■お元気な様子を拝見する
「拝見する」という言葉はいつでも「見る」だけに使うのではありません。特定の状態から何かを推測して判断したときにも、使用することができます。例えば医師が患者に「お元気な様子を拝見いたしました」と伝えるならば、相手の状態が健康そうであると判断したということを表現することができるでしょう。
また、年齢が高く、あまり普段会社には顔を出さない会長が会社に来られた様子を他の同僚に伝えるときも、「今日は久しぶりに会長が会社に来られました。お元気な様子を拝見し、安心いたしました」と伝えることができます。
「お見かけする」を疑問文にすると?
「お見かけする」という言葉は、疑問文として使用する際には注意が必要です。「お見かけする」という言葉自体は「お〇〇する」という正しい尊敬語ですが、疑問文にすると尊敬の対象があいまいになり、「自分で自分のことを尊敬しているのか?」と誤解をさせるような表現になってしまうことがあります。
例えば「今日、ご主人をお見かけしましたか?」という表現について考えてみましょう。疑問文でないならば「今日、ご主人をお見かけしました」となり、ご主人を尊敬していることがストレートに伝わります。
しかし、「今日、ご主人をお見かけしましたか?」と疑問文にすると、ご主人を尊敬しているのか、それとも話し手自身が自分を尊敬しているのかが判別しにくく、場合によっては「敬語を上手に使えない人」「常識のない人」と判断されかねません。
■見かけましたか?
「お見かけしましたか?」という言葉では尊敬の対象があいまいになるので、疑問文にするときは「見かけましたか?」という言葉を用いるようにしましょう。例えば「今日、ご主人を見かけましたか?」という文章であれば、「ご主人」や「ました」という丁寧語を含むため、相手への尊敬までは表現することはできませんが、丁寧な印象を与えることができます。
そもそも「見かける」という動詞は主語が自分以外で使われることはあまりないため、疑問文にするとやや落ち着かない印象を与えることがあります。無理に尊敬語を使用しようとして尊敬の対象をあいまいにするのではなく、丁寧語を使用して、丁寧な印象を与えるように意識することができるでしょう。
相手への尊敬の気持ちを込めつつ、「見る」という表現をしたいときは「ご覧になりましたか」のように「ご覧になる」という表現を使うことができます。「雑誌に私たちの上司の記事が出ていました。ご覧になりましたか?」というならば、「雑誌で上司の記事を見かけましたか」という意味を保ったまま尊敬語を使用することができます。
ただし、この場合は、尊敬の対象は上司ではなく、話しかける相手になるので注意をしてください。また、「うかがう」という訪ねるの謙譲語を使うことでも、相手への尊敬の気持ちを込めつつ「見る」という表現をすることができます。
「今日、資料がどうしても必要です。よろしければ、ご自宅にうかがってもよろしいでしょうか」というならば、「お見かけしてもよろしいでしょうか」という意味を含めつつ「うかがう」という謙譲語を用いて、相手への尊敬の気持ちを表現することができるでしょう。
「お見かけする」の英語表現
英語では丁寧な表現はありますが、日本語のような尊敬語や謙譲語の表現はあまり使用しません。「お見かけする」という尊敬語を表現するときは、「偶然に会う」あるいは「見ることができる」「見られる」という意味の次の2つの言い回しを用いることが一般的です。
・happen to see
・can be seen
■ happen to see
「偶然〇〇する」という意味の慣用句的表現「happen to」を用いて、「お見かけする」を「happen to see」と表現することができます。ただし、「happen to see」には相手に対する尊敬の気持ちや丁寧な表現は含まれていないため、丁寧な口調かつ丁寧な態度で話すことで、相手に対する尊敬の気持ちを表現するようにしましょう。
・I happened to see him. He was going shopping with his girlfriend.(偶然、彼をお見かけしました。彼は恋人と一緒にショッピングをしていました)
・When I happened to see you, what ware you doing?(私がお見かけしましたとき、何をなさっていたのですか?)
■ can be seen
「お見かけする」という表現は、見かけた相手にとっては「見られる」という受け身の表現です。「見られる」という日本語は「誰かに見られる」のように受け身の意味でも用いられますが、「見ることができる」のように可能を示す表現としても用いることができます。そのため、前後の文脈がはっきりしないと、どのような内容を指しているのか分かりにくいことがあるでしょう
しかし英語であれば「can be seen」という表現を用いて、受け身と可能を両方一度に表現することが可能です。
・I could be seen him.(私は彼を見かけました)
「お見かけする」の韓国語表現
韓国語では、日本語と同様、敬語表現があります。「お見かけする」という言葉の韓国語表現を見ていきましょう。
■ 눈에 띄다
「눈에 띄다」とは、「目につく」や「目に留まる」という意味の表現です。この表現と丁寧語を組み合わせることで、「お見かけする」と言う意味を伝えることができます。
・당신 모습을 눈에 띄었습니다.(あなたのお姿が目に留まりました/あなたをお見かけしました)
■ 자주 보다
「자주 보다」とは、「頻繁に見る」や「頻繁に会う」という意味の表現です。この表現も丁寧に使用することで「お見かけする」という意味を伝えることができます。
・자주 볼수 있어서 행복합니다.(頻繁に会うことができて幸せです/よくお見かけしますので、とても嬉しいです)
「お見かけする」を日常でも使おう
「お見かけする」という言葉は、見かけた対象を尊敬する言葉です。「お見かけして嬉しくなりました」と言えば、相手の姿や様子を見ることで嬉しく感じていることをストレートに伝えることができ、相手の気分も良くすることができます。ぜひ日常でも使っていきましょう。
しかし、疑問文にすると尊敬する対象があいまいになり、自尊表現をしているかのような印象を与えかねません。疑問文にするときは「見かけましたか」とシンプルかつ丁寧に伝えるか、「ご覧になりましたか」と別の動詞を使って表現するようにしましょう。
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