らないと」
「出藍の誉れ」を正しく使おう!
本記事では出藍の誉れについて解説しました。「出藍の誉れ」という言葉は、師匠を上回るほど立派に成長した弟子を指して使われます。その類義語には「鳶が鷹を生む」や「青藍氷水」という言葉があり、対義語としては「不肖の弟子」や「瓜の蔓に茄子はならぬ」といった表現があります。5つの言葉を覚えて、ぜひ積極的に活用してくださいね。
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