「福耳」とは耳たぶが厚く大きな耳のこと
「福耳」(ふくみみ)とは、耳の形を表す言葉のひとつです。主に耳たぶが厚く、大きな耳が「福耳」と呼ばれます。
「福耳」は福相(裕福そうに見える顔つきのこと)のひとつといわれ、口角が上がっていたり、肌艶が良かったりといった福々しい顔つきも福相です。
また、古くから「福耳はお金持ちになれる」といわれています。開運につながるなど、縁起の良いものとされているのが大きな特徴です。
ふく‐みみ【福耳】
耳たぶが大きく肉の厚い耳。福相とされる。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「福耳」の形は2種類ある
ひと口に「福耳」といっても、その形状はさまざまです。一般的には以下の2つに分類されます。
福耳は縁起が良いとされるぶん、具体的な形について気になるものではないでしょうか。「自分は福耳?」「家族や知人の耳は福耳なの?」と疑問に感じた方は、該当するかぜひチェックしてみてください。
耳たぶが上向きの福耳
ひとつ目は、耳たぶが上向きになっている形です。このタイプの福耳は「お金持ちの相」とされています。
理想の形は、耳たぶに米粒が乗るほど上を向いた状態です。後からご紹介する七福神の耳も同様のタイプが多く見られます。
なかでも、財宝・開運を司る大黒天の耳は上向きの福耳です。「福耳は縁起が良くお金に困らない」といわれるようになった理由も、七福神の耳に似ていることが理由のひとつと考えられます。
耳たぶが垂れ下がっている福耳
耳たぶが大きく垂れ下がった福耳は「偉人・聖人の相」とされています。代々崇められてきたお釈迦様や、儒家の始祖である孔子と同様の形です。
実際に、お釈迦様の仏像は耳たぶが長く垂れさがったタイプが多く見られます。また、古くから残る孔子の肖像画でも豊かな耳たぶの形が確認できます。
このタイプの福耳をもつ人は、金運があるだけでなく多くの人から支持されやすいともいわれています。お釈迦様が多くの人々に崇められていること、孔子のような偉人が多くの人に影響を与えたことなどが関係するといえるでしょう。
「福耳」が縁起が良いという印象は神様から
前述したように、「福耳」の「縁起が良い」「お金持ちになれる」という印象は、神様やお釈迦様の耳の形に由来しています。具体的には、七福神の恵比寿や大黒天、布袋尊などの神様です。また、お釈迦様の耳の形については古くから経典などで述べられています。
これらの神様たちには耳たぶ以外にどのような特徴があり、なぜ縁起が良いとされているのでしょうか。信仰の対象などからその理由を紐解いていきましょう。
「福耳」が特徴的な日本の神様
「福耳」が特徴的な日本の神様には七福神が挙げられます。七福神とは、福徳の神として信仰される7人の神様のことです。それぞれに特徴があり、見た目や信仰の対象は異なります。
なかでも恵比寿、大黒天、布袋尊は福耳が特徴的です。また、それぞれ金運や開運、子孫繁栄などと関係しています。
恵比寿天(えびすてん)
恵比寿天は漁業の神様であり、商売繁盛の神様です。七福神の中で唯一の日本を起源とする神様でもあります。
福耳の恵比寿天は、左手に鯛を抱え、右手に釣竿を持っているのが特徴です。これは、満3歳になっても歩かなかったため船に乗せられ捨てられた後、漂着した浜の人々の手により手厚く祀られたことが関係しています。
優しい笑顔をたたえる表情は「恵比須顔」とも呼ばれます。恵比須顔もまた、福を呼び込むとされる福相のひとつです。
大黒天(だいこくてん)
大黒天は、五穀豊穣や商売繁盛、財福無量などのご利益で知られる神様です。一度仏となった後、人々に福徳を授けるために現れたといわれています。「大黒様」などの呼び名で広く親しまれている点も特徴的です。
大黒天も上向きの福耳で、その多くが満面の笑みで描かれています。手に持っているのは打ち出の小槌です。打ち出の小槌は、振ると思い通りの物が出てくる不思議な宝のひとつとされています。
恵比寿天と違い、大黒天はインド神話を起源とする神様です。インド神話では、荒々しい破壊神の姿でした。中国を経て日本に伝わることで独自の理解が加わり、今のように穏やかで福々しい見た目に姿を変えたといわれています。
布袋尊(ほていそん)
布袋尊は「布袋様」とも呼ばれ、財運や夫婦円満、子宝、開運などの神様として知られています。他の神様との大きな違いは、モデルとされる中国の僧侶が実在することです。僧侶がいつも大きな袋を持っていたこと、その袋から施しを受けていたことなどが名前の由来とされています。
布袋尊もまた耳たぶが大きく、いつもニコニコと穏やかな笑みを浮かべている神様です。古くから禅画の題材として描かれ、福の神として崇められています。
「福耳」が特徴的なお釈迦様
前述したように、お釈迦様の耳は長く垂れ下がるタイプの「福耳」です。実際に、お釈迦様の32の特徴を数えた「三十二相八十種好」(さんじゅうにそうはちじっしゅごう)には、お釈迦様の耳が福耳であると記されています。
「三十二相八十種好」のなかでお釈迦様の耳は「耳朶環」(じだかん)であるとされています。「耳朶環」とは幅広で長く、大きく垂れ下がった耳のことです。
このようにお釈迦様との共通点があることも「福耳」が縁起が良いとされる理由のひとつと考えられます。
「福耳」はポジティブなイメージをもつ言葉
「福耳」とは、厚くふくよかな形状の耳を表す言葉です。神様やお釈迦様の耳との共通点が多いことから、縁起が良い耳といわれています。
必ずしもお金持ちになれたり、運気がアップしたりするわけではないものの、「福耳」は総じてポジティブなイメージを持つ言葉です。言葉の意味や縁起が良いとされる理由などを考えながら、自分や周囲の人の耳たぶの形を確かめてみてはいかがでしょうか。
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