要因とは物事がそうなった主要な原因のこと
「要因(よういん)」とは、物事がそうなった主要な原因のことです。いくつか原因があるときは、主な原因のみ「要因」と呼びます。
【要因】よういん
物事がそうなった主要な原因。「事件の―を探る」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
たとえば、学校に遅刻したとしましょう。寝坊をした、朝食の量が多くて食べるのに時間がかかった、学校に行く準備をしていなかったなどのさまざまな原因が考えられます。もし「学校に行きたくなかった」というのが一番の原因ならば、それが遅刻の要因です。
要因と原因との違い
「原因(げんいん)」とは、ある物事や、ある状態・変化を引き起こすもとになる事柄のことです。物事や状態が現在のようになったもとが複数あるときは、そのすべてが原因といえます。
げん‐いん【原因】
[名](スル)ある物事や、ある状態・変化を引き起こすもとになること。また、その事柄。「失敗の原因をつきとめる」「不注意に原因する事故」「原因不明の病気」⇔結果。
[類語]事情・諸事情・所由しょゆう・根拠・故ゆえ・意味・由よし・謂いわれ・所以ゆえん・故由ゆえよし・事訳ことわけ・訳わけ合い・訳柄わけがら・子細・もと・種たね・起こり・きっかけ・因いん・因由・素因・真因・要因・一因・導因・誘因・理由・事由じゆう・訳わけ・近因・遠因・せい(―する)起因する・因よる・基づく・発する・根差す
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・失敗の原因を突き止めた。
・彼女は原因不明の病気にかかっている。
・彼が試験に落ちたのには複数の原因がある。
一方、要因は物事がそうなった主要な原因です。複数ある可能性もありますが、原因のように考えられるすべてのもとではなく、主要なものだけを指すため、原因よりは数が少ないと考えられます。
・彼女が成功の要因を教えてくれたが、難しすぎて理解できなかった。
・複数の要因が重なって、事態は悪いほうに進んでいった。
・笑うツボが同じだったことが、わたしたちが仲良くなった要因だ。
要因と類似する意味で使われる言葉
要因と類似する意味で使われる言葉には、次のものが挙げられます。
いずれも似た意味で使われますが、使用するシチュエーションやニュアンスが異なります。例文を通して見ていきましょう。
要素
「要素(ようそ)」とは、ある物事を成り立たせている基本的な内容や条件のことです。たとえば、次のように使います。
・近頃流行っているゲームだが、ルールが簡単な点は魅力ではあるものの、残酷な要素が含まれるため注意したい。
・一人暮らしをしたいが、不安要素として収入が不安定なことが挙げられる。
また、要素には、物を分析したとき、その中に見出されるそれ以上簡単にならない成分という意味もあります。
・色の三要素は、赤と緑、青だ。
・液体を分析した結果、水と少々の食塩が構成要素だとわかった。
理由
「理由(りゆう)」とは、物事がそうなった、また物事をそのように判断した根拠のことです。日常会話でもよく使う言葉です。いくつか例文を見ていきましょう。
・健康上の理由で離職した。
・好きになるのに理由なんてないよ。
また、理由はいいわけの意味でも使われます。
・風邪を理由に学校を休んだ。
・理由ばかり述べていても、問題の解決にはならないよ。
誘因
「誘因(ゆういん)」とは、ある事柄を誘い出す原因のことです。原因と言い換えることもできますが、その原因がもとで起こっている事象が誘い出されたものであるかどうかが異なります。
・増税が物価上昇の誘因となったのかもしれない。
・彼のとげのある言い方が、喧嘩の誘因となった。
たね
「たね」には、物事の起こる原因となるものという意味があります。
・お小遣いが少ないことが、わたしの悩みのたねだ。
・うちの上司は思いついたことをすぐにメールで送ってくる。何度も指示内容が変わり、混乱のたねになることも多い。
たねという言葉は、物事の起こる原因以外にもさまざまな意味で使われます。たとえば、次のように使うことがあります。
・料理の材料(「寿司のたね」「おでんのたね」など)
・話や小説の題材(「この事件があの小説のたねだ」「うわさのたねになる」など)
・裏に隠された仕掛け(「手品のたね」「たねを明かされると、意外と簡単だった」など)
・よりどころとするもの(「生活のたね」「飯のたね」など)
せい
「せい」は、「所為(しょい)」が音変化したものといわれています。所為には、そうなった原因や理由という意味があり、主に良くない結果をもたらしたものに対して使われます。
・彼は悪いことが起こると、他人のせいにする。
・年のせいか、疲れやすくなった。
もと
「もと」は、漢字によって意味が変わります。「因(もと)」と書くときは、原因を指します。
・お酒がもとで喧嘩をした。
・風邪は万病のもとといわれる。
また、「基(もと)」と書くときは、根拠や土台を指します。
・何をもとにわたしを疑っているのですか?
・事実をもとにして書かれた小説らしい。
「素(もと)」と書くときは、原料や材料を指します。料理の材料の意味で使われる「たね」と言い換えることもできます。
・秘伝のたれのもとを教えてくれた。
・料理のもとを仕込む。
切っ掛け(きっかけ)
「切っ掛け(きっかけ)」とは、物事を始める手掛かりや糸口、原因、動機のことです。次のように使うことがあります。
・現状打破のきっかけをつかむ。
・ちょっとしたきっかけで知り合った人だが、馬が合うのか付き合いが続いている。
きっかけには、歌舞伎などの舞台で、俳優の出入りや音楽・照明の変化などの進行上の合図となる動作やせりふという意味もあります。
・彼女のせりふをきっかけとして、場面が暗転した。
・彼が手を高々とかかげると、背景が夜空になった。まるでイリュージョンのようだ。
要因と原因を正しく使い分けよう
「要因」は、物事がそうなった主要な原因を指す言葉です。「要」という漢字が含まれているため、原因の中でも重要度が高いものを指すとイメージしやすいのではないでしょうか。
要因は少し硬いニュアンスがあるため、日常会話ではあまり使わないかもしれません。しかし、その分、ビジネスシーンなどでは頻繁に使われる言葉といえます。意味を正確に把握して使いこなしましょう。
要因と混同しがちな言葉に「原因」が挙げられます。原因は、ある物事や、ある状態・変化を引き起こすもとになる事柄です。要因と似ていますが、主要な理由以外にも使える言葉のため、使用範囲が広いと考えられます。正しく意味を理解して、使い分けてください。
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