稟議や決裁が必要な場面
「稟議(りんぎ)」とは、関係者の承認を経て最終的な決裁を得るプロセスのことです。
稟議では起案者が作成した稟議書を関係者間に回し、それぞれが確認したうえで、問題なければ承認を行います。関係者が一斉に集まらなくても、組織全体の方向性を統一できる点が稟議のメリットです。
「根回し」で稟議の内容について関係者に伝えておけば、承認する側の負担を軽減できます。さらに、承認に向けた理解や協力が得られるなど、稟議を要する場面において「根回し」は欠かせない要素といえるでしょう。
多くの関係者が携わる場面
多くの関係者が携わる場面でも、「根回し」は求められます。決定権をもつ人が多いほど、多様な意見が生まれやすいためです。
あらかじめ各関係者に「根回し」をしておけば、それらの意見をまとめられる可能性が高まります。特に、多くの人の協力が必要な場面では「根回し」による情報提供と、理解を求める姿勢が大切です。
大きな金銭が動く場面
プロジェクトの進行にあたり、大きな費用や予算を要する場面でも「根回し」を行いましょう。事前にどの程度の金額が必要なのか共有しておくことで、スムーズな承認を得やすくなります。
また、「根回し」で得た懸念点や新たな提案を参考にすれば、予算の修正も行えます。結果的に、より現実的で無駄のない計画を実現できるでしょう。
「根回し」が上手な人の特徴は?
「根回し」は、ビジネスに必要なスキルのひとつといえます。また、その「根回し」が上手な人には、以下のような特徴があります。

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- 相手の立場で物事が考えられる
- 先を見通す力がある
- 人脈が広い
「根回し」は、自分の要求ばかりをアピールしているようでは上手くいきません。目的を達成するためには、相手の立場や心情を理解し、説得するスキルが求められます。
特に、上層部に対して「根回し」をする際は、相手の立場を損なわない配慮やビジネスマナーが大切です。
また、「根回し」では先を見通す力も求められます。適切なタイミングで必要と思われる情報を提供するほど、「根回し」が成功する可能性も高まるでしょう。
さらに「根回し」は、人脈が広いほど協力者が得やすくなります。人脈は簡単に広がるものではありませんが、ビジネスにおける重要な要素と心得ておいてください。
「根回し」の上手なやり方
「根回し」が上手な人の特徴をふまえ、ここからは具体的なやり方についてみていきましょう。
- 「根回し」する相手について分析する
- 事前に関係者と意思疎通を図る
- 協力者を得る
それぞれを上手に行うための方法も、一緒にご紹介します。
「根回し」する相手について分析する
「根回し」は、誰に対しても同じように行えばよいわけではありません。関係者それぞれに、価値観や立場は異なるためです。
「根回し」を行う際は、相手について分析し、それぞれに応じたアプローチを検討することが大切です。決定権をもつ人が重視する事案を理解したうえで、必要な材料を用意し「根回し」を行いましょう。
日頃から関係者とコミュニケーションを図る
「根回し」を上手に行うためには、各関係者と日頃から意思疎通を図ることが大切です。コミュニケーションを重ねるなかで、「根回し」に必要な信頼関係を築くことができます。
挨拶や何気ない会話の積み重ねも、信頼関係の構築につながる重要な要素です。雑談のなかで得た情報を「根回し」に活用することもできるでしょう。
協力者を得る
ビジネスを成功させるためには、協力者の存在は欠かせません。それは「根回し」でも同様です。
「根回し」の対象は、決定権をもつ人のみと思われがちです。実際には、自分の同僚や部下なども視野に入れる必要があります。「根回し」が成功した後、実際に業務にあたるのは自分の身の回りの人であることが大半であるためです。
多くの人に「根回し」を行い、協力者を得ておいたほうがプロジェクトが成功する可能性も高まります。ビジネスでは主要な関係者だけでなく、その他大勢からの信頼を得ることも忘れないようにしましょう。
「根回し」を行う際の注意点
「根回し」は、決してネガティブなものではありません。ただし、場合によっては「裏工作」のような悪いイメージをもたれる可能性があります。
根回しを行う際は以下の注意点を理解し、その効果をより引き出せるように意識してみてください。

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透明性を保つ
「根回し」を行う際は、周囲の誤解を招かないようにすべての関係者に対して同じ情報を提供しましょう。情報の偏りは、周囲からの信頼損失につながります。
「根回し」に悪いイメージをもたれないためにも、情報提供はオープンな場で行うよう心がけてください。
本来の業務をおろそかにしない
「根回し」ばかりに時間をとられていると、本来すべき業務がおろそかになり、ミスにつながるリスクが高まります。特に注意したいのは、過度な情報共有による内部情報の漏えいです。
「根回し」は適切なタイミングで、必要な情報を提供することで効果が高まります。「成功させたい」という気持ちが強いあまりに、過剰な「根回し」をしないよう気を付けてください。
私利私欲に走らない
私利私欲に走らず、あくまでも冷静に「根回し」を行うように心がけましょう。情報の透明性を保つほか、「根回し」の順番を意識することも大切です。
同僚や直属の上司に相談せず、いきなり上層部に「根回し」を行うと、周囲から疑念をもたれてしまうかもしれません。「根回し」はあくまでもビジネスマナーを大切に、相手の立場を損なわないような方法を検討してください。
上手な「根回し」でビジネスを成功につなげよう
「根回し」とは、交渉や会議などを円滑に進めるため、あらかじめ手を打つことです。多くの人が携わるプロジェクトなどでは、事前に情報提供をしておくことで、より円滑に業務が進められます。
一方で、「根回し」には「裏工作」のような類語があり、ネガティブなイメージをもたれることも少なくありません。ビジネスを成功させるためにも、「根回し」は関係者の立場や意志を尊重しながら、オープンな場で行うように心がけましょう。
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