「沈黙は金」ってどんな言葉?
まずは「沈黙は金」という言葉の意味について解説します。また、意味だけでなくなぜ「沈黙は金」という言葉が生まれたのか知ることは、より深く言葉を理解することにも繋がるでしょう。
本章では「沈黙は金」の読み方や意味、語源について説明します。さらに本章の後半では、対義語である「雄弁は銀」についても触れていくので、参考にしてください。
■言葉の読み方と意味
「沈黙は金、雄弁は銀」は「ちんもくはきん、ゆうべんはぎん」と読みます。場合によっては、余計なことをたくさん語るよりも、あえて黙っている方が良い、という意味を持ちます。また謝罪する際は、下手に言い訳を並べ立てるよりも、黙っていた方が良いという意味合いも含んだ言葉です。
ただしこの言葉は、常に沈黙が正しいことを主張しているわけではありません。むしろ、「時には沈黙が雄弁に勝る」という点が重要です。
■「沈黙は金」の語源は?
「沈黙は金、雄弁は銀」の起源は、トーマス・カーライルの著書『衣装哲学』にあるとされています。カーライルは自らの思想を述べる中で「雄弁は銀、沈黙は金」という表現を用いました。彼は沈黙を金に例えており、「説得力のある言葉を持つことは重要ですが、黙るべき時を知ることの方がさらに重要である」と述べています。
■沈黙は金の対義語は「雄弁は銀」
「沈黙は金」という言葉に対比して使われるのが「雄弁は銀」です。「雄弁」とは、人の心を動かすような弁舌や力強い話術のことを指します。つまり「弁舌をふるうことは、銀ほどの価値がある」という意味合いです。
現在では「沈黙は金」という表現が「雄弁よりも沈黙の方が価値がある」と解釈されています。しかしこの言葉が初めて使われた当時は「金よりも銀の価値の方が高かった」という説が存在します。
「沈黙は金」の類義語
「沈黙は金」には、類似の意味を持つ表現があります。まず一つ目は「言わぬは言うに勝る」という言葉です。二つ目は「言わぬが仏」という言葉です。いずれも「(余計なことは)言わないほうが良い」といった意味合いを含みます。
また「言わぬが花」や「沈黙は是なり」という言葉もあります。本章ではこれら4つの言葉について、解説していきます。
■言わぬは言うに勝る
「雄弁は銀、沈黙は金」には、同様の意味を持つ言葉がいくつかあります。その一つが「言わぬは言うに勝る」ということわざです。これは「口に出して明確に述べるよりも、黙っている方がより深く思いが伝わる」という意味です。
たとえば、卒業式や退社式で、別れを惜しむ気持ちをはっきりと口にする人よりも、感極まって言葉が詰まってしまう人の方が、より強く悲しんでいると感じられるでしょう。
■言わぬが仏
「沈黙は金」と似たことわざとして、「言わぬが仏」という言葉もあります。しかし実は、この言葉は誤用です。本来「言わぬが仏」という表現は存在しません。「言わぬが仏」は、「知らぬが仏」という言葉の誤用とされています。
「知らぬが仏」の意味は、「知らなければ腹が立たないようなことも、知ってしまえば心が乱れることがある」ということです。つまり「知らない方が心穏やかである」という意味のことわざなのです。
■言わぬが花
「言わぬが花」には「余計なことを話すよりも黙っているほうが得をすることがある」や「すべてを話し尽くすと興味が薄れる」といった意味が含まれています。あえて言わずにいることによって、「洗練された魅力」や「趣」が感じられるのです。
このことわざは、江戸時代の浄瑠璃「新版歌祭文」にある「三々九度うは言わぬが花嫁」が由来とされています。
■沈黙は是なり
「沈黙は金」と似た意味を持つ言葉として「沈黙は是なり」という言葉もあります。「是」は正しくて道理にかなったことを意味する漢字であることから、「沈黙は是なり」は沈黙が正しい理にかなっていることを表しています。
あえて沈黙しているほうが良いといった教訓が含まれている点でも、「沈黙は金」と同じ意味をもつことわざだと分かるでしょう。
「沈黙は金」の使い方
「沈黙は金」は、言葉を発するよりも黙っている方が価値があるという意味を持つことわざです。この言葉を使うことで、適切なタイミングで黙ることの重要性を強調することができます。
本章では「沈黙は金」を正しく用いるために、いくつかの例文を紹介します。また使用に適したシーンも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
■使い方の例
まずは「沈黙は金」を使った例文として、以下3つを紹介します。
1.大切な商談においては、沈黙は金となる場合もあります。相手の要望を判断しながら発言することが必要です。
2.即座に考えていることを口に出すのではなく、沈黙は金とされることもあります。
3.子供が成長しても、親は口出しする傾向にありますが、親子関係では沈黙は金を守る方が良いとされます。