医療費控除と交通費について知ろう
仕事をして一定以上の収入があると、所得税が加算されます。所得税額を算出するときに、さまざまな条件によって控除が行われますが、その中の一つが医療費控除です。まずは、医療費控除の仕組みと、関連する交通費について解説します。
そもそも医療費控除とは?
医療費控除とは、年間の医療費が一定の額を超えたときに、超えた分の金額を所得から差し引ける制度のことです。年間の自己負担額が10万円を超えたとき、超えた金額分所得が控除され、結果的に所得税や住民税などの税金が安くなります。なお、年収200万円未満の人は、10万円ではなく、年収の5%を超えた金額がボーダーです。
医療費は自分の分だけではなく、同一生計の配偶者や親族であれば合算して申告できます。夫や子どもなどの医療費を合算し、10万円を超えれば適切に申告することで、払い過ぎた税金が戻ってきたりこれから納める税金が安くなったりします。妊娠・出産などがあると高額な医療費がかかることも多いため、申告を忘れないようにしましょう。なお、医療保険・出産育児一時金・高額療養費などで補てんされた金額は、除いた上で算出します。
一部の交通費は医療費控除の対象
医療費控除は、純粋に医療機関に支払った治療代や薬代のみが対象になると考える人も多いかもしれません。しかし、それ以外にも差額ベッド代や医療器具の購入費用のほか、一部の交通費も含めることができるケースがあります。対象になるかならないかの判断基準は、「医師等による診療等を受けるために直接必要なもの」かどうかです。交通費はこの定義に当てはまると判断されるため、控除の対象になります。しかし、どんな移動手段でもよいわけではありません。原則として公共交通機関のみが対象で、それ以外は条件によって対象となるかどうかが違ってきます。
領収書などは原則5年保管
医療費控除を受けるには、確定申告をする必要があります。以前は申告の際、領収書を添付することになっていましたが、2018年1月以降に申告する分より不要になりました。現在は、指定された明細書に費用を記入して、提出する方式です。
なお、申告の際に不要だからといって、領収書を廃棄するのはNGです。申告に使用した領収書は、原則5年間保管することが義務付けられています。これは、税務署から要請があった場合に、証明する書類を出せるようにしておくためです。確定申告期限の翌日から5年間の保管が必要となるため、年ごとにまとめておきましょう。
医療費控除の対象になるものとは
交通費が控除の対象になるかどうかには、条件があります。では、対象となるのは具体的にどんなケースなのでしょうか?
電車やバスなど公共交通機関
電車・バスなど公共交通機関を使ったときには、往復の交通費は医療費控除の対象になります。領収書をもらうことが難しいケースもありますが、なくても問題はありません。しかし、確定申告の際には利用した日付や金額を正確に記入する必要があります。申告時に作業しやすいよう、通院のたびに使った交通費を記録しておきましょう。なお、通勤や通学の際に使用している定期がある場合、その区間にあたる料金は対象になりません。
やむを得ない場合のタクシー代
タクシー代は、原則として医療費控除の対象外です。ただし、やむを得ない場合に限り、タクシー代も対象となります。やむを得ない場合とは、たとえば深夜に緊急で医療機関にかかる必要があり、ほかに手段がないときや、病気やけがで電車やバスでの移動が難しいケースなどです。突然の陣痛により、タクシーで入院した場合なども含まれます。
このようにタクシーを使うことに合理的な理由があれば、控除の対象となるのです。タクシーを使ったら、必ず領収書をもらって保管しておきましょう。高速道路を利用したときには、高速道路料金も含めてOKです。