後編は、石岡さんの笑顔の源である「大切な人と囲む食卓」に欠かせない物事にフォーカス。中でも「お料理」「器」「調味料」「台所道具」について、今日から取り入れられる10のヒントをご紹介します。
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アパレル会社で10年、販売やプレスなどを経て、現在はフリーランスPRとしてさまざまなブランドとのコラボレーションを手がける。156cmと小柄ながら、バランス抜群なシンプルで着まわしやすいスタイルが話題で、著書『小柄な大人の春夏秋冬ベーシックスタイル手帖』(扶桑社)も発売。プライベートでは、一児の母。▶︎Instagram
【目次】
1:食卓全体にメリハリをつけて目でも楽しく
誰かを招く日や、家族のハレの日など、ちょっと気合が入る日は、あらかじめテーブルに器を並べてどれに何を盛り付けるかイメージします。この時、献立と一緒に、食卓全体にメリハリがあるかどうかもチェック。
▲器は、村上祐仁さん、吉田直嗣さん、下村淳さん、二階堂明弘さん、中園晋作さん、小林徹也さん、竹村良訓さん、fresco、3RD CERAMICS、mushimegane books. 、D i s h ( e s )など、日本の作家さんやメーカーのものを中心に愛用中。テーブルにそのまま出せる山一のミニ和せいろは『DAITADESICAフロム青森』、木製の汁椀は『我戸幹男商店』で購入し、家族の食卓からおもてなしまで活躍している。
「お料理には、目で見て楽しむという面もあると思うので、選ぶ器の形、色、サイズも大切にしています。同じようなものを並べるのではなく、高低差をつけたりサイズがいろいろだったり、メリハリがつくように。
色や形がいろいろでも統一感が出るのは、マットで土の質感が生きたもので揃えているからだと思います。中にはつるりとした仕上がりの焼き物もありますが、使い込むうちに味わいの出る貫入(かんにゅう)の入ったものだったりと様々です。質感があるもの同士であれば、自然となじみます」(石岡さん/以下同)
2:お料理の盛り付けは「色」を楽しむ
お料理と器の組み合わせで、石岡さんが意識していることの一つが「色」。特に、たくさんのお料理がずらっと並ぶ場合に意識するとよいのが、2パターンの色使いなのだそう。
▲白い器に盛り付けられた白系のお料理たち。左:茹でた春雨を、ごま油、微塵切りにしたニンニクとネギ、水適量、ガラスープ、蟹缶、ナンプラーで和え、仕上げにたっぷりのミントとライムで仕上げた温かい春雨サラダ。右上:ヘルシーな蒸し鶏には白髪ネギを添えて。ここに中国醤油を使った秘伝のソースをかけていただく。「茹で卵はラフに手で割ると、動きが出ます」。右下:ホワイトマッシュルームを薄くスライスし、チーズをすり下ろし、塩とオリーブオイルでいただく。
「一つは、お料理と器を同系色でまとめる盛り付けです。たとえば、白い器にマッシュルームの白いサラダ。ファッションと似ていて、同じような色を一皿にのせると簡単にまとまりが出て、美しく仕上がるように思います」
▲mushimegane books.の青い器には、酢と塩でマリネした紅芯大根を。無造作に盛り付けるのではなく、一枚一枚をくるりと巻きつけるようにして、動きと高さを出している。
「もう一つは、鮮やかな器に真逆の色味のお料理を盛り付ける組み合わせです。便利なのは、こげ茶と青の器。たとえば、こげ茶の器に赤身のステーキ、青の器には紅芯大根のマリネなど、食材も鮮やかなもの、黄色の器には紫芋のポテトサラダなど。正反対な補色を合わせると意外と締まります」
3:薬味やソースも食卓の「差し色」
お料理の上にのせる薬味や仕上げのソースも、「差し色」感覚で捉えると、食卓にメリハリが出て華やかになるそうです。大根の鬼おろしやカイワレダイコンなら、お料理の仕上げにこんもり、たっぷりと。ソースは器全体のバランスを見ながら、仕上げに一筋。あとはお好みで追加できるよう、器に入れてお料理のそばに添えておきます。
▲ひき肉を挟んで揚げたナスに、新潟のおろし金でたっぷりおろした鬼おろしをのせる。揚げ物など茶色になりがちなメニューは特に、薬味により色が加わり、後味も爽やかに。
「蒸し鶏には中国醤油を使ったとろみのあるソースをかけたり、揚げナスの仕上げにブロッコリースプラウトや大根おろしをたっぷりとのせたり。特に薬味は、口の中がさっぱりとして、どんどん食べ進められるので、惜しみなく盛り付けます」
4:せいろ料理で一石二鳥
普段の食卓からホームパーティまで、せいろ料理を頻繁に作るそうです。サイズも、用途に合わせて2種類を愛用。テーブルにそのまま出せる直径18cmの『DAITADESICAフロム青森』で購入した山一のものと、たっぷり一度に蒸せる直径30cmの合羽橋で購入したものです。
▲蒸してそのまま出せば、テーブルが華やかになる。
▲お鍋で出汁をとりながらせいろをのせて蒸せば、一石二鳥。
「お野菜、お魚、お肉、焼売など、いろいろな食材を蒸して、楽しんでいます。特に『DAITADESICAフロム青森』でお鍋とセットで購入した山一のせいろは、蒸しながらお鍋に昆布や鰹節を入れておけば出汁もとれて、お味噌汁も作れてしまいます」
5:大皿料理と下準備で、ホストもパーティーを楽しむ
おもてなしでゲストにゆったり楽しんでもらうためにも、ホストである自身もゆっくり食事を楽しみたいと、石岡さんは言います。
▲使いやすく整えられた石岡家の台所。
「献立を考えるときは、パーティーが始まったら、台所とテーブルをちょこちょこ行き来しなくてもいいようなメニューを考えます。それには、せいろ料理や大皿料理のように、ドンと出せる一品がいくつかあると心強いですね。
献立を決めたら、スムーズに複数品を仕上げるために下準備をします。いくら作り慣れていても、何品も同時進行するとアワアワしてしまうので、メニューごとに使う食材をバットにまとめ、あとは加熱したり盛り付けるだけにしておきます」
▲あとは、お料理とお酒、そしておしゃべりを心ゆくまで楽しむだけ。
この日も、蒸し鶏、ナスのはさみ揚げ、ジャガイモの素揚げ、紅芯大根のマリネ、白身魚の蒸し物など、バラエティゆたかなメニューが、ものの30分ほどで完成しました。
6:調理道具を買う場合は、頼れるお店や口コミで決める
石岡さんの台所には、手入れをしながら使い込んだ調理道具が並びます。中にはちょっと値がはるものもありますが、どれも使い勝手のよいお気に入りなのだとか。暮らしにフィットする調理道具は、どのように選んでいるのでしょうか?
▲D i s h ( e s )の取手が取れる鉄のフライパン『PAN.20cm、26cm』。「焼き目がしっかり付けられて、使いやすいです」。
「なんとなくよさそうかも?とフワッとした状態で買って、自分の暮らしに合わなかったら悲しいですよね。私の場合は、とくに吉祥寺のお店『だいどこ道具ツチキリ』さんを信用して、頼っています。よい部分もネガティブな部分も伝えてくださるのと、私の今の暮らしにはこれがおすすめと教えてくださるんです。
あとは、口コミから決めることも多いですね。何がよいか、グルメな方やお料理好きなど信頼できる人に、どんどん聞きます」
7:一つで何通りも使える調理道具3選
せいろのように、一つで2通りや3通り使える調理道具が多いのも、石岡家の台所の特徴です。中でもおすすめの3つを教えていただきました。
▲山一/檜まな板 M28。住宅の端材として出た檜をアップサイクルしたもの。「これまで長方形のまな板を使ってきましたが、丸型が想像以上に使いやすくて驚きました」。
「『山一』の丸い檜のまな板は、これまで出会ったものの中でも使いやすくて気に入っています。じつはこれまで、市販品でベストなまな板に出会えずにいたのですが、これはちょっとした隙間で作業ができるので便利。一辺が直線になっているので、乾かすときに自立してくれるんですよ」
▲金網つじ/手編み丸盛り網 銅。1cmほどの脚がついているのが、便利なポイント。小(21cm)、大(24cm)の2サイズ展開で石岡さんは大を愛用。「お値段は少し張りましたが、長く使い込めば使い込むほど風合いが増すのも楽しみです」。
「雑誌でツレヅレハナコさんが愛用されているのを見かけて、見た目の美しさにもひかれて、どうしても欲しくて探した京都の『金網つじ』の丸網です。揚げ物の油切りはもちろん、そのまま食卓へ出す器としても活躍してくれます。野菜や果物の水切りにも使えますよ」
▲IRON CRAFT/揚げ鍋(17cm)。「フライパンや鍋は、長く愛用できるよう、基本的には鉄製を愛用しています」。
「『だいどこ道具ツチキリ』さんで購入した南部鉄器の揚げ鍋は、揚げ物、蒸し煮、ミルフィーユ鍋と、いろいろなお料理に活躍しています。鉄製だけど、錆びにくく、扱いやすいのも嬉しい」
8:スタッキングできるグラスが便利
お酒好きで、酒器にもこだわる石岡さんですが、引越し間近の現在、意外に重宝しているのがスタッキングできるグラスです。缶ビールを注いで乾杯したり、息子さんのグラスに使ったり、ヨーグルトなどのデザートを入れたり・・・。「まだまだ人が集まるし、生活する上でもグラスは欠かせません。厳選した結果、スタッキングできる3つを残しました」。
▲偶然にもシンデレラフィットした3つのグラス。購入したのは、代々木上原『Roundabout』、『無印良品』、『MUJI FOUND』。
じつはこの3つ、全くバラバラの場所で買い集めたものなのだとか。透明なガラス素材で揃えることで、違和感がありません。
「偶然にもほぼ同じサイズで、見た目も似ていたんです(笑)。重ねられることで、スペースを取らず、重宝しています」
9:お酒と同じくらい大好きなティータイムのお供
中国茶を教える先生「スーさん」と出会い、そのアトリエでいただいた中国茶のおいしさに開眼。近頃、すっかりお茶にハマっているそうです。
▲『AELU』で購入したトレイは、倒木を30〜40回ほどやすりがけしてツルツルに仕上げたアップサイクルアイテム。茶器は『D i s h ( e s )』、茶葉は、スーさんが『中国茶教室 Sobae』で紹介するオリジナル。
「茶器をお湯で温めてから丁寧に淹れてもらった中国茶の、香りの高さに驚きました。気分までフワッと高揚して・・・。これから、お茶の淹れ方も茶器も、少しずつ深めてゆきたいと思っています。
今、楽しんでいるのは『D i s h ( e s )』のスパイスティーや、スーさんのアトリエで購入した烏龍茶です。日々駆け抜ける時間の、ほっと一息になっています」
10:調味料は1ヶ月ごとにチェック
調味料は、気軽に買えるものも多く、いろいろ試したくなるもの。一方で、賞味期限内に使いきれないという声もよく聞きます。石岡さんは、使い切るためにも「いろいろなものに手を出さない」が鉄則。そのうえで、だいたい1ヶ月ごとにチェックしているそうです。
▲おいしい調味料は、素材の味を格上げしてくれる。
「頻繁に見直すようにしていますが、引越しに向けてスパイス類をチェックしたら、半年くらい前に賞味期限が切れているものを発見しました(笑)。あまり使わないものは、次から買わない。そして、そういう使いきれない調味料が必要なお料理も作らないように心掛けています。
いま残っているのは、繰り返し買う、よく使う調味料ばかり。お醤油、米油、ごま油、お酢、お塩など、ベーシックなものばかりですが、結果的によく手が伸びるのは、昔ながらの丁寧に作られている調味料です。
子どもが生まれてからは、ドレッシングも手作りが増えました。といっても特別なことをするわけではなく、お酢、オイル、お塩を混ぜるだけのシンプルなもの。とても簡単だけど、食材の味がより感じられておいしいですよ」
愛用中の5つの調味料
「身近なスーパーなどで手に入る調味料から、専門店やWEBで購入したものもあります」という、石岡さんの調味料選び。身近にある、続けられるものを中心に、信頼する作り手のものを選んでいるそうです。ここでは、中でもおすすめの5つを教えていただきました。
▲左から:D i s h ( e s )/Monday、SOLSOL SEOUL/SESAMI OIL、近藤醸造/五郎兵衛しょうゆ、ろく助 旨塩、金七商店/クラシック節。
「『D i s h ( e s )』のスパイス『Monday』は、カレー作りのベースや、素揚げしたジャガイモや唐揚げにかけてと重宝しています。スパイスって使い慣れないと難しいと感じるかもしれませんが、油と合わせたり加熱すると香りが立つので、揚げ物や炒め物のアクセントと考えるとグッと使いやすくなりますよ!
友人から教えてもらった『SOLSOL SEOUL』のごま油は、一度試したら病みつきになりました。生搾りの韓国のものなのですが、香りが全く違います。熱々ごはんに明太子をのせ、そこにたらすと絶品!サラダにかけても引き立ちます。
東京のあきる野で作られている『五郎兵衛しょうゆ』は、かけ醤油としても使えるくらい旨みが強く、味付けにコクがでます。
粗塩の『ろく助 旨塩』は、その名の通り、旨みが強い!蒸し物やサラダなどの仕上げにパラリとかけて使います。下味には、惜しみなく使える『伯方の塩』をずっと愛用しています。
あとは、鹿児島の『金七商店』の上質な鰹節『クラシック節』もおすすめです。出汁をとるのにも、卵かけごはんにかけたり冷奴にのせたりそのまま食べてと、毎日いろいろ活躍しています。お味も香りも良い!」
▲『D i s h ( e s )』のエプロンをサッと付ければ、お料理・家事モードに切り替わる。
最後に、石岡さんに器や調理道具、調味料などにこだわる暮らしの魅力を伺いました。
「ものを買うときは、店頭で販売員の方や、個展なら直接作家さんとお話をします。そこで、どういうふうに、どのような想いで作られているかを聞くのが好きで。お話を聞いて、その想いまで受け継いで使ってゆきたいんです。そうすることで、もっともっと大事に、心を込めて使えそうですし、愛着もますます湧きます。
器を好きになってよかったと思うのが、お料理のレパートリーはもちろん、趣味が増えたこと。年齢を経ても、流行に左右されない、一生ものの趣味になったと思います」
3月3日から4月6日までの約1ヶ月間、石岡さんがセレクトする器を中心に台所道具、エプロンなどを手に取ることができるPOP-UPイベントが開催されます。
「心まで満たしてくれる食をもっとたのしんでいただけるような、作り手さんの想い、付加価値を、手にとっていただきけるイベントにできたらなと思っています。皆様のご来店をお待ちしております」
「実」minori展
期間 3月3日(金)~4月6日(木)
時間 9~22時(最終日は19時終了)
※営業日・時間は変更になる場合がございます。
場所 代官山 蔦屋書店・3号館1階 料理フロア
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ディレクション/山本有紀(itoto inc.) 写真/石野千尋 取材・文/ニイミユカ