「三語文」を話す頃の語彙は
「三語文」は文法に着目した言葉の発達の目安ですが、語彙の獲得も並行して進んでいます。年齢ごとに獲得する語彙の目安はこのようになっています。
1歳ごろ:1~6語
1歳4か月ごろ:10~30語
1歳10か月ごろ:50語
2歳ごろ:200~300語
3歳ごろ:400~1,000語
参考文献:『0~3さい はじめての「ことば」―ことばの疑問あれこれ』小林哲生・著(小学館/2008)
目安としてはこの通りですが、お話しはじめのころには「バナナ」も「バス」も「ばあば」も、「ば」と言っていたりするので数えづらいです。反対に、50語を越えてきたあたりからは数を把握しきれなくなるので、いずれにせよ語彙数を数えるのは難しいのが実情。
個人差はあるものの、就学時には3,000〜1万語もの語彙を獲得するといわれています。多くの子どもがたった数年間でこれだけの数の語彙を獲得するのには、驚かされますよね。
【目次】
「三語文」を話さない?
三語文を話さない場合は、どうすればよいのでしょうか。日常でできる工夫をみていきましょう。
「三語文」を増やすには
三語文をなかなかお話ししないケースでは、お話しできる二語文のレパートリーがまだ少ないのかもしれません。いろいろな二語文を教えてあげましょう。
「ママ きて」
これは、文の構造としては、<呼びかけ+命令(お願い)>の二語文です。
「〇〇ちゃん のむ」
これは、<動作をする人(主語)+動作(動詞)>の二語文です。
「おっきい ふうせん」
これは、<ようすのことば(形容詞)+ものの名前(名詞)>の二語文です。
「〇〇くんの」
これは一見、二語文には思えませんが、<人の名前(名詞)+所有を表す助詞>の二語文ととらえることもできます。
このように、さまざまな文の構造パターンを経験していくことが大切です。
また、語彙のレパートリーがものの名前(名詞)に偏っていると、文のレパートリーは広がっていきづらいです。「食べる」「飲む」「洗う」「投げる」のような動作のことば(動詞)や、「大きい」「きれい」「長い」のような、ようすのことば(形容詞)などを意識して一緒に使っていくようにしましょう。
また、覚える力(ワーキングメモリー)にも注目。文でお話しするときには、複数の単語を頭に浮かべておく必要があります。ざっくり単純化すると、二語文の時期に同時に覚えられる言葉は2つ、三語文の時期に同時に覚えられる言葉は3つ、と考えることができます。
一次的に頭の中に浮かべて覚えておく力のことを「ワーキングメモリー」といいます。おかいものごっこ、郵便屋さんごっこなど、2つから3つのものを大人が注文し、取ってきてもらう遊びをしてみてはいかがでしょうか。「ティッシュ・リモコン、取ってきて」や「りんごとみかんとぶどう、ください」のように、遊びのなかで楽しく聞く注意力やワーキングメモリーを高めていくことができます。
最後に
「三語文」とは、子どもが3つの単語を使って話すこと。三語文を話すのは3歳くらいからが多いです。言葉の発達は個人差があり、環境との相互作用ではぐくまれていきます。子どもの現在の言葉の発達の力に合わせて、楽しくコミュニケーションをとりましょう。
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監修/言語聴覚士
寺田奈々
慶應義塾大学文学部卒、養成課程で言語聴覚士免許を取得。総合病院、プライベートのクリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務し、年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。
臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉にコトリドリルシリーズを製作・販売。2022年、初の著書「0~4歳 ことばをひきだす親子あそび」(小学館)を出版。
Instagram:@stkotori
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