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2018.06.21

効率的な仕事のために覚えておきたいノルマの功罪【飯田泰之 半径3メートルからの経済学】

 

アラフォー世代に刺さる経済、社会、働き方などについて、経済学者・飯田泰之さんがわかりやすく語ります!

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「元を取ろう」とすると損をする! そのノルマ、非効率かも?

仕事をする中で、「ノルマ」という言葉くらい嫌なものはありませんよね。毎日3本のアポイントを取れとか、月に5件の新規契約を獲得しろ――とか。第二次世界大戦後シベリアに拉致された日本兵たちが強いられた労働の規定量(Норма:ロシア語)が語源と言われており、その出自からして実にうれしくない単語です。 一方で、企業側にとっては従業員にまじめに仕事をさせ、より高い営業成績を上げるための必要悪と感じられるかもしれません。しかし、今日では下手なノルマ設定はむしろ生産性を低下させることが知られています。

例えば、あるタクシー会社が運転手に「1万円売り上げるまでは帰ってくるな!」と命じたとしましょう。雨の週末など、タクシーを使いたいと思う人が多い日にその達成は容易です。運転手はすぐに1万円分の売り上げを獲得し、事務所に戻ってくるでしょう。一方で、閑散期の平日ではなかなか1万円分のお客さんが捕まらない。その結果、運転手はお客さんを探して街中を長時間流したり、駅で延々と客待ちをすることになります。 このタクシー会社の運転手が「もっと稼げるはずの日には短く働き、稼ぎがよくない日に長く働いている」ことに気づきましたか? 1時間当たりの売り上げという観点からみると、これは最悪のノルマ設定方法といえるでしょう。 もちろん、現代のタクシー会社ではこのような愚かな労務管理は用いられていません。しかし、個人の働き方や生活に視点を移してみると、この手の愚かな目標設定が働き方の効率性やQOL(Quality Of Life/生活・人生の質)を下げているというケースは少なくないようです。

効率的な仕事法は、自分がノッてるときに集中的に働くこと

自分の中のルールとして「最低××の作業を終えるまで働く」とか「毎月△△円貯金する」と決めて行動をしている人がいます。仕事術や節約術といったビジネス書の中にはこの種の「自分ノルマ」の設定を勧めているものもありますが――正直、疑問です。 自分ノルマを守ることに固執しすぎると、体調や気分などで作業効率が低いときに限って長時間働いてしまったり、目先のお金を惜しんでせっかくのチャンスをふいにしたりといった結果になりかねません。

この傾向に拍車をかけるのが、焦りの感情です。仕事がうまくいかないと、それをカバーするために長時間仕事をし、オフの日にも仕事のことばかり考えてしまう。それは単に今は仕事をセーブして他のことに時間を使うべきだというサインかもしれません。プライベートでも同じです。ダイエットがうまくいかないとき、それは今あなたの体調がダイエットに向いていないということなのかもしれませんよ? 言うまでもなく、時間もお金も有限です。だからこそ賢く使いたいものですよね。効率的な仕事法は、自分がノッてるときに集中的に働くことです。そして賢いお金の使い方は、ビビッときたモノ・瞬間に使うこと。その瞬間は取り戻すことはできないのです。もっとも、毎日仕事のノリが悪かったり、しょっちゅうビビッときていてはだめですけどね。

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経済学者

飯田泰之

1975年生まれ。エコノミスト、明治大学政治経済学部准教授、シノドスマネージング・ディレクター、内閣府規制改革推進会議委員。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。わかりやすい解説で、報道番組のコメンテーターとしても活躍。

Domani6月号 新Domaniジャーナル「半径3メートルからの経済学」 より
本誌取材時スタッフ:構成/佐藤久美子

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