先方の担当者は諸事情により、部長に連絡ができませんでした。「行儀を知らぬ輩」とのご判断はご容赦いただきたく存じます。
「輩(やから)」を、「よくない連中」の意味で使った例です。利害関係が生まれるビジネスの現場では、相手に騙されることもあるかもしれません。見極めが肝心ですが、悪い意味だけで見ると、真実をとらえ間違うので用心しましょう。
何も言わなくても、困った時に助け合えるチームメンバーは、私のかけがえの無い輩たちだ。
チームメンバーのことを「輩(ともがら)」と呼び、仲間として紹介しています。会社や志を同じくする「同類の人々」を「ともがら」と親しみを込めて呼ぶときに使えます。仲間意識が高まりそうですね。
第一営業部は、この数年、わが社のエースを輩出し続けている。
「輩(はい)」の「列をなして続々と起こる」を表現する「輩出」を使っています。日常会話での「輩出」は良い意味で使われることが多いのでは? 「輩」が悪い意味だけでないことがわかりますね。
繁華街にたむろする不逞の輩は、徹底的に取り締まる必要がある。
「不逞」にはかって気ままに振る舞うことや、あからさまに不満を表すことを表す言葉です。「不逞の輩(ふていのやから)」と言う場合は、無法なふるまいをする連中という意味を持ちます。
類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
「輩」の類語や言い換え表現には、どのようなものがあるのでしょう。「同列の仲間」や「同類の者たち」といえば、シンプルに考えると「仲間」「友達」「友」のことですね。
同志
「同志」は「どうし」と読みます。「私とあなたは同志だから」などと人に言われると、少し勇気が湧いてきますよね。同志とは「こころざしや主義・主張を同じくする」人やそのことを言います。ビジネスの現場などで、一緒に戦っていく人のことを思うと「輩」という文字の由来にも近いイメージです。
朋輩
「朋輩」は「ほうばい」と読み、「同じ主人に仕えたり、同じ先生についたりしている仲間」のことです。また、同じくらいの身分・年齢の友にも使います。「ともがら」に近い言葉ですね。
徒党
「徒党」は「ととう」と読み、「ある目的のために仲間や一味などを組むこと」です。「徒党を組む」のように使います。問題を解決に向けて集まった仲間や団体などを指すことも。
対義語にはどのようなものがある?
「輩」の対義語には、どのような言葉があるのでしょうか。「仲間」などの意味とは真逆になる言葉について、説明します。
敵
「輩」を同列の仲間とすれば、その対義語は「敵(てき)」です。「敵」は、戦いや競争、試合の相手を指します。
寄せ手
「寄せ手」とは、攻め寄せる側の軍勢のこと。「寄せる」という言葉から「寄り集まる」とイメージすると「仲間」と思いがちですが、「輩」とは反対の「敵」のことです。間違えないように注意しましょう。
「輩」の英語表現は?
英語で「輩」を表現すると、どのようになるのでしょう? 例文とともに、状況にあった表現について一緒に見てみましょう。
My husband is my best buddy who has shared joy and sorrow with me.(夫は私と苦楽を共にした最高の輩です)
「仲間」や「友達」を意味する「buddy」。「ともがら」「同じ仲間」という意味で、良い意味で使っています。元々は他人だけれども、一番近い同列の仲間である夫は、まさに人生最高の仲間といえそうですね。
It seems that they participated as the worst comrade.(彼らは最悪な輩として、参加したように思える)
「仲間、同士、僚友、組合員」などの意味がある英単語「comrade」。この「仲間、同士」の意味を「輩(やから)」ととらえた例です。その場の雰囲気を台無しにしたメンバーなどに対して、批判的な意味が込めています。
最後に
「輩」は「やから」と読み、素行の悪い人や性質が悪い人に対して、批判的なニュアンスで使うことが少なくないかもしれません。本来の意味は、「ともがら」や「はい」と読み、同列の仲間や友達をさして、自分を含めた大切な人と人の関係性をつなぐ言葉であることがわかりました。ビジネスシーンでは、できるだけ本来の意味を念頭に入れて、言葉を大切に使うことを心がけたいですね。
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