Domaniの読者アンケートによると、働くアラフォー女性の6割は「昇進したくない」という現実。その理由は、アラフォーキャリアに立ちはだかる「長時間労働は無理」「プレイヤーでいたい」「リーダーに不向き」「経験不足」の4つの〝山〟。昇進に際して、そんな〝山〟を感じ、悩みながらも引き受けた女性たちを取材しました。
大谷悠さん（38歳・パソナ キャリアコンサルティング東チーム チーム長）
【管理職DATA】
●業務内容／派遣スタッフなどのキャリアコンサルティングのほか、セミナーの企画・運営、チームの進捗管理
●部下の人数／3人 ●家族構成／夫、子供（1歳）
【大谷さんのキャリア年表】
22歳 パソナ入社。パソナ・横浜に配属
26歳 チーフコーディネーターに昇進
先輩管理職の退職に伴い、チーフに。3人の部下をもち、チームの目標や戦略を考える立場に。
30歳 マネージャーに昇格
32歳 キャリアセンター東京に転勤。ファシリテーターに昇進
本社が新社屋に引っ越しと同時に、都内の派遣スタッフの新規登録を担当するチームの責任者に。全国から集められた選りすぐりのメンバーをまとめてチームをつくるという使命にプレッシャーを感じた。
33歳 関東スタッフィンググループグループ長に昇進
34歳 結婚
36歳 新設されたキャリアコンサルティンググループに異動。グループ長に就任。出産、1年間の産休・育休を取得
37歳 キャリアコンサルティング東チームに復職。2か月後、キャリアコンサルティング東チームのチーム長に昇進。残業ができない中、管理職が務まるのか不安に。挑戦してみて無理だったら辞退することも考えた。
「部下の強みを見つけて、自分より優秀なところは思い切って頼ることにしています」
チームの力を合わせることで〝山〞をクリア
人材サービス会社の「パソナ」でキャリアコンサルタントとして働く大谷さんが、初めて管理職になったのは26歳のとき。
「若かったし怖いもの知らずだったので、何も考えず引き受けました。部下ももともとよく知っていたメンバーだったこともあり、大きな苦労はありませんでした。本当の意味で〝山〞にぶつかったのは32歳のとき。アットホームな支店勤務から、本社に異動になったときですね。部下の数が3人から12人に増えたうえ、全員自分より年上のベテランばかり。自分の経験で務まるのだろうかと不安でした」
実際に着任してからも、都内の派遣スタッフの新規登録を行う部門の責任者という大役に、思うように業務が進まないことも多かった。
「自分に任せてもらった仕事だからと気負ってしまい、ひとりで残業することも多かったのですが、別のやり方を考えようと、ベテランの部下に相談してみました。そうしたところ、新たな視点での業務の分担を提案してくれ、それで目が覚めました。自分より経験や知識が豊富な人たちなんだから、もっと頼ってよかったんだって」
もうひとつの〝山〞は産休・育休から復帰した2か月後に、チーム長を打診されたとき。
「定時勤務で自分に何ができるのかまだ手探り状態だったので、正直戸惑いました。残業ができない中で考えたのは、部下をよく見て、得意なことや苦手なことを把握し、適材適所で任せること。たとえば、ある特定の年齢層のキャリアコンサルティングがうまいメンバーもいれば、派遣スタッフの強みを見つけて一歩踏み出すサポートをするのがうまいメンバーもいます。それぞれの得意なことに合わせて仕事を任せれば、私が会社に常にいなくても業務が回るし、面談する派遣スタッフの満足度も上がると実感しました。
さらに、仕事を頼むときの〝伝え方〞も工夫するようにしました。気持ちよく仕事を引き受けてもらうために、具体的な目標の数字を示したらやる気が出る人なのか、〝なぜこの業務をするのか〞という仕事の意義に重きをおく人なのか、など常に考えるようにしています。今は、メンバーの強みをさらに引き出し、最短距離でチームが結果を出せるようにすることこそが管理職の役割だと思っています」
【部下が語る、大谷さんはこんな上司】
部下の相談には必ず笑顔で対応してくれます
どんなに忙しいときでも、声をかけると必ず一度手をとめ、しっかりと話を聞いてくれます。私が悩んでいると、私自身はどうしたいのか聞いて、そのうえで解決方法をさりげなく引き出してくれるところもありがたいです。（松野礼奈さん）
Domani９月号「昇進したくない」症候群 より
撮影／伊藤 翔、江口登司郎 イラスト／泰間敬視 構成／赤木さと子・酒井亜希子（スタッフ・オン）
