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LIFESTYLE インタビュー

2023.04.21

【連載/こじらせ男のひとりごと#7】又吉直樹さん「結婚に貪欲じゃない雰囲気を出す努力をしています」

「こじらせてる」大人男子たちが自らの「こじらせぶり」を語る人気連載。今回は、10年ぶりにエッセイ集を発売した又吉直樹さん。そこでもマイペースすぎる生活が明らかに。

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ひとりで散歩して、本読んで、音楽聴いて、カレー食べて、文章書いて。これが僕の日常です

「息をしているだけでも恥ずかしい」と語る前書きで始まるのは、又吉さんの最新エッセイ集『月と散文』。人見知り全開の20代を経て今、こじらせぶりは落ち着いたかと思えば、まだまだ恥ずかしさと自意識の混沌が続いていて…。その心の奥を語ります。

語り/又吉直樹(ピース)

表現活動ではないところで仕事を得るのが嫌だった

思えば20代前半まで、人と接することを極端に避けて暮らしていました。芸人仲間とも遊ばない、仕事関係の人が来る食事会だと言われても、行きたくない。自分の表現活動と関係のないところで仕事を得ようとするのが、嫌だと思っていたんです。

ただ、20代後半からは少し変わりました。ひとりでコツコツ物書きをするだけでなく、人と接することで生まれるものも、あるんじゃないか。そう思って、打ち上げなんかにも参加するようになりました。周りからはずいぶん、驚かれましたけどね。「来てくれてありがとう」って、必要以上に感謝されたのも、なんだか恥ずかしかったな。

人が集まった飲みの場などで、積極的にしゃべるわけではないけれど、みんなの激論を聞いて、家に持ち帰って思い返し、自分の考えを加えたり、構成し直したり。少しずつ書くスタイルができていきました。

ベンチに座る又吉さん

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でもコロナ禍以降はまた、20代前半の過ごし方に戻りました。いや、感覚的には18歳ぐらいまで戻ってしまったかもしれません。誰とも会わず、ひとりで散歩して、本読んで、映画見て、音楽聴いて、カレー食べて、文章書いて、寝て。今もその繰り返しです。

マイペースといえば聞こえはいいけれど、それがひどく出ることもよくあります。以前、井の頭公園で本を読んでいたとき、すごくいいところで「又吉さん!」って声かけられて。それに応えたいんやけど、めっちゃいいところやから顔を上げられない。キリのいいところまで読んだら返事しようと思って本に集中したまま、約5分。顔を上げたら、誰もいませんでした。ごめんな。無視したみたいになってしまって。

又吉直樹さんの後ろ姿

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エッセイや小説の妄想力は、恋愛には活かせていません

こんなふうに自分のペースを優先した生活でありながら、好きになった人には、嫌われたくないからめちゃくちゃ気を使います。いつでも予定は合わせるし、すごく優しい。もう、めちゃくちゃ優しいんです。でも、そんな僕の気持ちが伝わることは、ありません。

なぜなら、嫌われたくないから。自分から告白もできないし、フラれないために遠回しに聞くのが精一杯。「『付き合って』って言ったことが昔あんねんけど。どう思う?」というふうに。これを聞いた相手が、「私だったらうれしい」といい反応を見せても、これは客観的意見なのか僕のことを意識して言っているのか、わからなくなる…。で、結局は相手から「なに考えてるかわからない」って言われて、それっきり。

エッセイでも、小説でも、たくさんの妄想をして、たくさんの文章を書いてきたけれど、その力、自分の恋愛にはまったく活かせてないようです。

背もたれに肘をかける又吉直樹さん

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「結婚に貪欲じゃない雰囲気を出す」努力をしてます

恋愛がこの調子ですから、結婚はいまだしていません。なんでできないんかな、と考えたら、最近ひとつの答えにたどりつきました。

僕は小3から高3までサッカー部で、ずっと練習漬けの生活で、朝練も夜練も休みなくやってきました。そして芸人になってからは、毎日ネタを考え続けて、やっと劇場に出られて、ライブができるようになった。小説を書けたのも、毎日本を読んで、休まず文章書いて、という連続の成果です。どれも、ものすごい必死でした。それは、客観的に見れば「努力」と言うものなのでしょう。でも、結婚に関していえば、朝練も夜練もやってないし、なんの努力もやってきていない。なんの大会も出てないし、ステージにさえ上がってない。これでは、結婚なんてできるわけない、というのが僕の考えです。

かといって、出会いの場に行くとか、鼻息荒く婚活しようとしても、むしろ縁が遠ざかりそうな気もします。ほら、適度に力が抜けていたほうが、ものごとは上手くいくって言うじゃないですか。だから、「結婚にそこまで貪欲じゃない雰囲気を出す」っていう「努力」をしてます。この成果は、まだ出ていません。そもそも、この方法が、ほんとうに合ってるのかどうかも、わからないですけどね。(終わり)

ホール会場の中を歩く又吉直樹さん

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芸人

又吉直樹

またよし なおき/1980年大阪府寝屋川市生まれ。2003年にお笑いコンビ「ピース」を結成。2015年に本格的な小説デビュー作『火花』で第153回芥川賞を受賞。同作は累計発行部数300万部以上のベストセラー。2017年には初の恋愛小説となる『劇場』を発表。2022年4月には新聞連載作に加筆した小説『人間』を文庫化。エッセイ集には『第2図書係補佐』『東京百景』、自由律俳句集(共著)に『蕎麦湯が来ない』などがある。2023年3月、10年ぶりとなるエッセイ集『月と散文』を発売。
YouTubeチャンネル 『
ピース又吉オフィシャルコミュニティ『月と散文

大ヒット中!又吉直樹さん最新エッセイ『月と散文』

「マクドナルドに一人で行くことができない」というエピソード、かつての恋人が合宿免許を行こうとしたら、「免許取りに行くとこやなくて、恋愛しに行くとこやから」と嫉妬に駆られた話…。又吉さんの過去のこじらせエピソードがちらほら出てくるエッセイ『月と散文』。日常にひそむネガティブなことを笑いに変換しつつ、又吉さん特有の繊細さと優しさが満載! 詳しくはこちら>

撮影/高木亜麗
取材・文/南 ゆかり

連載:こじらせ男のひとりごと

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