預貯金は生活費の6ヶ月〜1年分が目安
––––夫婦の老後や子どもの将来のために、資産形成をしたいと考えています。どんな方法があり、どうやって選べば良いのでしょうか?
目的や使う時期に合わせて、お金の置き場所を決めましょう。
出し入れの多い流動性の高いお金の置き場所としては、銀行やゆうちょ銀行などでの預貯金が一番いいと思います。お金が増える増えないという事ではなくて、お金を引き出しても損をしないということが重要です。
銀行にお金を預けるメリットは元本保証です。1,000万円(とその利息)までは元本保証されています。日々の値動きでお金が減ったりすることはないですし、いつでも引き出せるのは良いですね。
デメリットはみなさんご存知の通り、お金を預けておいても増えないということです。またインフレと言って、物の値段が上がってしまった時にも対応できません。
インフレとは、例えば、今りんごが1つ100円だとします。10年後に物価が上がって、200円のりんごが世の中に溢れるとします。そうすると今は100円で買えるのに将来は買えない、100円というお金の価値が下がってしまうということです。預貯金や、現金でお金を置いておくということは、インフレになった場合に、実質資産が目減りしてしまうということなんです。
日本は今までは物価がどんどん下がっていく時代(デフレ)だったので、結果として現金を持っていれば良かったのですが、今後はインフレ(物価上昇)の懸念もあるので、一定の預貯金が準備できているのであれば、あとのお金は中期や長期の未来を見据えて資産運用に回すのが良いかと思います。
––––預貯金はどれくらいあったら良いでしょうか?
目安は、一か月の生活費の半年から1年分ほど。例えば毎月40万円で生活している家庭の場合は半年分であれば240万円、一年分であれば500万円前後。これくらいあれば、急な病気や失業があっても療養に専念したり、お金のことを心配せずに当面暮らすことができます。
債券
国や地方公共団体、一部の企業がお金を調達するために発行しているのが債権です。債券を購入すると、発行体にお金を貸すということになります。発行体からは見返りとして定期的に利子を受け取ることができ、また満期が来ると元本の返済を受けることができます。普通預金の金利より高い金利で資産を増やすことができます。
––––債券はどこで購入できますか?
証券会社や銀行などで購入することができます。株よりもリスクが少なく、満期を迎えるまで持っているだけで良いので投資初心者や、仕事や家事などで忙しい方にも向いているかと思います。満期は個人向け国債なら3年や5年の中期のものから、10年以上の長期のものもあります。
注意しておきたいのが、満期前に解約すると元本割れする可能性がある点です。また、発行している団体や企業の信用度も見極めることが必要です。債券にかかわらず、株式や投資信託などで運用益などが発生した場合には約20%の税金がかかります。詳しくは各金融機関窓口でご確認ください。
短期取引はギャンブルの考え方
株式
短期視点で見ると、特に投資初心者の場合は個別株を買うのはあまりおすすめできません。投資の基本は長期・積立・分散投資という観点から、ご自身の資産が一つ、もしくは少数の企業に集中してしまうのはリスクが高くなるからです。
例えば、アップルやグーグル(アルファベット)などの株を20年前に買っていたら、今頃大金持ちになっていたでしょう。だけどこの20年で無くなっている企業もたくさんあります。その企業の株を買っていたら、その分の資産はゼロになります。
また、日々株価が上がったり下がったりするので、仕事や子育てをしながら株を売買するタイミングをチェックする時間があるのかも考えましょう。値下がりした時に精神的にダメージを受ける人も多く、投資初心者の方だと安心してご自身の生活を送れないのではと懸念します。短期で売買するのは、資産形成とは言えず、ギャンブルのようなものです。
––––私も以前個別株を持っていたんですが、値動きが気になって仕事中もしょっちゅうスマホを見てしまって。疲れてしまいすぐに手放しました。
何か好きな商品を提供している企業の株を買って、企業の成長を応援していくスタンスでの長期保有が前提なのであれば、すごく良いと思いますよ。子どもと一緒に経済を学ぶとか、投資をきっかけにその企業のサービスや財務体質、関連業界などに関心を持って勉強をするという考え方もあります。お年玉で安価で買える株を買ってみるというのも非常に面白いですよね。
中長期の視点で着実に資産形成をするなら投資信託が一番おすすめです。その中でも積立NISAは中期〜長期、iDeCoは長期での資産形成になります。
投資信託
投資信託は、投資家から集めたお金を資金として、運用のプロが株式や債券などの金融商品に投資・運用し、運用益を投資家に分配する商品です。日本国内や海外の株式や債券、不動産などさまざまな資産がひとつのパッケージになっている“福袋”のようなものというと分かりやすいかもしれませんね。
今、日本では約6000種類の商品(投資信託)があります。証券会社によっては100円からの積立ても可能です。個別株とは異なり、いくつもの資産に分散して投資をするのでその分リスクも少ないですし、運用のプロに任せられるので初心者の方におすすめの商品です。
デメリットとしては、投資商品ですので増える可能性もありますし、元本割れする可能性もある点です。また、販売手数料や信託報酬など各種手数料もかかりますので事前に確認しましょう。
投資信託をはじめるなら、まずは積立NISAがおすすめです。運用して得た利益が非課税になるというメリットがあります。先ほどもお伝えした通り、通常資産運用で増えたお金には約20%の税金がかかりますが、NISAの制度を使うと年間40万円までの投資元本による運用益が非課税となります。
いつでも解約してお金を引き出すことができるので、流動性も高いです。ただし、タイミングによっては元本割れする可能性もあるのでこの点は注意が必要です。
基本的には来月、来年などすぐに必要なお金ではなく、例えば子どもの入学費用や結婚式の費用など5年、10年先のためのお金として、長期での分散積立投資を前提としています。
さらに、iDeCo(個人型確定拠出年金)も非常に大きな税制優遇があるので、余裕があれば、こちらの制度も活用して積立できると良いですね。具体的には3つのメリットがあります。
1つ目は、掛け金が全額所得控除される点です。これにより、所得税と住民税が軽減されます。
2つ目は、運用して得た利益が非課税となる点です。こちらはNISA・つみたてNISAも同様ですね。
3つ目が、受け取り時にも税優遇がある点です。
デメリットは60歳になるまで解約できないことや、元本保証ではない点です。
––––老後のための資産ですね。
はい。ここまで優遇しているのは国からの「自分の老後資金は年金だけに頼らず、自分も確保してね」というメッセージですね。
60歳まで解約できないというのは、老後のお金をしっかり確保できるというメリットでもあります。意思が弱い方は良いのではないでしょうか。積立が厳しい時には、掛け金の拠出を一定期間ストップすることもできますし、最低金額5000円から、1000円単位で積立額も変更できますよ。
保険
最後は保険です。老後の資産であったり、教育用の学資保険であったり色々な種類があるので一概には言えませんが、経済的にゆとりが少なく、また子どもが小さい時に一定期間、「保障を買う」という意味では非常に有益だと思います。
例えばお父さんが会社員、お母さんが専業主婦、子どもが3歳という家庭の場合、お父さんが亡くなってしまったら経済的に生活や進路に一定の影響がでるかと思います。そんな時に死亡保険に加入していれば、積立ている途中であっても、保険金という形で、契約した額面どおりの死亡保険金が得られます。
保障という形で経済的損失を補える機能は他の資産商品にはありません。
上記は定期保険の一例ですが、今回のテーマの資産形成として保険で積立をする場合にはあくまでも長期積立が前提であって、途中解約で損してしまう可能性が非常に高いので注意しましょう。
また、保険にも「生命保険料控除」といって、税制優遇のメリットがあるので上手に活用できると良いですね。
民間保険に入る前に確認した方がいいのが、死亡保障にしても病気になった時の保障にしても、土台には公的保険があるという点です。老後の年金だけでなく、配偶者に万が一があった際に遺族に支払われる遺族年金や、一定の障害状態となった場合には障害年金があります。追加の保障が本当に必要なのかは精査した方がいいですね。
まずはざっくりでいいので、ライフプランを作ってみましょう。自分や家族の年齢、何年後にどういうイベントがあるのか。今預貯金があって、いつまでにいくら必要なのか、など。そこから逆算すれば月々いくら預貯金や資産形成に回すかも見えてきます。
「いつまでに何が欲しいの?」「じゃあお小遣いからこれくらいを貯めておこうね」と、子どもと一緒に考えられたらいいですね。(水野さん)
こちらの記事もたくさん読まれています
親子で学ぶお金の話〜お金の使い方で社会が変わる〜
親子で学ぶお金の話〜投資はギャンブルではない〜
親子で学ぶお金の話〜子どもへのお金の教育、何から始める?〜
教えてもらったのは
水野綾香さん
ファイナンシャルプランナー/金融企業広報
FPとしてマネーコラム執筆や講演などを実施。経済メディアNewsPicksの動画番組「TheUpdate」出演
https://www.facebook.com/ayaka.mizuno
ライター
Kikka
アラフォーのママライター。貯金ができない夫の代わりに老後の資金づくり担当をかってでる。「まずはやってみる」精神で投資歴10年。