「阿吽の呼吸」の意味と由来
慣用句の「阿吽の呼吸」は「あうんのこきゅう」と読み、2人以上の人たちの行動について息が合っていると表す際に使います。「阿吽」はサンスクリット語が語源であり、仏教用語の「真言(しんごん)」に由来しています。
「対となるもの」を意味することから、金剛力士像や狛犬とも関わりが深い言葉です。ここでは、「阿吽の呼吸」の意味や由来などを詳しく解説します。
「阿吽の呼吸」の意味は「息が合っていること」
【阿吽の呼吸:あうんのこきゅう】
二人以上で一緒に物事を行うときの、互いの微妙な気持ち。また、それが一致すること。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「阿吽の呼吸」は慣用句として扱われ、2人以上で物事を行う際に息が合っていることを表します。言葉がなくても意思の疎通ができており、タイミングや間合いがお互いに一致している状態を指します。
例えば、家族と一緒にいるときに探しものをしていると、何を探しているか言わずとも目当てのものを渡してくれるような場面です。
「言わなくてもお互いにわかり合っている状態」とも言い換えられ、主に家族や友人、恋人のように付き合いが長い相手同士で使われます。
「阿吽の呼吸」の由来は仏教の「真言」
「阿吽の呼吸」に含まれる「阿吽」は、仏教用語の「真言」(仏の真実の言葉)です。語源となっているのはサンスクリット語で、インドから中国を経て日本に伝わったとされています。
仏教用語としての「阿吽」は、阿吽の呼吸とは少し異なる意味をもちます。「阿吽」という言葉が「対となるもの」を表すようになり、そこから転じて「阿吽の呼吸」という慣用句が生まれました。ここでは、「阿吽の呼吸」の成り立ちについてわかりやすく解説します。
「阿吽」の語源はサンスクリット語
阿吽の呼吸の「阿吽」の語源は、サンスクリット語(梵語/ぼんご)です。古代のインドで誕生し、中国から仏教とともに日本に伝わりました。
「阿吽」は仏教用語の真言の一つに含まれます。元々「阿吽」という漢字があったわけではなく、サンスクリット語の「あうん」という音に読み方が似ている漢字を当てはめたものです。
サンスクリット語では「阿」が1文字目、「吽」が最後の文字であることから、「阿吽」は万物の始まりと終わりまでを象徴する言葉です。また、口を開けて発声する「阿」に対し、「吽」は口を閉じて発声することから、息の出入りを表す言葉でもあります。
現在の意味は「阿吽=対となるもの」が転じたもの
万物の始まりと終わりという意味に加え、「阿吽」には反発する2つの存在という意味があり、対比や対立などを表す際に使われます。例えば、神社・寺院などに置かれる金剛力士像や狛犬のように、2体で1つとして扱われる像は「阿吽」を踏まえて作られたものです。
金剛力士像や狛犬を観察すると、一方が口を開けていて、もう一方が口を閉じていることがわかるでしょう。2体の相対する姿から、意味が転じて現在の「阿吽の呼吸」という表現が生まれました。
【例文付き】阿吽の呼吸の使い方
「阿吽の呼吸」は日常会話だけでなく、ビジネスシーンでも使える表現です。息の合った行動をしている人たちを目撃した第三者が、その様子を表す際に使うのが基本です。または、何も伝えていないのに、こちら側の意図を汲み取ってくれた相手に対して使うこともあります。
「阿吽の呼吸」を使った例文は以下を参考にしてください。
【例文】
・両チームの選手は、【阿吽の呼吸】でパスを成功させました。
・父が「あれ」と言ったとき、母がすぐにビールを用意していて【阿吽の呼吸】だなと思った。
・彼らのバンドは即興などが多く、【阿吽の呼吸】で演奏しています。
注意点として、「阿吽の呼吸」は他人に対して強制するものではありません。息が合っている様子を見た第三者が使うのが基本であり、息が合っている人たちの間に信頼関係があることが前提です。信頼しているからこそ無意識でも息が合うという意味であるため、「阿吽の呼吸」のような行動を意識的にとるように求めるのは適切ではありません。例えば「阿吽の呼吸で協力するように」という言葉は間違いといえます。
「阿吽の呼吸」の類語と対義語
「阿吽の呼吸」の類語には以下が挙げられます。
・以心伝心
・暗黙の了解
・シンクロ
また、「阿吽の呼吸」には以下のような対義語があります。
・同床異夢(どうしょういむ)
・隔靴掻痒(かっかそうよう)
類語や対義語を知ることは、「阿吽の呼吸」の理解を深めることにつながるでしょう。ここでは、「阿吽の呼吸」に関連する言葉について解説します。