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「抽斗」の読み方や意味は?
「抽斗」を正しく読める方は少ないのではないでしょうか。ヒントは、家具に取り付けられているものの名称です。
正解は……「ひきだし」と読みます。
机や箪笥などに取り付け、抜き差しができるようにした箱のことです。
小学館のデジタル大辞泉では、「引き出し」の項目で掲載されています。
【引(き)出し/▽抽き出し】
1 引き出すこと。「預金の—」
2 (「抽斗」とも書く)机・たんすなどに取り付けて、抜き差しができるようにした箱。
3 臨機応変に活用できる、隠れ持った多様な知識や豊かな経験のたとえ。「—が多く、どんな役でもこなせる俳優」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「抽斗」は、隠れ持った知識や経験があることのたとえとして使う場合もあります。「抽斗が多いため、幅広い能力を発揮できる」といった使い方をする場合です。ここでは、「抽斗」の意味や「引き出し」との違い、読み方の理由などをご紹介します。
机や箪笥などに取り付ける箱
「抽斗」は机や箪笥などに取り付け、物を入れて抜き差しする箱のことです。通常は「引き出し」と書くため、このような漢字があるのを知らなかった方も多いかと思います。
箱の形をした家具は古くエジプト時代から使われていたとされていますが、「抽斗」ができたのはそれよりもずっとあとの時代です。「抽斗」の付いたチェストが誕生したのは16世紀に入ってからとされています。
日本では江戸時代に「箪笥」が登場し、長持(ながもち)と呼ばれる長方形の木箱が「抽斗」の始まりと言われています。その後、江戸時代末期ごろに「箪笥」として一般に普及しました。
隠れた知識や経験のたとえ
「抽斗」には、箪笥などに取り付ける箱という意味以外に、もうひとつの意味があります。「抽斗」は多くの物を収納できるという点に着目して、豊富な知識や経験を持つ人をたとえるときに使う場合です。「あの人は抽斗が多い」という使い方をします。
机や箪笥に付いている「抽斗」はひとつではないものも多く、いくつもついているのが一般的です。それをたとえにして、多種多様な知識やスキルを持ち、自在に出し入れできるという才能を表現したいときに使われることが多いでしょう。
「引き出し」とは同じ意味
「抽斗」と「引き出し」は同じ意味で、どちらを書いても問題ありません。「抽き出し」と書くこともあり、こちらも意味は同じです。通常は引き出しを使い、「抽斗」が使われることはあまりないでしょう。
「抽斗」という漢字と意味を覚えておけば、何かの折に「抽斗」という言葉が出てきた場合にもすぐ理解でき、役に立ちます。また、次でご紹介するように、「抽斗」をなぜ「ひきだし」と読むのかも理解しておくとよいでしょう。
「抽斗」は「熟字訓」という読み方
「抽斗」の抽は、「抽き出し」と書くように、「ひ(き)」と読める漢字です。しかし、斗は「だし」と読むことはできず、漢字本来の音ではありません。
これは「熟字訓(じゅくじくん)」と呼ばれるものの一種です。熟字訓とは 漢字二字や三字などの熟字をひとつの言葉として訓読するもので、一文字ずつ分けて読むことはできません。
代表的な熟字訓には、「抽斗」のほかに昨日(きのう)、今日(きょう)、乳母(うば)、大人(おとな)、梅雨(つゆ)などがあります。
「抽斗」の由来
「抽斗」という言葉の由来は、「抽」と「斗」に分けて、それぞれの意味を見る必要があります。「抽」は抽出や抽選などの熟語に使われ、引き抜くという意味がある漢字です。
「斗」は升(ます)という容器を表し、穀物や酒などを計る単位でもあります。
ここでは、「抽斗」を構成する2つの漢字の意味について詳しく見ていきましょう。
「抽」「斗」それぞれの意味
「抽斗」の「抽」は訓読みで「ちゅう」と読み、「抽出」「抽象」「抽選」という熟語で使われます。「引く」「引き抜く」「抜き出す」という意味がある漢字です。
「斗」は訓読みで「ます」「ひしゃく」と読み、尺貫法による容積の単位になります。升という、穀物や酒などの量を計る四角い容器を表す漢字でもあり、「抽」と組み合わせることで「箱を引き出す」、すなわち机や箪笥の「ひきだし」を指す言葉になったのです。
「抽斗」の例文
「抽斗」の意味を正しく理解するためには、「抽斗」を使った例文を確認することをおすすめします。文章の中で、「抽斗」の意味を把握しましょう。
ここでは、机や箪笥などに取り付ける箱という意味で使う場合、多種多様な知識や経験が豊富にあるという意味で使う場合に分けてご紹介します。「抽斗」の例文を見て「抽斗」の意味を理解し、正しく使うようにしてください。