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「確認させていただきます」を利用できる条件
「確認させていただきます」という表現に使われる「させていただく」という言葉は、利用できる状況が限られています。次の2つの条件を満たしたときのみ使用すると、間違いになりにくく、言葉の意味や意図が伝わりやすいでしょう。
・条件1.相手の許可を得ている
・条件2.相手から恩恵を受けている
条件1:相手の許可を得ている
「させていただく」という言葉は、相手から許可を得ているときに使用する言葉です。例えば、ある集まりの中で、「皆さんの個人情報について伺います」とアナウンスをし、集まった人々から許可を得ていたとしましょう。
そのような状況で人々の名前を確認するときは、「お名前を確認させていただきます」という言葉が適しています。確認することはすでに了承済みなので、相手の許可を得ていることになるからです。
また、確認以外にもさまざまなものごとを「させていただく」と表現することができるでしょう。例えば、部屋にいる人々に「うるさいかもしれないけれど、歌ってもよいか?」ということを尋ね、「構わない」と許可を得ていたとします。そのような状況下で実際に歌うときは、「今から歌わせていただきます」という言葉がしっくりとくるでしょう。
条件2:相手から恩恵を受けている
「させていただく」という表現は、相手から何らかの恩恵を受けているときに用いることが適当と考えられています。例えば、相手の名前を確認することでパーティーの進行がスムーズになるのならば、名前を確認することは「恩恵を受ける」行為と考えられるでしょう。相手の名前を確認する際には「お名前を確認させていただきます」という言葉が適しているといえます。
確認以外のものごとを「させていただく」場合にも、相手から恩恵を受けているのかどうかという点に注目すると言葉を選びやすくなるでしょう。例えば、寝坊をしてしまい、お化粧をしないで会社に行ったとします。
なんとなく居心地が悪く早く化粧をしたいのだけれども、トイレを使いたくないというときは、こっそりと隣の人に「お化粧をしてもいいですか」と尋ね、了承を得た上で「では、化粧させていただきます」と答えてさっとお化粧を済ませることもできるかもしれません。
「化粧させていただきます」という言葉を発する人は、トイレに行かずにその場でお化粧ができるという恩恵を隣の人から得ていることになるため、このシチュエーションにおいて、「化粧させていただきます」という言葉は適していると考えられます。
また、目の前でお化粧をされることに不快感を持つ方も多いので、一言尋ねておくことでお互いが居心地よく過ごせることにもつながるでしょう。
「確認させていただきます」が誤用になるケース
「確認させていただきます」という言葉の使用が、適切ではないケースも少なくありません。次の3つのいずれかに該当するときは、「確認させていただきます」という表現は誤用と考えられます。別の表現に改めて、「確認したい」という意思を表現するようにしてください。
・相手の許可を得ていないとき
・相手から恩恵を受けているわけではないとき
・「ご確認」と二重敬語にしたとき
■相手の許可を得ていないとき
「させていただく」という言葉を使用できるのは、相手の許可を得ているときだけです。つまり、相手の許可を得ていないときは、「させていただく」という言葉を使ってはいけません。
例えば、最初に個人情報を伺うといったアナウンスをしていないのに、「お名前を確認させていただきます」と言うならばどうでしょうか。「そんな話は聞いていない」「確認する必要はあるのか?」と反論される可能性があるでしょう。
セミナーに参加したときに、前方に空席が見つかったので、とりあえず隣の人に「ここに座らせていただきます」と声をかけたとします。隣の人はなぜ「させていただく」と言ったのか理解できず、「私の許可は必要ありませんよ」と反応するかもしれません。
また、「ここはもうすぐ知人が来るので……」と断られてしまう可能性もあるでしょう。このような場合には「ここに座ってもよいですか?」「この席は空いていますか?」と相手の許可を求めてから行動すべきと考えられます。
許可を得た状態で使用する「させていただく」という表現をいきなり使うことは、相手を戸惑わせるだけでなく、不快感を与えかねません。
■相手から恩恵を受けているわけではないとき
相手から恩恵を受けているわけではないときも、「させていただく」という表現はふさわしくありません。例えば大勢の人々が自由に遊んでいる公園で、隣の人と十分な間隔をとった上でバドミントンを始めるとします。わざわざ離れている隣の人の所に出向き、「バドミントンをさせていただきます」と言うならばどうでしょうか。
「私があなたにバドミントンをさせてあげるわけではありませんよ」とやんわりと不快に感じているという返事をされるかもしれません。何かの行為をすることで相手から恩恵を受けていることが明らかなときに、「させていただく」という表現を使うようにしましょう。
例えば予防接種を受けに行ったときに、受付の人が「体温を確認させていただきます」と言ったとします。予防接種により恩恵を受けるのは受付の人ではなく予防接種を受けに行った人なので、受付の人が「確認させていただきます」という表現を使うのは違和感を覚えるかもしれません。
しかし、「体温を確認することで受付業務をスムーズに進める」という目的で「確認させていただきます」という言葉を使った可能性もありますので、あながち間違いとは言えないでしょう。
■「ご確認」と二重敬語にしたとき
「確認させていただきます」という表現には間違いはありませんが、丁寧に話そうと「ご確認させていただきます」と言うならば誤用になります。「させていただく」という表現は謙譲語「いただく」を含んでいるので、それだけですでに正しい敬語です。
しかし、「確認」という名詞に「ご」をつけて丁寧語にしてしまうと、丁寧語と謙譲語を両方使った二重敬語になってしまいます。相手の許可を得て、なおかつ恩恵を受けているときは、シンプルな名詞あるいは動詞に「させていただく」という表現を付けて、相手への感謝の気持ちを言葉に含めるようにしましょう。
「確認させていただきます」や「説明させていただきます」という風にシンプルにさせていただきますを使うようにしてください。勢い余って「ご確認させていただきます」「ご説明させていただきます」と丁寧語をつけてしまうと、二重敬語で誤った表現になってしまいます。
「確認させていただきます」の言い換え表現
「確認させていただきます」という言葉は、相手から許可を得、なおかつ許可を得たことで恩恵を受けている必要があるため、実際のところは使う場面が限られています。誤ったシチュエーションで「確認させていただきます」という言葉を使わないためにも、言い換えの表現を覚えておくと役立つでしょう。いくつかの言い換え表現と使用する場面について解説します。
■確認いたします
確認したいことがあるときは、シンプルに「確認いたします」と表現できます。「いたします」は謙譲語「いたす」を丁寧にした表現で、それだけでも十分な敬語です。例えば受付で「お名前を確認いたします」とシンプルにいえば、「確認させていただきます」のように相手の許可が必要かどうかを考えなくても済むため、言葉を使うほうにもストレスがありません。
また、自分の席で化粧しても、周囲からあまり見えないと思われるときは、隣の人に許可を得る必要はないでしょう。「化粧をしてもよろしいでしょうか」「はい」「では、化粧させていただきます」といった一連のやり取りは不要と考えられる場合には、「化粧いたします」と自分の行動を報告することができます。
■ご確認いたします
「ご確認させていただきます」という表現は二重敬語になりますが、「ご確認いたします」という言葉全体が「ご確認」する主体が自分になる謙譲語と考えられるため、間違った表現ではないと考えられます。しかし、「ご確認」と「いたします」と別に考えるのであれば、誤った表現となる可能性があるので、「確認いたします」とシンプルにのべるほうがよいでしょう。
■ご確認ください
「ください」という言葉は丁寧な表現ではありますが、敬語ではないので、「ご確認ください」といえば二重敬語にならずに済みます。「ご確認いたします」と「確認いたします」のどちらが正しい表現なのか迷ったときは、「ご確認ください」という表現を選ぶようにしましょう。
ただし、「ご確認してください」という表現は誤りです。「ご確認」は謙譲語ですが、「してください」は尊敬語になります。二重敬語になってしまいますので、相手に確認してもらうときは「ご確認ください」、こちら側が確認するときは「確認いたします」と表現するようにしましょう。