アカハラを知っていますか?
ニュースやネットなどでアカハラを取り上げることがありますが、何のことか知っていますか? アカハラはハラスメント行為の一つで、社会問題化しています。
アカハラは新しく出てきた概念ではあるのですが、きちんと内容を把握することで防げたり、対応することができたりします。アカハラが何を指すのか、ぜひ知ってください。
アカハラはアカデミック・ハラスメントのこと
▷アカデミック‐ハラスメント
《(和)academic+harassment》大学内で、権力や地位を利用して教員や学生に嫌がらせをすること。アカハラ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
上記にもあるように、アカハラはハラスメント行為の一つです。アカデミックな場である大学や大学院などの学術機関でのハラスメントに対して使われます。
アカハラは、その機関内部で権力を持つ人間(教授や指導教員)が、学生や大学院生、部下となる教員などに嫌がらせ(精神的・身体的損害を与えること)をすることを指します。
アカハラを放置すると、場合によっては事件や事故に発展しかねません。そのため、大学や機関は、具体的対策に乗り出しています。
ハラスメント行為とは
ハラスメント行為について、あらためて確認しましょう。セクハラやパワハラ、モラハラなどの言葉を知っていると思いますが、要は強い立場にいる人間が、弱い立場の人間に嫌がらせ行為をすることを指します。
ハラスメントの定義は、被害者が不利益を被り、それに対して苦痛を感じるようなすべての言動があてはまりますが、そこに加害者の故意の有無は関係しません。
国もハラスメント対策に乗り出しており、パワハラ防止法という法律ができました。これは職場でのいじめを防ぐことが目的です。また、厚生労働省も、事業主に対してパワハラ防止義務を課す、妊娠や出産、育休の際にセクハラが生じないよう行政指導をするなどの対策を講じています。
学生に対するアカハラとみなされるのは?
ここからはアカハラとみなされる行為について見ていきましょう。アカハラとみなされる行為はさまざまですが、いくつかピックアップして紹介します。まずは学生に対するアカハラです。いずれも正当な理由がない場合は、アカハラになるでしょう。
学習や研究の妨害や盗用
・学習や研究に必要な場所、機材、機器、資料などを与えない
・講義や研究、学会に参加させない
・本人が望まない研究テーマを無理やり押しつける
・学習や研究がしづらい状況に追い込む
・承諾なしに、教員の雑務を無理やり学生に押しつける
また、研究データを意図的に破棄する、研究結果やアイデアを無断盗用するのもアカハラとみなされます。
不適切な指導
・論文や研究、レポートのチェックを長期間放置する
・特定の学生だけ指導しない
・暴力行為や身体的攻撃をする
・物を投げる、暴言を吐く、大勢の前できつく叱責する
・金銭を要求する
上記の他に、妊娠している女性に対する暴言や退学の強要も、アカハラ行為です。
学位や単位の不認定
・単位を与えない
・卒論を受け付けない
・正当な評価をしない
・留年、退学などを促す
・学位や単位認定を交換条件に何かを強要する
学位や単位の認定は、一定の条件をクリアしなければなりません。それを満たしているのに単位が認定されない、不自然に評価が低いなどは、アカハラの可能性があります。
進路の妨害や侵害
・何度依頼しても、就職先や進学先に提出しなければならない書類を発行しない
・故意的に進路の情報を隠す
・進路の変更を強要する
・就職先や進学先の担当者に学生のことを悪く言う
・就職活動や進学準備を妨害する、禁止する
上記以外に、内定辞退や選考辞退を阻止するような行為も、アカハラと考えていいでしょう。
プライバシーの侵害
・成績や経歴、家庭の事情などの情報を不用意に他者に伝える
・学生が嫌がっているのに、しつこくプライバシーの詮索をする
・学生が所有するスマホやパソコンを見せるように迫る
・学生の承諾を得ず、メールアドレスや電話番号、IDを公開する
・緊急性のない連絡を深夜や早朝、休日などにして、返信や電話を強要する
学外での指導場所にホテルの客室や居酒屋などを指定し、無理やり学生を来させるというのもハラスメント行為です。このようなことがあったら、1人で判断せずに親や友達、他の教員、事務職員に相談するようにしましょう。
教員同士のアカハラとは
教員同士にもアカハラが生じることがあります。どのような行為が該当するのか見ていきましょう。
選択権の侵害
・本人が望まない研究機関などに異動を強要する
・研究や仕事を選ぶよう迫る
・休むことを認めない
望まない異動の強要は、アカデミックな場でも起こります。また、結婚しないように圧力をかける、休ませないようにするというのも、アカハラになるでしょう。
権力の濫用
・研究データの捏造や改ざんなどを強要する
・自分の送り迎えを強要する
・自分の雑務を無理やり押しつける
立場が強いことを悪用する行為も、アカハラの可能性があります。
昇任の差別や強引な退職勧告
・意図的に昇任させない
・正当な理由がないのに、休職や退職を促される
・「あなたは教員に向いていない」など、過度に非難し、休職や退職に追い込む
他の教員と同等、あるいはそれ以上の成果をあげているのに、上記のようなことがある場合はアカハラ行為になると考えていいでしょう。
上記に挙げたのは、アカハラの可能性がある行為の一部です。アカハラとみなされる行為は限りなくありますので、判断に迷う場合は誰かに相談しましょう。
アカハラされた場合の対応
アカハラかもしれないと思った場合、どうすればいいでしょうか? 具体的な対応について解説します。
相談窓口や周囲の人に相談する
大学の相談窓口や他の教員、事務職員に相談しましょう。また、親や友達、同僚など周囲の人に打ち明けるのもおすすめです。
大切なのは一人で抱え込まないこと。自分だけで解決できることではないと考えてください。
弁護士に相談する
大学の対応が良くない、解決の糸口さえつかめないという場合は、弁護士に相談しましょう。専門家の力を借りることで、思うよりも平和に解決できるかもしれません。ダメージが大きくなる前に相談し、精神的負担を減らしましょう。
最後に
アカハラとは、アカデミック・ハラスメントのこと。大学や大学院などの学術機関で発生するハラスメント行為のことで、強い立場にある教員が劣位の教員や学生、院生に対して嫌がらせをすることを意味します。アカハラを含むハラスメント行為は社会問題です。思い当たることがある人は、一人で抱え込まずに必ず誰かに打ち明けてくださいね。
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