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EDUCATION 子供の五感を育てる

2022.11.17

「怒りや悲しみ」と向き合える子に育てる親の心得|まずは「感情のラベリング」を手伝ってあげる

 

逆境や困難に遭ったときに、そこから立ち直る力を「レジリエンス」といいます。現在、レジリエンスについては世界中で研究が進められており、この力を幼少期に育てることで、心の健康、対人関係、学業に良い影響があることがわかっています。

新著『きみのこころをつよくする えほん』では、特に幼少期において最も重要な「自分のネガティブ感情に上手に対応する力」を育てるコツを紹介しています。本稿では、絵本の監修者である日本ポジティブ教育協会代表理事の足立啓美さんが、子どもへのレジリエンス教育の重要性と、日常生活の中でレジリエンスを身につけるコツを解説します。

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ネガティブ感情との上手な付き合い方

幼少期において重要になるのが、「自分の感情と上手に付き合う力」を育てることです。特に、不快な感情を持ちながら我慢できる力の存在は、以降のレジリエンスを育てることに大きく影響すると言われています。

「感情と上手に付き合う力」とは、自分の感情に気がつき、その理由を理解し、適切な対応をする力のことです。その中には、圧倒されるようなネガティブな感情に対応する力である情動制御の力も含まれます。

子どもの感情と上手につき合うサポートをするうえで最初のステップは、感情を言語化する「感情のラベリング」をお手伝いしてあげることです。

「感情のラベリング」とは、その子がその時にどんな感情を感じたのか?ということを言語化してあげることです。

「おもちゃをとられちゃって悔しかったね。悲しかったかな?」という具合に声をかけて、子どもが感じた気持ちをそのまま受け止めてあげ、そのうえでその感情を言葉にするサポートをすることで、子どもが感情をより上手に扱うことができるようになります。

親から感情を言葉にする手助けをしてもらうと、子どもは自分の気持ちとのつきあい方を学ぶことができます。加えて、「理解してもらえている」「自分の感じていることをそのまま受けとめてくれている」という相手への信頼感も生まれます。そして、このような信頼関係は、ストレスや困難な状況に立ち向かう時に大切なソーシャルサポートにもつながっていきます。

体への働きかけも有効

気持ちを言語化してあげるだけでも、心が落ち着くという場面を多々みるのですが、時になかなかうまく行かない時もあります。そんな時は、体への働きかけも有効です。

例えば、深呼吸は場所を選ばず行うことができます。自身の呼吸に注目することさえも難しい時は、ティッシュを丸めて机に置き、机の端まで息だけで飛ばすというようなゲームにして行っても効果があります。

『きみのこころをつよくする えほん』より抜粋(画像:『きみのこころをつよくする えほん』)

また、子どもたちは、気持ちを心だけではなく、体で強く感じる傾向があります。怒りや悲しみ、不安などのネガティブな感情や感覚が大きく膨らみすぎたときには、自分で抑えていけるように、上手な対応方法を身につけていくことも必要です。これが、情動制御の力を育てることにつながっています。

状況別に方法を考える

ある6歳の女の子は、悲しい時は「親にぎゅっと抱きしめてもらう」、イライラした時は「紙にクレヨンでぐるぐるかきなぐる」ことで気持ちが落ち着きました。このように、状況別にこんな方法が良さそうだね、と話し合うこと自体、レジリエンス教育の第一歩となります。

『きみのこころをつよくする えほん』より抜粋(画像:『きみのこころをつよくする えほん』)

言語化していくことは「共感力」を育てる

『きみのこころをつよくする えほん』より抜粋(画像:『きみのこころをつよくする えほん』)

また、感情に気がつき、言語化していくことは、自己理解だけではなく他者理解にもつながり、「共感力」を育てることにつながります。

レジリエンスマッスルを育てよう!

レジリエンスをはじめとする心の力は、体の筋肉を育てるのと同様に、普段の練習や工夫によって育てることができます。絵本の中では、「自分の素敵なところ」「自分が好きなこと」「最後までがんばったこと」「好きな人や困っているときに助けてくれる人」の4つの質問に答えることで、レジリエンスの筋肉を育てられることをご紹介しています。

先に、感情との上手な付き合い方についてお伝えしましたが、ネガティブ感情に対応するだけではなく、ポジティブな感情を活用することで、レジリエンスを育てることができることがわかっています。

うれしい、楽しい、興味がある、リラックスした気持ち……そんなポジティブ感情も子どもと共有することは、親子の絆を作ることにつながります。

親が子どもの気持ちをしっかりと受け止めて心の安全基地となると、どんどん挑戦をして、世界を広げていきます。時に、うまくいかずに落ち込んでしまうことがあったとしても、親子の絆が子どもの心の回復力になるのです。

困ったことがあったときだけではなく、普段の生活の中で、子どもたちのポジティブ感情を一緒にじっくりと味わい、得意なことだけではなく長所も認め、成功体験を重ねる支援をすることは、レジリエンスの筋肉を育てることにつながります。

また、レジリエンスは、個人の中で育つ力と、環境の影響とが相互しあって育っていきます。親子でレジリエンス教育に取り組むことで、個々のレジリエンスだけでなく、家族としてのレジリエンスが育っていくというメリットがあるのです。

筆者の講座を受けてくださっているお母さんと7歳の男の子が、お父さんがすごく疲れて帰ってきてイライラしていたから、「一緒に深呼吸をやろう」といってみんなでやりましたと報告してくれたこともあります。お父さんも「呼吸するだけでこんなに気持ちが変わるんだね!」と驚いていて、次の回から家族3人で講習を受けてくれました。

この大きな変化の時代に、日々の生活の中でしなやかな強い心を育てることができれば、これからの人生でどのようなことがあっても乗り越える力となっていきます。そのためにも、「感情と上手に付き合う力」を幼少期から身につけることを意識するといいでしょう。

『きみのこころをつよくする えほん』(主婦の友社)『きみのこころをつよくする えほん』(主婦の友社)

一般社団法人日本ポジティブ教育協会代表理事

足立 啓美

認定ポジティブ心理学コーチ。メルボルン大学大学院ポジティブ教育専門コース修了。国内外の教育機関で10年間の学校運営と生徒指導を経て現職。現在は、ポジティブ心理学をベースとした教育プログラムの開発、小学校〜高校、適応指導教室などさまざまな教育現場で、レジリエンス教育の講師として活躍中。ポジティブメンタルヘルスや組織開発にかかわる企業研修、ポジティブ心理学コーチとして管理職向けコーチングも行う。共著に『子どもの「逆境に負けない心」を育てる本』(法研)、『イラスト版子どものためのポジティブ心理学』(合同出版)、『見つけてのばそう! 自分の「強み」』(小学館)がある。

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東洋経済オンライン

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