コロナ禍に新たな道を選んだ女性たち#4 優香さん(仮名・39歳女性)のケース
結婚4年目でコロナ禍真っ只中に離婚をした優香さんは、離婚のバタバタがようやく落ち着き、生活が安定してきた今「そもそも結婚相手を選んだ基準が間違いだった」と振り返っています。
「元夫と結婚を決めたとき、実はもうひとり気になる男性がいたんです。交際していたのは元夫でしたが、ちょうど元夫からプロポーズされる2ヶ月ほど前に知り合った男性のことが気になっていて。その男性は元夫とは真逆のタイプで、見た目も生活も派手で、仲間も多く周りをグイグイと引っ張るような自営業者でした。
一方、夫は新卒からずっと同じ企業で会社員をしていて、出世欲はなくはないけれどほどほど。大企業勤務ってわけでもなく、年収は平均よりやや高いというタイプです」
元夫に対して“恋人として少々の物足りなさ”を感じていた矢先、真逆のタイプに惹かれ始めていた優香さんでしたが、そんな優香さんの心情を察してか、元夫は交際2年目ながらも何のイベントでもないタイミングで突然、プロポーズしてきたのだそうです。
「正直、プロポーズを受けるかどうかも悩んだんです。そのとき、もうひとりの男性にも惹かれていましたからね。だけど、自営業者と結婚するより会社員かなぁ…とか、結婚するなら穏やかで地味な人のほうがいいだろうなぁ…とかって考えて、最終的に元夫からのプロポーズを受けました」
テレワーク生活になり大きくなった不協和音
子どもはいなかったものの、コロナ禍に入る前は“それなりに仲良し夫婦”だったと振り返る優香さん。しかしコロナ禍のテレワーク生活が始まった頃から、夫婦間で不協和音が大きくなり始めました。
「一緒にいる時間が長くなって、相手の嫌なところばかりが目につくようになったんです。しかも元夫の会社は業績が下がってしまい、比例して給与も下がることになったんですが、そのときの元夫の対処の仕方が許せなくて。これからの生活への不安が大きくなっているときに、何もせずにボーッと与えられた仕事をしているだけで、仕事がない日は平日なのに、家で昼寝しかしていないなんて日も多くなっていました」
優香さんは「夫婦の将来を考えるなら、もう少しガツガツと前向きに頑張ってもらいたい」と夫に話しますが、夫は「そんなこと言われても…」と困惑するだけ。そのうちに元夫の会社では早期退職者を募り始めるなど、将来への不安が増すような出来事が重なります。
「コロナ禍で、今までの社会のルールが通用しなくなり始めているんだから、元夫には、もっと仕事や収入に危機感を持ってもらいたかったんです。だけど、私が何を言っても動かなくて。元夫の会社はいわゆる中小企業でしたから、いつ元夫が解雇されても不思議ではないなって感じがしました」
長引くコロナ禍生活で、夫婦で一緒にいる時間が多くなっていたこともあり、優香さんはあるときに我慢の限界を迎えることに。
「何があった、ってわけじゃないんですけど、もう元夫とはやっていけないって結論が出ちゃったんです。私は本当は、こういうパンデミックのときには夫婦で力を合わせて乗り切ろうって頑張りたかったのに、『僕にできることなんてないから』とはなから諦めモードの元夫には、最終的に嫌悪感しかありませんでした。私がどんなに頑張ってもこの人は、“自分で考えるのではなく、上から与えられたことだけをやる”しかできない人なんだなって。そんな本性をまじまじと見せられてからは、もう一緒に人生を切り開いていくのは無理だろうって感じました」
夫の口から飛び出した「離婚」
その気持ちを素直に元夫に伝えたところ『なら、どうする? 僕は変われないから離婚する?』と“離婚”の二文字を初めて口にしてきたのだとか。そんなふうにしか解決策を提案できない元夫にも、優香さんは大きく落胆したそうです。
「あー、もうこれはダメだなって思いましたね。その頃から、元夫は家にいづらくなったのか、近所の喫茶店や漫画喫茶に入り浸るようになっていましたし。子どももいないし、ならばこの辺りでいったんリセットしようかってことで離婚に至りました」
離婚の話し合いは終始、淡々と進められ、お互いに感情的になることはなかったふたり。「縁があるなら、きっとパンデミックが終わった頃に、また復縁するかもしれないしね」と言い合って別れたのだそうです。
「ですので、今でも一応、元夫とは“友達”ってことで、LINEでたまに連絡は取り合っています。どちらも新しい恋人ができたわけでもないので、本当に“旧知の友達”って感じですね。私たちは夫婦になるんじゃなくて、このくらいの距離感がちょうど良かったのかもしれないなぁ、なんて思うこともあります。コロナ禍が明けたときに復縁するのかは今はわかりませんし、そのときの流れに任せようと思います」
新たな生活様式の定着により、潜在的に存在していた問題が表面化してしまった夫婦も少なくないと聞きます。コロナ禍が明けたときにどんな社会になっているのか、今ははっきりと想像もできないだけに、“現時点でのベスト”を選択して、新たな道を歩み始める女性も少なくないのかもしれません。
取材・文/並木まき
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