ニュースを見ていると、「企業の杜撰な管理が明らかになった」などと報道されているのを耳にしたことはありませんか? 企業の実態や政治家の失態などに対して使われることが多い言葉ですが、そもそもどのような意味があるのでしょうか?
そこで本記事では、「杜撰」の意味や由来、類語・対義語などを解説します。ビジネスシーンで「杜撰」が使われる場面についてチェックしてみてくださいね。
「杜撰」とはいい加減なこと
「杜撰」の読み方は「ずさん」。どのような意味なのか辞書で確認してみましょう。
杜撰
[名・形動]《「杜」は宋の杜黙ともくのこと、「撰」は詩文を作ること。杜黙の詩が定形詩の規則にほとんど合っていなかったという「野客叢書」の故事から。「ずざん」とも》
1 詩や文章に、典拠の確かでないことを書くこと。また、その詩文。
2 物事がいいかげんで、誤りが多いこと。また、そのさま。「杜撰な管理」「杜撰な計画」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「杜撰」は、物事の行ない方がいい加減という意味だということがわかりましたね。一般的には、ネガティブなニュアンスで使われることが多いでしょう。
中国の故事が由来
「杜撰」という言葉は、中国の故事に由来します。「杜」とは中国王朝の宋の時代(960~1279年)にいた杜黙(ともく)という詩人のことで、「撰」とは詩を作ることです。
杜黙が作る詩や文章は定型詩の格式に合わず、いい加減なものが多かったという故事があり、そこから「杜撰」という言葉が生まれました。同じ意味で、「杜黙詩撰(ともくしさん)」という四字熟語もあります。
人の性格を表すものではない
「杜撰」は、仕事や物事の進め方、行動などがいい加減な場合に、ネガティブな意味で使われる言葉です。批判する意味合いがあるため、使うときは注意が必要です。また、「杜撰」はいい加減な行ないに対して使う言葉で、人の性格や人物像を表すものではありません。「杜撰な人」「杜撰な性格」という表現は正しい使い方ではないため、気をつけてくださいね。
「杜撰」の例文
「杜撰」の正しい使い方を把握するには、例文を参考にするのがよいでしょう。いくつか紹介します。
例文
・残業が多くなるのは、仕事の進め方が杜撰なことも原因のひとつである
・企画は良かったのに具体的な計画が杜撰であったため、思うような成果が得られなかった
・杜撰な管理をしていたため、個人情報が漏洩してしまった
・今回のトラブルにより、企業の杜撰な管理体制が明るみに出た
・不祥事を起こしたあとに杜撰な対応をしてしまい、さらにクレームが大きくなった
・彼はいつも仕事が杜撰だと言われているのに、まったく改めようとしない
・杜撰な仕事をしていると、そのうちどこからも依頼が来なくなる
「杜撰」の類語
「杜撰」には、たくさんの類語があります。いい加減な状態にもさまざまなレベルがあり、「杜撰」に似た言葉として乱雑や粗雑、不備、ぞんざい、適当などがあげられます。場面に応じて使い分けてみてください。
乱雑(らんざつ)
「乱雑」の意味は、以下の通りです。
[名・形動]乱れていること。入りまじっていて無秩序なこと。また、そのさま。「―な部屋」「ノートに―に書く」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「乱雑(らんざつ)」は、秩序が乱れているという意味です。あれこれ入り混じり、散らかっている様子を表します。「杜撰」が物事の行ない方がいい加減であることを表現するのに対し、「乱雑」はもっぱら乱れた状態を表す言葉です。
例文
・部屋を片付けるのが苦手なため、部屋の中は乱雑を極めている
・机の引き出しの中が乱雑で、大事な書類がどこにあるかわからなくなった
・何者かが部屋に入り、乱雑に荒らしていった
・書き方が乱雑なため、何が書かれているのかまったく読むことができない
ぞんざい
「ぞんざい」の意味は、以下の通りです。
[形動][文][ナリ]
1 いいかげんに物事をするさま。投げやり。粗略。「仕事を―にする」
2 言動が乱暴で礼を失しているさま。不作法。「―な口のきき方」「―に積荷を扱う」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「ぞんざい」とは、物事をいい加減に行なう様子を表す言葉です。漢字表記はありません。言動が乱暴で礼儀をわきまえないことを表すこともあります。行ない方に対する表現として、「杜撰」とよく似た言葉といえるでしょう。
例文
・人から預かったものをぞんざいに扱うのはやめなさい
・彼はいつもぞんざいな態度なので、周りの人から敬遠されている
・ぞんざいな仕事をしていると、そのうち信用を失ってしまう
・ぞんざいな口調で話すのは印象が悪くなる