「自家撞着」とは
「自家撞着」という言葉を知っていますか? 特に、「撞着」という言葉はあまり目にしない漢字ですよね。まずは、読み方と意味、語源を見ていきましょう。
読み⽅と意味
「自家撞着」の読み方は「じかどうちゃく」です。意味を辞書で引いてみると、下記の通り。
同一人の文章や言動が前後食い違って、合わないこと。自己矛盾。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
このように「自家撞着」は、「言葉や行動につじつまが合っていないこと」をあらわす言葉です。前に言ったことと、今言っていることが違う場合や、論理に矛盾が生じている場合に使います。
そもそも「自家」とは、「自分自身のこと」、「撞着」とは、「つじつまが合っていないこと」という意味。この2つの言葉で「自家撞着」という言葉が成り立っています。なお、「自分自身」という意味の「自家」という漢字が含まれるものの、「自家撞着」は、他人についていうときにも使える言葉です。
由来・語源
続いて、「自家撞着」の由来を見ていきましょう。「自家撞着」は、禅宗における課題が書かれている「公安集」に語源があるとされています。そのなかにある記述が「回頭撞着自家底」というもの。ここでは、「山の頂上は見えず、海の底も見えず、目の前には土埃が立ち、前方すらも見えない。振り返っても自分自身がどのように来たのかもわからない」ということが書かれています。
過去に辿ってきた道がわからなくなってしまうという意味が転じて、前後の言動に矛盾が生じるという意味の「自家撞着」という言葉ができたのでしょう。
「自家撞着」の使い⽅を例⽂でチェック
それでは、「自家撞着」の使い方を例文で見ていきましょう。すでに説明したとおり、「自家撞着」は、自分自身に矛盾が生じたときや、他人の言動を見て、矛盾が生じていることがわかったときに使える表現です。ビジネスシーンにも適した言葉ですので、例文を参考に、使い方をマスターしていきましょう。
「残業はダメだと部下に言っているのに、自分はいつも残業してしまい、自家撞着に陥っている」
「自家撞着」は、「自家撞着に陥る」という表現でも使うことができます。この例文からは、自分の言動につじつまが合っていないために、自己嫌悪に陥っているようすがうかがえますね。
「多くの人の意見を取り入れていると、やがて自家撞着をきたすだろう」
「自家撞着」は、「自家撞着をきたす」という表現でも使えます。「自家撞着をきたす」とは、「結果的に矛盾が出てしまう」という意味。ビジネスシーンでは、課長や部長、取引先など、さまざまな人とかかわりますよね。それぞれの意見が食い違う場合も多くありますが、全員の意見を取り入れていたら、収拾がつかなくなってしまいます。そのようなことを表現した一文です。
「この論文は最初と最後で言っていることが違っており、自家撞着をしている」
例文1と2では、「自家撞着」を名詞として使っていますが、「自家撞着する」という動詞にしても使うことができます。
撞着語法とは?
「自家撞着」という言葉と一緒に、「撞着語法」という言葉についても学んでおきましょう。「撞着語法(どうちゃくごほう)」とは、反対の言葉を組み合わせる表現のことをさします。相反する言葉を組み合わせるため、矛盾が生じる表現です。しかし、新たな視点を示すものや、本質を突くものが多いのも特徴。「撞着語法」の例としては、「公然の秘密」や「小さな巨人」「無知の知」「急がば回れ」などがあります。
「自家撞着」の類語と違いは?
続いて、「自家撞着」の類語を、一緒に確認していきましょう。それぞれの言葉が、「自家撞着」と違いはあるのかについても説明します。
自己矛盾
「自家撞着」の類語としてあてはまるのは「自己矛盾」です。意味は、「自分自身のなかで、論理や言動が食い違ってしまい、つじつまが合わなくなってしまうこと」。「自家撞着」も「自身の言動につじつまが合わなくなってしまうこと」を意味しますので、特に違いはなく、同じ意味の言葉といえるでしょう。