コロナ禍に新たな道を選んだ女性たち
#3 華絵さん(仮名・37歳女性)のケース
華絵さんは結婚5年目にして、コロナ禍に離婚。その理由は、夫からの耐え難い束縛でした。
「もともと夫は嫉妬深く、妻が自分以外に関心を向けていると、それだけで面白くないタイプ。なので、結婚してからは飲み会にも行けませんでしたし、古い友人やママ友とランチに行くのすら夫の機嫌がいいときに許可をもらわないとダメなくらいでした」
コロナ禍に入り、夫がテレワーク中心の生活となったことから、家族が自宅で過ごす時間が増え、それと比例して夫からの束縛もどんどん激しくなったそうです。
「友人とオンラインで話しているだけでも『なんで他人とそんなに話すことがあるんだよ。俺の悪口でも言い合ってたのか?』と文句を言われたり、子どもと遊んでいる時間が少し長いだけでも不機嫌になったりと、夫が家にいるだけで窮屈でした。とにかく自分中心で私が動いていないと機嫌を損ねるので、子どもの世話もしながら夫にも気を配る毎日。コロナ禍になって半年もした頃にはヘトヘトでした」
経済的DVも加わり我慢の限界に…
コロナ禍に入る前は、単発でアルバイトの仕事をし、それをお小遣いにしていたという華絵さん。コロナ禍になってからは仕事はせず、専業主婦として生活をしていました。
「もともと夫の収入だけで生活をしていたとはいっても、夫から渡される生活費の額は、同世代に比べると少なかったですね。夫は趣味にお金をかけたいタイプで、貯金もほとんどナシ。生活費は本当に“必要最低限”って感じで、私には過剰な節約を求めていました」
夫が家にいる時間が増え、生活にかかるお金も増えたことで「生活費を増やしてもらいたい」と夫に話すも「無駄遣いをやめろ」と言うだけで、夫が家庭に入れるお金が増えることはありませんでした。
「それだけじゃなく、私に対して『家でオンラインを使って友達と遊んでいるくらいなら、生活費を減らすからな』と言い出し、実際に家庭に入れるお金を減らされました。これって経済的DVってやつですよね?
ただでさえ、朝から晩まで私の生活を監視するような夫で、さらには気に入らないことにいちいち文句を言ってくるし、挙句には経済的DVまで…と重なり、もう限界!となった私は子どもを連れて家を出たんです」
離婚を渋った夫も、妻の親が出てくると態度を急変
まるで、夫から監視をされているような息の詰まる毎日に「こんな生活なら、離婚してシングルマザーになったほうが、はるかにマシ」と感じたという華絵さん。両親に事情を話し、実家に帰る形で別居をスタートさせ、3ヶ月の話し合いの末に離婚を成立させました。
「夫は、最初のうちだけ『離婚はしない』『お前のワガママだ』と言っていたんですが、うちの親が話し合いに入ってきて、これまでのことを問い詰めた途端に、態度が急変。いきなり記入済みの離婚届を実家に送ってきたので、そのまま協議離婚しました。私たちには分与するほどの財産もなかったので、離婚すると決めてからは早かったですね」
夫はこれまでの行動を謝罪するわけでもなく、単に華絵さんのご両親が話し合いに入ってきたことを「めんどくさい」と感じているように見えたと華絵さんは言います。「もともと夫は無責任な性格でしたが、コロナ禍になるまでは、なんとなく見て見ぬふりをして生活してきました。離婚という別れ際の本性を見て、この人とは別れて本当に正解だなと思ってしまいましたね」とのことでした。現在は夫からの過剰な束縛から完全に解放され、実家でオンラインを使った仕事をしながら、自分のペースで仕事や子育てができているそうです。
ニューノーマルな生活に変わったことによって、夫婦間で見て見ぬふりをしてきた相手の一面があぶり出されている話も散見されます。夫婦はご縁あって結ばれたのですから、離婚に至らないに越したことはないものの、新たな生活様式をともに暮らせないほどの“何か”があぶり出されてしまえば、別々の人生を歩んだほうがお互いのためだという結論に至っても無理はないのかもしれません。
取材・文/並木まき
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