「つまずく」と「つまづく」の違いとは?

「つまずく」と「つまづく」は、発音するとどちらも同じ音です。文字として書く場合には、いったいどちらが正しいのでしょう? どのような違いがあるのか、まずは基本的な概念を解説します。
正式な表現は「つまずく」
文化庁の告示『現代仮名遣い』によると、「躓く(つまずく・つまづく)」をひらがなで表現する場合、原則として「ず」を用いることになっています。つまり、正式な表現は「つまずく」です。
また、文部省(現:文部科学省)で公文書を書くときに参考とする『用字用語例』では、「つまずく」と書くことになっています。公用文を書くときには、「ず」を使うと覚えておきましょう。
基本的には、どのような場合でも「つまずく」と書くようにすれば間違いはありません。
「つまづく」の表記も使える
前述のとおり正式な表現は「つまずく」であるものの、「つまづく」も間違いではありません。
文化庁の現代仮名遣いの説明によると、二語に分解しにくい言葉はもともとの漢字の読みが「ち」「つ」であっても、発音が濁る場合には基本的に「じ」「ず」を使うことが本則です。
しかし、『「ぢ」「づ」を使うこともできるものとする』としています。「つまずく」の語源は「爪突く」とされているため、「突く(つく)」に濁点を付けた「づ」と表記することも可能なのです。
公用文でなければ、「づ」を使って表記することは問題ないでしょう。「つまづく」のほかに、「せかいじゅう(世界中)」や「いなづま(稲妻)」など、場合によっては「ぢ」「づ」が用いられる語もあります。
また、「つまずく」は「躓く」と漢字表記することもできますが、一般にはかな書きが推奨されています。
「つまずく」以外の「ず」や「づ」を使う表現

「ず」と「づ」の使い分けで悩むことは多いものです。「つまずく」以外にどのような言葉があるのか、主な使い分けについて解説します。
主な「ず」を使う表現
「ず」と「づ」の場合、現代仮名遣いでは特別なケースを除いて「ず」を使うことが基本です。
主な「ず」を使う言葉としては、「絆(きずな)」「みみずく」「涼む(すずむ)」「外れ(はずれ)」などが挙げられます。そのほか、「図工(ずこう)」「地面(じめん)」などはもともとの音読みが「ず」または「じ」であり、「づ」とする条件には当てはまらないためそのまま用います。
次に挙げるような例外でなければ、ほとんどの場合「ず」を使うと考えておくと悩むこともありません。
主な「づ」を使う表現
例外的に「づ」を使う言葉もあります。
たとえば、「続く(つづく)」「気付く(きづく)」「基づく(もとづく)」「小遣い(こづかい)」「手綱(たづな)」「三日月(みかづき)」「鼓(つづみ)」などが挙げられます。
主にもともとの読み方が「つ」となっているものや、「つ」の後に「づ」が続く同音の連呼が含まれる場合、二語が連なることによって「つ」が「づ」と変化した場合などは、「づ」を用いると考えておきましょう。
「つまずく」「つまづく」の基本的な意味と使用例

ここからは、言葉への理解をよりいっそう深めるため、「つまずく」「つまづく」の基本的な意味と使用例を紹介しましょう。
足をぶつけたときの使用例
辞書で見てみると、以下の2種類の意味があります。
つま‐ず・く〔‐づく〕【×躓く】
[動カ五(四)]《「爪つま突く」の意》
1 歩いていて、誤って足先を物に突き当ててよろける。けつまずく。「石に―・いて転倒する」
2 物事の中途で、思わぬ障害につき当たって失敗する。「緒戦で―・く」「事業に―・く」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
何かに足先をぶつけてよろけたとき、1つ目の意味のように「つまずく」と言います。例文を見てみましょう。
【例文】
・歩いていたら小石につまずいた
・何もないのに、道でつまずいてしまった
・つまずいて転倒した
つまずいたことによって体が大きくよろめいたり、倒れたりすることもあるでしょう。これらは日常でもよく使う表現です。
計画の失敗やトラブルがあったときの使用例
計画の失敗やトラブルがあったときにも「つまずく」と比喩的に表現することがあります。例文を見てみましょう。
【例文】
・明日の予習をするつもりだったが、思わぬところでつまずいた
・私の人生は順風満帆と思っていたのに、受験でつまずくとは思わなかった
・計画通りに行かず、予想外のつまずきがあった
この場合の「つまずく」は、歩行の乱れと同じように一時的なトラブルがあったことを意味します。
「つまずく」「つまづく」の類語・関連語

「つまずく」「つまづく」には、類語や意味の似通った言葉がいくつかあります。言い換えとして使える表現について確認しましょう。
足を取られる
「足を取られる」は、障害物や道の状態などによって歩行が乱れること、順調だった進行がさまたげられることなどを指します。主な例文は以下のとおりです。
【例文】
・泥に足を取られて動けない
・段差に足を取られてよろめいてしまった
・酔いが回って足を取られた
思うように足が動かせない状態を指すため、酒に酔ってふらついているときにも使われる表現です。
頓挫(とんざ)する
「頓挫する」は勢いが弱まったり、計画が中止になる・またはいったん取りやめになったりするようなケースで用いられます。主な例文を見てみましょう。
【例文】
・プロジェクトが先方の都合により頓挫した
・あのテーマパークの開発は、計画段階で頓挫してしまった
比喩的な意味で「つまずく」を使う場合には、頓挫すると言い換えることも可能です。
まとめ
「つまずく」「つまづく」の正式表現は「つまずく」である
「つまづく」も公用文でなければ使用可能
現代仮名遣いでは、表記の慣習による特例を除いて原則「ず」を使うこととなっている
「つまずく」と「つまづく」。どちらもよく見かける表現ですが、公文書などの正式な文書では「つまずく」が使用されています。「ず」と「づ」の表記の基本的なルールを覚えておけば、使い分けもしやすいはずです。「つまずく」と似た表現もいくつかあるため、使い分けに悩んだ場合は別の言葉に言い換えてもいいでしょう。
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Domani編集部
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