「信賞必罰」とは賞罰を厳正に行うこと
「信賞必罰」は「しんしょうひつばつ」と読みます。功績に対しては賞を与え、罪を冒した者には必ず罰を与えるという意味の言葉です。間違いなく賞を与えるという意味の「信賞」と、必ず罰するという「必罰」という2つの熟語を組み合わせています。
言葉の由来は中国の故事で、民衆を統制するため「信賞必罰」が重要だとされている内容が今日に伝わっているものです。
ここでは、「信賞必罰」の意味や言葉の由来についてご紹介します。
成果や罪を客観的に評価する
「信賞必罰」には、賞罰を与える際に私情にとらわれず、成果や罪を客観的に評価するべきという意味合いがあります。賞は金銭や名誉に限らず、功績を褒め称えることも含む広い概念です。
「必罰」は罪を見逃さず必ず罰するということで、人によって刑罰の種類が変わってはならず、分け隔てなく同じ罰則を与えなければならないことを表しています。
中国の故事『韓非子』が由来
「信賞必罰」の由来は、中国の思想家である韓非子(かんぴし)の著作『韓非子 外儲説(がいちょせつ)右上』という文献にある言葉です。
「信賞必罰」は晋という国の統治者と家臣の会話の中に出てくる言葉で、「どのようにすれば民衆を統制できるのか」という統治者の問いに対し、家臣は「信賞必罰を徹底すること」と答えています。
また「刑罰の限度はどの程度にするべきか」という問いに対しては「親しい者、身分の高い者、寵愛する者にも行う」と答え、公平性を説いているのが特徴です。
会社など組織の方針やルールとして使われる
「信賞必罰」は賞罰を厳正に行い、公正な判断を下すという内容で、組織の運営で教訓とされるべき言葉です。実際に、会社など組織の方針やルールとして信賞必罰の考えが採用されている例も少なくありません。
企業の方針の中に「信賞必罰」という表現が使われることも多く、組織の上に立つものの心得として使われることの多い言葉です。
「信賞必罰」を打ち出すデメリットとは
「信賞必罰」は組織の運営で基本とするべき考え方ですが、その考えを強く推し進めるとデメリットも出てきます。会社の業務で「信賞必罰」を明確に打ち出し、成果主義を採用する企業もあるでしょう。
達成した成果に対して報酬を与える運用は、必ずしも業績アップにつながるとは限りません。
成果主義は結果にばかり焦点を当てるため、目先の成果にばかり注目が集まります。社員同士の競争が激しくなり、職場の空気が悪化する場合もあるでしょう。
また、業績と直接関係のないスキルの向上がおろそかになる可能性もあります。数字を上げることへのプレッシャーに悩まされることもあるでしょう。
ただ功績だけでなく、功績につながるためのプロセスも重視する「信賞必罰」が求められています。
「信賞必罰」の例文
「信賞必罰」を正しく理解するには、例文を見て実際の使い方を確認するとよいでしょう。いくつか例文をご紹介します。
【例文】
・社長は冒頭の挨拶で【信賞必罰】の方針を明らかにした。
・上司は部下の誰かを贔屓することなく、【信賞必罰】の精神を徹底している。
・【信賞必罰】は大切だが、ときには柔軟な対応も必要である。
・いくら将来有望な社員でも、【信賞必罰】の精神からは例外的な扱いは許されない。
・組織運営では、【信賞必罰】の考えを忘れてはならない。
・【信賞必罰】の方針に基づき、インセンティブの制度を導入することにした。
・【信賞必罰】の精神からすれば、役員といえども処罰の対象とするべきだ。
「信賞必罰」の類語
「信賞必罰」にはよく似た言葉もあります。「論功行賞」もそのひとつで、功績の有無や大きさの程度に応じてふさわしい賞を与えるという意味があります。
善意を奨励して悪事を懲らしめるという意味の「勧善懲悪」や、恩賞と刑罰をそれぞれ適切に与えるという「恩威並行」も、「信賞必罰」の類語といえるでしょう。ここでは、「信賞必罰」の類語を3つご紹介します。
論功行賞(ろんこうこうしょう)
「論功行賞(ろんこうこうしょう)」は、功績の有無や大小をよく論じ、ふさわしい賞を与えるという意味です。「論功」は功績の大きさを調べるという意味で、「功を論じ賞を行う」と読むことができます。
中国に伝わる歴史書「三国志」を出典とするもので、「信賞必罰」の「信賞」とほぼ同義の言葉といえるでしょう。
【例文】
・営業成績がトップになったことで、彼には会社から【論功行賞】が与えられた。
・このプロジェクトが成功したら、【論功行賞】として昇格が約束されている。