「向こう三軒両隣」とは親しく交際する近くの家のこと
向こう三軒両隣とは、自分の家の両隣と道をはさんだ向かい側、さらにその両隣の家を指します。日常的に親しく交際する近隣の家、というニュアンスで使われることが多い言葉です。
「向こう」は、正面や前方をあらわします。また物を隔てたあちらの方という意味もあり、この場合は家の玄関から道路を挟んだ向かい側を意味します。
■引っ越しの挨拶をする範囲とされる
向こう三軒両隣は、ご近所付き合いをする上で、特に親しくする家を指す言葉でもあります。引っ越してきた際には、少なくともこの範囲の家には挨拶に行った方がよいという意味でも使われてきました。引っ越しそばを配る範囲も、向こう三軒両隣がスタンダードであったようです。
■マンションの「向こう三軒両隣」とは
マンションの場合、向こう三軒両隣は両隣と上下の家とするのが一般的です。構造にもよるものの、マンションにはお向かいの家はないことが多いためです。
その代わり、マンション暮らしのトラブルの原因として多い生活音が響く可能性のある、上下の家との関係を重視するとよいでしょう。マンションに引っ越してきた際は、向こう三軒両隣にあたる両隣と上下の家に加え、管理人や大家さんに挨拶しておくことをおすすめします。
「向こう三軒両隣」に引っ越しの挨拶をする理由
ここまで、向こう三軒両隣はどこまでの範囲を指すのかということを、一軒家とマンションのそれぞれのケースを例に挙げてお伝えしてきました。引っ越してきた際にプライバシーや防犯などに配慮してあえて挨拶しないケースを除き、少なくとも挨拶をした方がよいとされるのが、向こう三軒両隣です。
向こう三軒両隣の家に挨拶をした方がよいとされる理由は、主に次の3つです。
・お互いにどんな人かがわかる
・ご近所トラブルの予防になる
・災害時の共助につながる
1つずつ解説していきます。
■お互いにどんな人かがわかる
向こう三軒両隣に引っ越しの挨拶をすると、お互いに隣にどのような人が住んでいるのかがわかり、安心感を得られます。対面で挨拶することで、隣の家の家族構成や住む人の年代などの基本情報を把握できるとともに、自分たち家族のことも知ってもらえるでしょう。
特に小さな子どもがいる場合は、子どもが騒ぐ可能性があることを前もって詫びることで、事情を理解してもらえる可能性が高くなります。隣の家にも子どもがいる場合は、「うちにも小さな子がいるので、気にしないでくださいね」と会話が広がるかもしれません。
■ご近所トラブルの予防になる
向こう三軒両隣の家への引っ越しの挨拶は、ご近所トラブルの予防にもなるでしょう。引っ越し時に挨拶をしておけば、その後顔を合わせた際も挨拶を交わしやすくなります。
顔がわかる近所付き合いになれば、まったく知らない相手の場合には見過ごせないようなことでも、寛容になれる可能性があります。うっかり出してしまった騒音や勘違いが原因のゴミ出しマナーの違反などは、顔見知りの仲であれば「ついやってしまったんだな」と、許し合えるかもしれません。
もちろん、ご近所付き合いのマナーは守る必要がありますが、ちょっとしたミスに対してお互いが寛容になれるご近所関係が構築できていれば、ストレスなく暮らせるでしょう。
■災害時の共助につながる
引っ越しの際に、きちんと向こう三軒両隣に挨拶をすることで、災害時の共助につながる可能性があります。前述のとおり、引っ越し時の挨拶は、お互いの家の基本情報が把握しやすくなる点がメリットです。
そのため災害時に「小さな子どもがいるから大変だろう」「車椅子を使う方がいるから、すぐには避難できないのでは」といったように、ご近所同士でお互いを気遣いやすくなります。お互いの安否を気遣うことが、災害発生時のスムーズな共助活動につながるでしょう。
「隣」を含む言葉・ことわざ
向こう三軒両隣と同じように、「隣」が入る言葉やことわざには、以下のようなものが挙げられます。
・隣り合わせ
・隣知らず
・隣の芝生は青い
それぞれ解説していきます。
■隣り合わせ
「隣り合わせ」は、お互いに隣り合っていることをあらわす言葉で、「隣り合わせに座る」といった使い方をします。また「危険と隣り合わせの暮らし」など、常に近い関係にあることをたとえる際にも用いる言葉です。
■隣知らず
「隣知らず」とは、近くに他の家がない状態や、またその家のことを指します。
さらに江戸時代には、「ぼたもち」のことを隣知らずと呼んでいました。一般的なお餅は、臼でつく際に「ぺったんぺったん」と音がします。しかしぼたもちは臼でつく工程がないため、隣に住んでいる人が気づかないうちに出来上がることから、隣知らずと呼ばれていたとされています。
■隣の芝生は青い
「隣の芝生は青い」とは、他人が持つものは自分のものよりも良く見える心理をあらわしたことわざです。
客観的には似たような持ち物や環境であったとしても、自分が置かれた環境や持ち物の良さを自覚することなく、他人のもののほうが良いと思ってしまう心理状態を指します。
「向こう三軒両隣」の意味を知ろう
向こう三軒両隣とは、自分の家の両隣と道をはさんだ向かい側とその両隣の家を指し、日常的に親しく交際する近隣の家、というニュアンスで使われることが多い言葉です。引っ越してきた際には、少なくともこの範囲の家には挨拶に行った方がよいという意味でも使われてきました。
マンションの場合、その構造上お向かいの家はないことが多いため、向こう三軒両隣は両隣と上下の家とするのが一般的です。引っ越し時の挨拶は、向こう三軒両隣にあたる両隣と上下の家に加え、管理人や大家さんに挨拶しておくとよいでしょう。向こう三軒両隣の意味を理解し、正しく使えるようにしましょう。
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