「辛い」と「辛い」ってどう違う?
「辛い」という文字を見て、あなたはどのような読み方をしますか。文中にある場合は、文脈から判断できますが、漢字単体で見ると読み方に迷ってしまいます。
というのも「辛い」という漢字が、まったく同じ文字と送り仮名をもちながら、2つの読み方をする漢字であるためです。本章では「辛い」がもつ2つの読み方や、見分け方などを解説します。
2つの読み方
「唐辛子が本当に辛い」と「労働時間が長くて辛い」という、2つの文章には、どちらも「辛い」という漢字が使われています。読み方としては、1つ目の文章が「からい」、2つ目は「つらい」と読みます。
「からい」と「つらい」には異なる意味があるため、正確な読み方を知らないと、文章が不適切になってしまうかもしれません。
見分け方
「つらい」と「からい」といった、2つの読み方は、どのように判断すればよいのでしょうか。結論からいえば、どちらの読み方が適しているのかは、文脈から判断するしかありません。多くの人は「からい」と「つらい」といった2つの読み方を、文脈から自然に判断しています。
日本語にはこのように、同じ漢字であるにもかかわらず、異なる読み方や意味をもつ言葉が多くあります。これが、「日本語は難しい」と言われる要因かもしれません。
漢字でもひらがなでもOK!
「辛い」には、からい・つらいといった2つの読み方があります。同じ漢字ではあるものの、厳密には「からい」と読む場合は常用漢字であり、「つらい」と読む場合は非常用漢字とされているようです。
そのため公的な文章の場合、「からい」と読む場合は漢字で表記し、「つらい」と読ませる場合はひらがなで表記します。公的な文章でない場合は、漢字とひらがな、どちらで表記しても構いません。
「辛い」が2つの意味をもつ理由
「辛い」という文字に、2つの読み方があることはお分かりでしょう。ほとんどの人が文脈から自然に、どちらの読み方をするのか判断しているかもしれません。
しかし、この表記について、全く意味が異なるのにもかかわらず、同じ漢字を使用しているのはなぜかと疑問に感じたことはありませんか。本章では「辛い」という漢字に、なぜ2つの意味があるのか解説します。
象形文字であるため
中国から伝わった漢字は、「象形文字」に分類されます。自然や生物の形態に基づいて創られたのが、象形文字です。たとえば、山々が連なっている様子から「山」という漢字ができました。
では「辛」という漢字はどのような象形から派生したのかというと、なんと「入れ墨を入れるための針」から来ているといわれています。苦痛を伴う器具を使用することか、「つらい」を意味する漢字としても使われるようになりました。
味覚ではないため
「からい」と「つらい」が同じ漢字を用いるのは、そもそも「からい」が味覚の一種ではないためです。
味覚には「辛味(からみ)」は含まれていません。実際、人間の舌が感じる辛さは、味覚ではなく「痛覚」の一部とされています。この痛覚は、要するに「痛み」として感じられるものです。「つらい」と「からい」は、かけ離れた言葉ではないのかもしれません。
「辛い」の類語は?
「辛い」には、いくつかの類語があります。もちろん「からい」と「つらい」、どちらの読み方を用いる場合にも、それぞれ類語があります。
本章では2つの読み方、それぞれの類語を紹介していきます。似た意味の言葉を知っていれば、「辛い」の漢字を文中で何度も用いることがなくなり、より伝わりやすい文章ができるでしょう。
「つらい」の類語
「つらい」の類語として考えられる言葉は、以下のとおりです。
・切ない
・やるせない
・たまらない
・苦しい
なかでも「苦しい」は、「つらい」の言い換え表現として適切でしょう。また、汎用性の高い言葉でもあるためおすすめです。