エアコンにまつわる「28℃」の正しい意味とは?
暑さが厳しいこの時季、みなさんはエアコンを何度に設定して使用しているでしょうか。夏場のエアコンといえば、特によく聞くのが「28℃」という数字。これは政府が節電方法として呼びかけたもので、環境省のクールビズの指針としても挙げられています。ところでこの「28℃」、次のうちどれを指しているのかわかりますか?
1. エアコンの設定温度
2. 室内温度
3. エアコンの設定温度と室内温度の両方
4. どちらでもない
「もちろん〝設定温度〟では?」と思うところですが、実は……
「エアコンの設定温度28℃」は誤り、「室内温度28℃」が正解
正解は「2. 室内温度」なんです。知らなかったという人も多いのではないでしょうか。パナソニックが行った調査では、「エアコンの設定温度」と答えた人が8割近く、正解の「室内温度」はわずか9%という結果に。「28℃」という数字の意味するところが正しく伝えられていないことがわかります。
【「2022年 夏のエアコン節電に関する調査」概要】
調査地域:全国
調査期間:2022年6月22日 (水) ~23日 (木)
調査方法:インターネット調査
調査機関:ジャストシステム
調査対象:20~60代の男女
有効回答:550名 (男性:327名、女性:223名)
パナソニック調べ
設定温度を28℃にしても室温が28℃になるとは限らない
そもそも設定温度を28℃にすれば室温も28℃になるのでは、と疑問が浮かびますが、実はエアコンは室内機内部のセンサーで温度を測定しているため、設定温度と実際の室温が異なっているケースも。家の構造や日当たりなども影響してくることに加え、エアコンのお手入れ不足などにより能力が発揮できていない場合もあります。温度計などで室温を確認しながら調整すると、より快適な空気環境を作るための一助に。
プロが教える!エアコンの節電術
熱中症の危険などもあるこの季節、エアコンは少しでも効率的に活用したいところ。夏場のエアコンを消費電力を抑えつつ使用するためのポイントを、エアコンについて知り尽くしているパナソニック エアーマイスターの福田 風子さんに教えていただきました。
1:「つけっぱなし」と「消す」を使い分ける
エアコンはこまめにオフにするより「つけっぱなし運転」の方がお得になることがある、というのはご存知の人も多いのではないでしょうか。これは、室内の温度が高いときにエアコンの運転をオンにすると、部屋を急速に冷やすために多くのパワーが必要になるため。いったん室内を適温にすればつけっぱなしでも少ない消費電力でキープできますが、短時間の外出の度に運転をオフにすると室温が外気温からの熱を受けて高温になるため、帰宅してオンにしたとき「強運転」となり、消費電力が増加します。
「つけっぱなし」もほどほどが大切
一方で、フィルターにホコリがみっしり付いた状態で運転させ続けると、モーターやコンプレッサーに負荷がかかってしまうことに。そのため「つけっぱなし」運転の場合でも24時間稼働は行わず、1日のうち数時間はエアコンを休ませ、自動おそうじ機能や内部クリーンが搭載されている場合はそれらを活用するのがおすすめです。
気温によってはこまめに消したほうがいい?
パナソニックが断熱性の高い住宅を想定して行ったシミュレーションでは、外気温が35℃以上の猛暑日のような場合は室温が上昇しやすいため「つけっぱなし」運転がお得ですが、30℃程度までであれば室内温度がそこまで上がらないため、「こまめに消す」運転の方が電気代の節約につながることが判明しました。住宅の断熱性や室内熱負荷などの環境にもよるものの、気温によってはこまめに消す方が効率的な場合もあるようです。
※パナソニック独自のアルゴリズムを用いて、同じ外出時間でも外気温条件によって帰宅時の運転の消費電力が異なることに着目したシミュレーションによるもの。
※パナソニック調べ。室内温度26℃、冷房温度設定26℃でのシミュレーション結果
※今回のシュミレーション結果は断熱性の高い住宅を想定。実際の電気代は、住宅の断熱性能やエアコンの設置環境等の使用条件によって異なります。
2:エアコンのフィルターを掃除する
能力の低下や消費電力の増加、本体の寿命を縮めることなどにつながるエアコンの汚れ。エアコンフィルターを1年間掃除しないと、フィルターの目詰まりにより年間で約25%電気料金が無駄になるという実験結果もあります。パナソニックが行った実験では、フィルター掃除をすることで年間約1万円以上※電気代を節約できることがわかりました。ということで、ここではエアコンのフィルターの掃除方法をご紹介します。
※パナソニック製品「CS-F401D2」を使用。電気代27円/kWhでの実験
エアコンフィルターの掃除方法:自動掃除機能が搭載されていない場合
(1) エアコンフィルターを取り外す
エアコンからフィルターを取り外します。特に久しぶりにパネルを開ける場合はフィルターがひどく汚れていることもあるため、窓を開けてマスクをした状態で行いましょう。
(2) 掃除機でほこりを取り除く
掃除機を使ってフィルターに溜まったほこりを取り除きます。
(3) 汚れが気になるときは水洗いや中性洗剤でつけ置き洗いをする
フィルターの油汚れやたばこのヤニ汚れ、においが気になるときは、やわらかい布やスポンジで軽くふくように水洗いします。汚れがひどいときは、薄めた中性洗剤でつけ置き洗いをしましょう。カビを発見した場合は、胞子をまき散らさないようにそっと浴室に運び、丁寧に洗い落とします。
(4) 陰干しする
洗った後は広げた新聞紙の上にフィルターを立てかけて陰干しし、十分に乾かします。直射日光やドライヤーの温風に当てることは避けてください。
エアコンフィルターの掃除方法:自動掃除機能が搭載されている場合
(1) 本体内のダストボックスのほこりを取り除く
掃除機能付きのエアコンはフィルターから取り除いたホコリを本体内のダストボックスに溜めるタイプが主流なため、多くの場合自分でほこりを取り除く必要があります。
(2) フィルターの汚れが気になるときは水洗いや中性洗剤でつけ置き洗いをする
掃除機能付きのエアコンでも、油汚れやたばこのヤニ汚れ、ペットの毛や長期使用でついたにおいは取れないため、フィルターを取り外して水洗いする必要があります。汚れがひどいときは、薄めた中性洗剤でつけ置き洗いしましょう。
(3) フィルターを陰干しする
直射日光やドライヤー乾燥は避け、フィルターを十分に乾かします。
3:冷房運転時に最適な風向きと風量を利用する
エアコンの風を上手に利用することで、冷房効率が上がり節電につながります。まず風向きですが、冷たい空気は低い場所にたまるため、一般的に冷房時は上向きで風を送ると広範囲を冷やせると言われています。扇風機やサーキュレーターを併用し、冷気のムラをなくすのもおすすめ。
次に風量。冷房の温度を1度上げるだけで約10%の節電になるとも言われますが、冷やすために使う電力よりも風量を上げるほうが使用量は少なく済むので、設定温度を下げるよりも風量を上げた方が節電になります。温度を1度上げて風量を上げることで、年間約1200円以上※節約できるという実験結果も。
※パナソニック製品「CS-F401D2」を使用。電気代27円/kWhでの実験
▼エアコンの設定についてはこちらもチェック!
4:部屋の中に直射日光が入らないようにする
意外にあなどれないのが、窓から入ってくる日光。効率よくエアコンを使うという面では、カーテンやブラインドはもちろん、窓の外にすだれや緑のカーテンなどを設置するのも有効です。カーテンの場合は窓との間に空気の層ができるので、断熱効果もあります。
5:室外機の周りに物を置いたり、囲ったりしない
エアコンの室外機の周辺に物を置いたり、熱の吹き出し口をふさぐような形で囲ってしまうと、エアコンの冷房効率が大きく低下する場合が。周りを整理整頓することで節電効果やエアコンの効きが高まります。
また、エアコンの節電性能は飛躍的に向上しているため、10年以上前のエアコンを使っている場合は、買い替えることで消費電力を大きく抑えられ安くつく可能性も。
何かと「夏のエアコンは28℃」と耳にしますが、設定温度ではなく室内温度のことだったというのは驚いた人も多いはず。夏のエアコンを効率的に使うために、ぜひ参考にしてみてください。
教えてくれたのは……
福田 風子さん
パナソニック エアーマイスター。パナソニック株式会社 国内空調マーケティングセンター エアコンマーケティング部。自宅に異なる3機種のエアコンを設置し、機能の違いや風の違いを感じ分ける。スマホを使って家中のエアコンを遠隔操作したり、時にはカビの発生したエアコンを自ら入手・分解して調べるなど担当の枠を超えてちょっとしたエアコンマニア。
情報提供:パナソニック