「遣る瀬無い」とはなすすべのない気持ちのこと
「遣る瀬無い(やるせない)」とは、何をしてよいか分からないこと、また、その気持ちを指す言葉です。感情は高まっているものの、どう表現して良いか分からないとき、あるいは、何をしても無駄だろうと思い手をこまねいているときなどに用います。
これ以上話しても無駄だ、何を言っても効果がないと感じてむなしい気持ちを味わっているときは、「遣る瀬無い」という言葉がしっくりときます。
【遣る瀬無い】やるせない
1.思いを晴らすすべがない。せつない。「恋を失った―・い思い」
2.施すすべがない。どうしようもない。
「様子が早う聞きたいとすがり責むるぞ―・き」〈浄・八百屋お七〉
3.気持ちに余裕がない。
「何彼につけて、気に―・く」〈浮・一代女・四〉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「気持ちに余裕がない」という意味もある
「遣る瀬無い」は、気持ちに余裕がないという意味で使うこともある言葉です。さまざまなことに気を配り、なんとなく慌ただしい気持ちを抱えているときに「遣る瀬無い」と表現することがあります。また、気を配りすぎて気苦労が多い様子も「遣る瀬無い」と表現することがあるようです。
【類語1】やり切れない
何をしてよいかわからない、また、どうしようもないという思いを「やり切れない」と表現することもあります。例えば次のように使えるでしょう。
【例文】
・あんなに善良な人なのに、いつも損な役回りを押し付けられているようだ。彼女を見ていると、【やり切れない】気持ちになる。
・突然の事故で彼はいなくなってしまった。【やり切れない】悲しみは、いつも私の心の奥に残っている。
なお「やり切れない」という言葉は、やり遂げられないという意味で使うこともあります。
【例文】
・仕事が多すぎて、今夜中には【やり切れない】。
・【やり切れない】分は、家に持って帰ってしてください。
また、我慢できないという意味でも「やり切れない」という言葉を使うことがあります。
【例文】
・【やり切れない】思いが爆発し、とうとう大声をあげての喧嘩になった。
・これ以上は【やり切れない】と、妻は家を出てしまった。
【類語2】やり場がない
何をしてよいかわからない気持ちを「やり場がない」と表現することもあります。この場合の「やり場」とは、気持ちを持っていくべき場所を指しているので、気持ちをどう整理して良いかわからないときに適した表現といえるでしょう。
【例文】
・【やり場がない】気持ちを抱えて、彼女は年末年始を過ごした。
・会社には理不尽な出来事が多く、彼は【やり場のない】怒りを抱えている。
【類語3】いたたまれない
その場にいられないほどの落ち着かない気持ちを「いたたまれない」と表現することがあります。恥ずかしさなどにより、その場にいることが我慢できないときなどに使うことが一般的です。
【例文】
・彼女の話を聞いて、【いたたまれない】気持ちになってしまった。一体、私に何ができるのだろうか。
・【いたたまれない】思いはあったが、そうも言っていられないので、頑張って笑顔を作って何事もないようなふりをした。
「遣る瀬無い」の使い方を例文・短文でご紹介
「遣る瀬無い」の使い方を、短文を通して見ていきましょう。
【例文】
・彼女の今までの努力を見てきたからこそ、今回のコンクールは入賞できるのではと期待もしていた。しかし、脚がもつれて転倒。彼女の気持ちを思うと、【遣る瀬無くて】何もやる気が起こらない。
「遣る瀬無い」という言葉は、「気持ち」や「表情」をつなげて使うことが多いです。また、「遣る瀬無さ」と名詞の形にして使うことも少なくありません。それぞれの例文を紹介します。
「遣る瀬無い」気持ち
「遣る瀬無い」という言葉だけでも、どうしようもないもやもやとした気持ちを表すことができます。しかし「遣る瀬無い気持ち」のように「気持ち」を付け加えることでも、どうしようもないやり切れない気持ちを表現することが可能です。使い方を例文で見ていきましょう。
【例文】
・子どものときから何をしてもうまくこなす姉を見ていると、自分がつまらない人間に思えて、【遣る瀬無い気持ち】になってしまう。
・この【遣る瀬無い気持ち】は何から来ているのだろう。