手軽にできて、奥深い! おうちでできる本格科学実験をご紹介
夏休み真っ最中の今日この頃、お子さんの宿題ははかどっていますか? 悩みどころといえば「自由研究」。どんなテーマを選べばいいのか、お子さんと一緒に頭を抱えているママ・パパも多いことでしょう。そんなご家庭のために、おうちでできてワクワク楽しめる、おすすめ科学実験をご紹介します。
サイエンスエンターテイナー・五十嵐美樹さんの著書『おうちサイエンス – 自宅が研究室になる! 今日から君は研究者!-(ワニブックス)』から、2種類の科学実験をピックアップ。実験自体は1時間程度とかからず完結できるので、今からでも十分間に合います! 今年の自由研究にぜひお役立てください。
※注意点をよく確認のうえ、必ず保護者の指導のもとおこなってください。
【おすすめ実験1】 触って学ぶ!「磁性スライム」を作ろう
磁石を近づけると、まるで意思を持つかのように動き出す不思議なおばけ。その正体は、砂鉄を混ぜた「磁性スライム」です。
用意するもの
〈道具〉
・透明のカップ 2個
・割りばし 1膳
・磁石
※磁力が強いネオジム磁石がおすすめ
〈材料〉
・ホウ砂(ほうしゃ) 10g
・洗濯のり(PVA:ポリビニールアルコール入りのもの) 50ml
・ぬるま湯 100ml
・水 50ml
・砂鉄 適量
ホウ砂は薬局、砂鉄はホームセンターなどで購入することができます。ネオジム磁石やPVA洗濯のりは、100円ショップに取り扱いがある場合も。Amazonで探すのもおすすめです。
実験を始める前に、ここに注意!
・ホウ砂を使用する際は、目や口の中に入らないように注意。
・磁石を使用する際は、くっつけるときに指などをはさまないように注意。保管時も十分気をつけてください。
・まわりに磁石で壊れるもの、磁気を発するものがないか注意しながら実験してください。磁気を発するものがあると、思わぬ方向にものが飛んでいってくっついてしまうことがあり危険です。
作り方
1. カップにぬるま湯とホウ砂を入れ、割りばしでよくかき混ぜる。
2. 別のカップに水と洗濯のりを入れ、割りばしでよくかき混ぜる。
3. 2に1を加え、割りばしでよくかき混ぜると、スライムができあがりました。
4. スライムに砂鉄を加えて、よくこねる。様子を見ながら、全体が黒くなるまで混ぜて完成。
全体が黒くなったスライムに磁石を近づけてみると…
スライムがひとりでに動き出します。磁力が弱いときは、磁石を近づけた状態で少し待ってみましょう。
目玉をつけると、おばけみたいでかわいい! ネオジム磁石のような強力な磁石を使うと、生き物のようにびよーんと伸びます。スライムの上に磁石を置くと、飲み込むような動きも。砂鉄の量やスライムのかたさを変えて、違いを研究するのもおもしろそうです。
洗濯のりにはPVA(ポリビニールアルコール)という成分が含まれ、PVAは鎖状の構造をしています。そこにホウ砂の水溶液が混ざると、2本の鎖がつながってはしご状に。すると、ゆっくりひっぱると伸びるけれど、急にひっぱると切れてしまう、スライムの性質をもつようになるのだそう。さらに砂鉄を混ぜると、スライムがぴっちりと砂鉄を包みます。その結果、磁石を近づけると砂鉄と一緒にスライムも動いてしまうのです。
【おすすめ実験2】気分は探偵!? ジュースからDNAを取り出そう
生き物の設計図である「DNA」。普段は目に見えないDNAですが、ちょっとした実験で取り出すことができるのをご存知ですか?
用意するもの
〈道具〉
・ガラスのコップ 1個
・無水エタノール 30ml
・割りばし 1膳
〈調べてみるもの〉
・オレンジジュース(果汁100%のもの) 30ml
無水エタノールはドラッグストアやホームセンター、Amazonなどで購入可能です。
実験を始める前に、ここに注意!
・無水エタノールは飲用ではありません。誤って飲まないように注意しましょう。
・無水エタノールは揮発性が高いので、使ったらすぐに容器のフタを閉めてください。また、引火しやすいため、火の近くでは使わないようにしましょう。
・揮発した無水エタノールの成分が空気中に残ることがあります。部屋の換気は必ずおこないましょう。
・実験に使ったジュースは飲まないでください。
作り方
1. コップにジュースを注ぐ。
2. コップの側面に割りばしを当て、はしに伝わらせながら無水エタノールをゆっくり注ぐ。ここでジュースと無水エタノールが混ざらずに二層になるよう、勢いをつけずゆっくりと注ぐのがポイント。
3. しばらく放置しながら、コップの中を観察する。早ければ1分ほどで、無水エタノールに白いかたまりが浮かんでくる。
4. 割りばしなどすくって取り出す。
取り出したDNAを観察してみよう!
この実験は、DNAが水に溶けやすく、エタノールに溶けにくいという性質を利用しています。取り出したもののなかに実際にDNAが含まれているかどうかは、酢酸オルセインやメチレンブルーという薬品で染めることで確かめることもできます。これらの試薬は一般家庭の購入は難しい場合もありますが、覚えておくと中学・高校の理科の授業でも役にたつはずですよ。
DNAはすべての生物がもつ、遺伝情報を伝えるもの。実験とあわせて遺伝のしくみなどを調べてまとめれば、より深みのある研究になりそうです。
「なんでだろう?」の気持ちを大切に、楽しく実験&発見!
簡単だけど奥深い「おうち科学実験」、この機会にぜひお子さんと一緒にお楽しみください。「はじめは、仮説の通りにいかないこともあるかもしれません。そんなときに思う『なんでだろう?』という気持ちをぜひ大切にしてください」と五十嵐さんは言います。もしも実験に失敗してしまっても、「なんでだろう?」の気持ちを楽しんで実験を繰り返すことで、自分なりに新しい発見があるかもしれません。実験結果について親子で語り合うのも、素敵な時間になりそうですね。
書籍『おうちサイエンス』には、今回紹介した以外にもまだまだたくさんのワクワク実験をご紹介しています。炎色反応、色が変わる焼きそば、指紋捜査などなど…。気になる方は、本書もあわせてチェックしてみてください!
写真/三村健二
– 自宅が研究室になる! 今日から君は研究者! -(五十嵐美樹 著/ワニブックス) 1,540円(税込)
夏休みの自由研究にもおすすめ!
NHK高校講座「化学基礎」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などメディア出演多数。
サイエンスエンターテイナーが紹介する、自宅で楽しく学べる20の実験!
全国で開催しているサイエンスショーで
反響の大きかったものを中心に、
子どもが「やってみたい! 」と思えるような実験を集めました!
ワクワクして、楽しく学べるものばかり。
身近なもの・手に入りやすい材料を使うから、自宅で気軽に実験できます。
今日から自宅が研究室、みなさんは研究者!
楽しみながら考える力を伸ばす
おうちサイエンスを始めましょう!
教えてくれたのは…
五十嵐 美樹
サイエンスエンターテイナー。東京大学大学院修士課程修了。東京大学科学技術インタープリター養成プログラム修了。2020年春より東京大学大学院情報学環客員研究員。ジャパンGEMSセンター特任研究員。国際科学オリンピック応援団。2021年度NHK高校講座「化学基礎」レギュラー出演。幼い頃に虹の実験を見て感動し、科学に興味を持つ。学部在学時に「ミス理系コンテスト」でグランプリを受賞後、自身が科学に興味を持つきっかけとなった科学実験教室やサイエンスショーを全国各地の子どもたちにむけて開催、講師を務める。科学館や小学校だけでなく、商業施設や地域のお祭り、お寺など幅広い場所でサイエンスショーを開催し、科学の一端に子どもたちが触れるきっかけを創り続けている。Great Explorations in Math and Science取得。また、大企業エンジニア職での経験を活かして理系女子キャリアイベントの講師としても活動し、理系女子未来創造プロジェクト理事を務める。女子を対象に理科教育などを実践する個人または団体を表彰する日産財団「第1回リカジョ賞」準グランプリ受賞。
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