【目次】
・「出来かねます」の意味とは?
・「出来かねます」4つの類語と言い換え表現
・「出来かねます」の使い方3つの注意点
・「出来かねます」3つのシーン別使用法と例文
・「出来かねます」で断りの気持ちを丁寧に表そう
「出来かねます」の意味とは?
「応じようとしてもできません」という意思を表したいときには「出来かねます」という言葉が適しています。断りの意思を伝えるとき、誤った表現をすると相手に対して失礼にあたる可能性もあります。まずは「出来かねます」の正しい意味を理解していきましょう。
■「出来かねます」は「できません」の丁寧な表現
相手からの依頼に対し「できません」という気持ちを丁寧に伝えたいときには「出来かねます」を使用します。「できません」という言葉は、相手に唐突な印象を与える可能性もあるからです。
特に、ビジネスシーンでは、相手に不快感を与えない言い回しが求められます。プライベートでも、かしこまった場面では「出来かねます」の方が丁寧な印象を与えられます。シーンに応じて使い分けるよう心がけましょう。
■「かねる」は「しようとしてもできない」こと
「出来かねます」の「かねます」は、「兼ねる」という言葉に「ます」を付けた丁寧な表現です。「兼ねる」は「1つで2つ以上の動きをもつ」という意味があります。また「しようとしてもできない」ことを表す言葉です。
つまり「出来る」に「かねます」を組み合わせた「出来かねます」は、「しようとしてもできません」という意味を持つ言葉だといえます。決してやりたくないわけではなく、何らかの理由があって対応できないという気持ちを表しています。
■目上の人には「いたしかねます」が適切
「出来かねます」は、取引先や上司にも使用できる丁寧な表現です。ただし、相手により敬意を表したいときには「いたしかねます」が適しています。
「する」の謙譲語である「いたす」を用いる「いたしかねます」は、相手を敬う表現です。一方「出来る」には自分をへりくだり相手を敬う意味合いはありません。
相手との関係性や使用するシーンに合わせ、「出来かねます」「いたしかねます」を使い分けられるようにしましょう。
「出来かねます」4つの類語と言い換え表現
「出来かねます」には、「お断りせざるを得ません」「ご遠慮申し上げます」など4つの類語と言い換え表現があります。物事を断る場面では、相手に対して角が立たない言い回しが必要です。
類語や言い換え表現を覚えておくと、シーンに合わせて正しい対応ができます。4つの表現の意味や使い方を確認していきましょう。
1.「お断りせざるを得ません」
「お断りせざるを得ません」には「残念だが断らないわけにはいかない」という意味があります。「せざるを得ない」は「そうしないわけにはいかない」という意味を持つ言葉です。
つまり「お断りせざるを得ません」はどうしても断らないといけない状況を表しています。「出来かねます」よりも、かしこまったニュアンスを持つ言葉です。相手に対し、断りの意思をより強く伝えることもできるでしょう。
・そのような理由があるのであれば、お断りせざるを得ません。
・ご要望は重々承知しておりますが、当社といたしましてはお断りせざるを得ません。
2.「ご遠慮申し上げます」
「ご遠慮申し上げます」は、「申し出はありがたいが、お断りします」という意思を伝える表現です。「遠慮」には、物事を辞退するという意味があります。「申し上げます」は「申し上げる」の丁寧な表現であり、相手に物を言うことをへりくだった言葉です。
ビジネスでは、相手からの誘いを断らなければならない場面もあります。そのようなときにも「ご遠慮申し上げます」は適しています。自分をへりくだった表現でもあるため、目上の人からの誘いを断りたいときにも使用できるフレーズです。
・大変ありがたいお誘いですが、当日は先約があるためご遠慮申し上げます。
・子どもの体調が悪くなってしまったため、本日の食事会はご遠慮申し上げます。
・私のようなものにもったいない話ではございすが、ご遠慮申し上げます。
3.「見送らせていただきたく存じます」
「見送らせていただきたく存じます」は「見送らせてほしい」と相手に伺いを立てる表現です。「見送らせてください」も丁寧な言葉ですが、ビジネスでは若干フランクな印象を与える可能性もあります。
「存じます」は「思います」の謙譲語であり、相手の立場を敬う言葉です。「今回は対応できないので断らせてほしい」と思うときには「見送らせていだくたく存じます」と相手を敬いながら断りの意思を伝えます。
・お声がけいただき申し訳ございませんが、この度は見送らせていただきたく存じます。
・大変ありがたいお話ではございますが、見送らせていただきたく存じます。
・日程が合わないため、見送らせていただきたく存じます。またお声がけください。
4.「お役に立てません」
「お役にたてません」は「依頼を受けられないため、相手の役にたつことはできない」という意思を表す言葉です。「出来かねます」のように「本当は引き受けたい」という気持ちを伝えるためには、前後に詳しい内容を付け加えましょう。相手に対し、より丁寧な気持ちを表現できます。
・誠に恐れ入りますが、当日は他のスケジュールも立て込んでおり、私ではお役に立てません。
・その件につきましては、担当が異なるためお役に立てません。
・当日は現地に行く予定がないため、お役に立てません。
「出来かねます」の使い方3つの注意点
「出来かねます」は「できません」という意思を伝える丁寧な表現ですが、誤って使用すると相手に誤解を与えかねません。使用時は、
1.「できかねません」は誤った使い方
2.「出来かねます」自体が誤用の場合もある
3. はっきり断るときは「お受けできません」と伝える
の3点に注意してください。ここでは「出来かねます」を使うときに心得ておきたい、3つの注意点をチェックしていきましょう。
1.「できかねません」は誤った使い方
「できかねません」は、誤った使い方です。「出来かねます」と似ているため、知らない間に使わないよう注意する必要があります。
前述したように「かねる」には「しようとしてもできない」という否定の意味合いがあります。一方、「かねません」は「~するかもしれない」という推量を表す言葉です。主に、良くない出来事が起こるかもしれないという意味合いで用いられます。
「伝えられない」と伝えることを断りたいときには「伝えかねます」と表現します。「伝えかねません」とすると「伝えるのかもしれない」という憶測を相手に与えしまう可能性があるからです。
日常会話で何気なく使ってしまいがちですが「できかねません」は誤った使い方であることを覚えておきましょう。
2.「出来かねます」自体が誤用の場合もある
前述したように「かねる」は「しようとしてもできないこと」を意味する言葉です。つまり「出来かねます」は「できる」が「できません」という不自然な表現であり、誤用とされることもあります。また、「いたしかねます」が正しい表現であると言われることもあります。
しかし、正しいシーンで使用すれば「出来かねます」が不自然だと思われることは多くありません。日常生活に浸透し、ビジネスシーンでも見聞きする言葉であるといえるでしょう。
3. はっきり断るときは「お受けできません」
「出来かねます」は「できません」という言葉をやわらかく丁寧に表した言葉です。そのため、相手に対して「もしかしたらできるのでは」という印象を与える可能性もあります。
「出来かねます」は「本当は受けたいのだが対応できない」という意味もあるため、本当に依頼を断りたいときは注意が必要です。
相手に誤解を与えないよう、はっきり断りたいときは「お受けできません」という言葉を用いましょう。なぜ受けられないのかという理由を付け加えると、より相手の理解を得られやすくなります。
「出来かねます」3つのシーン別使用法と例文
「出来かねます」という断りの表現は、ビジネスにおいて電話やメールに返答するとき、相手の要望を断るとき、「回答できない」と断るときに活用できます。直接相手の顔が見えない、電話やメールにも適した表現です。3つのシーンに応じた使い方を例文を参考にマスターしましょう。
1. 電話やメールに返答するとき
相手の表情が分からない電話やメールでは、失礼のない断り方が求められます。そのためには「出来かねます」の前にひとこと添える意識が大切です。相手の気持ちを考えながら、丁寧な表現を心がけましょう。
・大変恐れ入りますが、お客様都合の返品は出来かねます。
・あいにくその日はスケジュールが立て込んでおり、参加出来かねます。
2. 相手の要望を断るとき
「出来かねます」は、相手の要望を断るときに適した表現です。特に、相手が目上の人や取引先の場合「~してほしい」という要望に断りを入れるのは難しいものです。角が立たないよう、丁寧に断りの意思を伝えましょう。
・大変申し訳ないのですが、すでに予約が埋まっているため対応出来かねます。
・誠に恐れ入りますが、参加条件を満たしていない場合はご要望にお応え出来かねます。
3.「回答できない」と断るとき
ビジネスでは、何らかの事情で相手の質問に回答できない場面も訪れます。そのようなシーンでも「出来かねます」を使うのが効果的です。「答えられません」よりも、ソフトに相手への断りの意思を伝えられます。
・大変恐れ入りますが、本日は担当者が不在のため説明できかねます。
・それ以上のご質問はプライベートにかかわるため、回答できかねます。
「出来かねます」で断りの気持ちを丁寧に表そう
「出来かねます」は、断りの気持ちを丁寧に表す言葉です。目上の人や取引先の依頼に対し、断りを入れるのは難しいと感じる場面もあります。「出来かねます」を用いれば、「できません」よりやわらかな印象を与えられます。誤った使い方をしないためには、言葉の意味を正しく理解しておくことも大切です。「出来かねます」を正しく使い、マナーを身に付けた大人を目指しましょう。
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