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「お見かけする」は見かけるの尊敬語表現
「見かける」という言葉を尊敬語にして使用するときは、「お見かけする」という言葉を用います。自分よりも立場が上の人や年齢が上の人を見かけたときは、「お見かけする」あるいは「お見かけした」と表現しましょう。
■見かけるの丁寧語は「見かけます」
「見かける」という言葉を丁寧に表現するときは「見かけます」という言葉を用います。見かけた対象に対して尊敬語を使う必要がなく、しかも、丁寧に表現することが好ましいシチュエーションにおいては「見かけます」という表現が適しているでしょう。
例えば通勤途中によく野良猫を見かけるとしましょう。野良猫は尊敬する対象ではないため、「見かける」もしくは「見かけます」という表現が適切です。同僚に野良猫の話題をするときであれば、「会社に来る途中によく野良猫を見かけるのよね」と言うことができますし、上司に同じ話題を振るときは「最近、通勤途中によく野良猫を見かけます」と丁寧に話すことができるでしょう。
■謙譲語は「お見かけいたします」
自分を低めることで相手に尊敬を示す謙譲語としては、「お見かけいたします」と表現できます。例えば日曜日に近所の公園に行くと、同じ地域に住んでいる会社の会長がゴミ集めのボランティア活動をしているのに遭遇することが多いとしましょう。
その話題を上司に話すときは、「お見かけする」という言葉で見かける対象である会長を尊敬し、「いたします」という言葉で話す対象である上司に敬意を示すため、「日曜日に近くの公園に行きますと、しばしば会長がボランティア活動でゴミ集めをなさっている様子をお見かけいたします」と表現できます。
「お見かけする」を使った例文
「お見かけする」という言葉は、単純な尊敬語表現なので使う機会は多いです。いくつか例文を紹介しますので、適切なシチュエーションで「お見かけする」という言葉を用いる参考にしてください。
■書店でお見かけしました
昼休みに書店に出かけた際、偶然に会社の先輩に出会ったとします。午後1時に会議があるはずなのに、先輩が戻ってこないならば、他の同僚に「書店で先輩をお見かけしました」と話すことができるでしょう。仕事に必要な資料を探しに行っていた可能性もありますし、単に会議の予定を忘れていたのかもしれません。
「お見かけしました」という言葉は「見かける」場合にも使うことができますが、「会う」という意味で使うこともできます。例えば、先程の例において、先輩が慌てて会社に戻ってきたとしましょう。
「本屋に行っていて……。つい夢中になって時間を忘れてしまったわ」と先輩が皆に状況を説明しているときに、「実は書店でお見かけしました」と話すことができます。もし先輩があなたの存在に気付いていなかったのなら、「声をかけてくれればよかったのに」となるかもしれません。
また、偶然、休日に出会ったことを後で話題にするときも、「お見かけしました」という表現を用います。「日曜日、銀座でお見かけしましたよ」と言えば、「そうですよね!やはりあなただと思っていました」と会話が広がるかもしれません。
■雑誌でお見かけしました
「お見かけしました」という言葉は、実際には会っていないときも使用できる表現です。例えば、ファイナンシャルプランナーの資格を持つ上司が、ある経済紙で自分の見解を顔写真付きの記事で述べていたとしましょう。この話題を上司にするときは、「昨日、雑誌でお見かけしました」と話すことができます。
ただし、顔写真がついていない場合は「見た」というよりは「読んだ」という表現のほうが的確なので、「雑誌で拝読しました。大変に分かりやすく、参考になりました」と述べることができるでしょう。あくまでも顔や姿を「見た」ときに「見かける」の尊敬語表現である「お見かけする」「お見かけしました」を使うようにしてください。
■お見かけする機会があまりなく……
上司などの特定の目上の人の姿をあまり見ていないときや、しゃべる機会が減ったときなどは、「お見かけする機会があまりなく……」と表現することができます。目上の人ですから「最近あまり会いませんよね」という表現はふさわしくありません。「お見かけする」という言葉を使い、丁寧に表現するようにしましょう。
例えば「最近、社員食堂でお見かけする機会があまりなく、寂しく思っております。外にお食事に行かれているのですか?」と話すことができます。また、「お話ししたいことはたくさんあるのですが、会社でお見かけする機会があまりなく、時間が経ってしまいました」などと表現できるでしょう。
どちらも、「見かけていない」という現状に対して寂しさを感じているというニュアンスもありますので、相手のことを思っていることを表現することにもなります。
■お見かけして嬉しくなりました
好きな人の顔を見るということは嬉しいことです。目上の人であっても、この嬉しさをストレートに表現することができるでしょう。「今日はお見かけして嬉しくなりました。お元気で過ごされていましたか?」などと表現するならば、顔を見て嬉しく感じていること、普段から「どうしているのだろう」と気になっていたことなどを表現することができます。
また、「お見かけして嬉しくなりました。ついお声がけをしてしまいました」といって話しかけられたら、あまりよく知らない人であっても悪い気持ちにはならないでしょう。そこまで親しくない場合で、お互い存在は認識している人であれば、声をかけるときは「お見かけして嬉しくなりました」という一文を先に述べることで、相手に唐突な印象を与えずに済みます。
「お見かけする」の類語表現
「人を見かける」や「会う」といったシチュエーションは多いため、「お見かけする」という言葉もさまざまな似た意味の言葉を使って表現することができます。いくつか類語表現と例文を紹介しますので、「見かける」以外の言葉も使うようにしましょう。
■拝見する
目上の人の姿を見ることを、「拝見する」と表現することができます。例えば、「先日、東京駅のホームでお姿を拝見しました。ご出張に行かれていたのですか?」などと表現することができるでしょう。
また、「拝見する」という言葉は「見せる」や「うかがう」といった意味でも使用できます。相手の身分証明書を確認するときなどに「身分証明書を拝見できますか?」と伝えることもできるでしょう。また、「以前、拝見したときに……」というように過去の出会いについて示唆することもできます。
■お見受けする
相手の様子から何かを判断したときは、「お見受けする」という言葉を用いることもできます。例えば「今日はお顔の色が良いようにお見受けしました」と表現すれば、単に顔色がよく健康そうであるという事実を伝えるだけでなく、「いつもあなたのことを気にかけている」というニュアンスをプラスすることもできるでしょう。
また、「お見受けしたところ、今日はとてもお忙しいようですね」と表現すれば、忙しそうだという客観的な観察を伝えるだけでなく、「あなたのことをしっかりと見ているので、忙しいことが分かる」といったニュアンスがプラスされ、思いやりの気持ちも表現することができます。
■拝察する
「お見受けする」と似た意味で、相手の様子から何かを判断したことを表現する言葉に「拝察する」があります。例えば、相手が「興味がない」と言ったわけではないけれど、相手の様子から興味がなさそうであることが伝わってきた場合は、「あまりご関心がないのだろうと拝察いたします」と伝えることができるでしょう。
もし何かの営業をしているのであれば、相手との会話を切り上げるときに使うことができる表現です。また、営業とは関係なく、単に話題を変えるときでも「ご関心がないように拝察いたします」と伝えることで、相手を思いやっていることを表現しつつ、こちらの話題が適切ではないことを自覚していることも表現できます。