「概ね」はどれくらいの範囲なのか?

ビジネスシーンでよく耳にする「概ね」。意味はよく知らないけれど、便利なので何となく使っているという人も多いのではないでしょうか。しかしこの言葉、意外に使用注意な面があるのです。
まずはどのくらいの範囲を表す言葉なのか、トラブルにならないための注意点と一緒にチェックしましょう。
「概ね」の意味と指し示す範囲
概ね(おおむね)は、「ほとんど」「大体」という意味です。要点・趣旨を表す漢字「旨」を使って「大旨」とも書きます。
「概ね」が使われるのは、「完全に一致しなくても許容できる範囲である」「ほぼ完成状態である」と示すときです。
一般的に「概ね」が指すのは8~9割程度だとみなされることがありますが、正確な範囲は定まっていません。このことが原因で話し手と聞き手の認識にずれが起こる可能性もあり、トラブルにならないよう注意が必要な言葉だといえるでしょう。
おお‐むね〔おほ‐〕【大旨/▽概ね】
1[名]だいたいの趣旨。あらまし。「―は了承した」
2[副](概ね)その状態が大部分を占めるさま。だいたい。おおよそ。「会員は―女性だ」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
トラブルにならないための注意点
「概ね」は「だいたい」「ほとんど」と同じく、あいまいさを含んだ表現です。そのため、使っても大丈夫なのは多少の誤差が許されるシチュエーションのみ。重要な決定を行う場面や具体性を求められる場面では、避けた方がよいといえます。
たとえば、うまくいっていない状況を和らげて伝えるために「概ね」を使う人もいますよね。しかしそれでは問題点が伝わらず、聞き手は「ほとんどうまくいっている」と誤解してしまうでしょう。
また、「概ね」を使うことで詳細が省かれてしまうという問題もあります。「契約事項は概ね合意できました」と報告されたにもかかわらず、後から重要なポイントで合意できていなかったと判明するかもしれません。
トラブルの発生を防ぐためにも、重要な報告には具体的な数字を求め、きっちりと事実確認しておく必要があります。
ビジネスで「概ね」をよく使う場面

次に、ビジネスで「概ね」をよく使うシチュエーションを説明します。「おおよその方向性が定まった場面」「結果が出る前に見通しを示す場面」について、それぞれ見ていきましょう。
おおよその方向性が定まった場面
「概ね」は、ビジネスにおいて進捗状況や合意状況を報告するときに使用します。たとえば「おおよその方向性は定まっている」といったニュアンスです。
【例文】
・今回の契約内容について、先方とは概ね合意に至りました
・企画の方向性は概ね決まりましたので、次は具体的な作業に入ります
・お客様からのフィードバックは、概ね好意的な内容でした
「多少のずれがあっても許容範囲内で、重要な部分ではうまくいっている」ことを示したいときに便利な表現といえるでしょう。
結果が出る前に見通しを示す場面
データなどの評価・報告の際に、「概ね」でおおまかな予想を伝えることもあります。例文は以下の通りです。
【例文】
・今回のプロジェクトの進捗は、概ね計画通りに進んでいます
・トラブルの原因は概ね特定できましたので、早急に対応いたします
・新製品の販売目標は、概ね達成できる見通しです
「期日までに概ね完了予定です」といえば、スケジュールが問題なく進んでいることを表します。主観的な要素を避けるため、必要なら具体的な内容を確認しましょう。
「概ね」のビジネス的な言い換え表現

「概ね」のビジネス的な言い換え表現を知っていると、いざというときに困りません。類語の意味や、「概ね」との違いを正しく理解しておきましょう。
おおよそ
「おおよそ」とは「だいたい」「おおざっぱに」と同じ意味の言葉で、漢字では「大凡」と書きます。細かいところは省いた大まかな構成や、流れなどを指すときに適した表現です。
【例文】
・今回のプロジェクトにかかる期間は、おおよそ3カ月です
・ご提出いただいた企画書の費用は、おおよそ500万円となります
・この市場のシェアは、当社の製品がおおよそ3割を占めています
「おおよそ」は「概ね」に比べると少し柔らかい印象で、会話でも使いやすいでしょう。
おおまかに
「おおまか」を使っても、「概ね」と同じような意味になります。「物事を全体的に、おおざっぱに済ませる様子」を表す形容動詞です。
【例文】
・今回のプレゼンの内容は、おおまかに言うと「市場の動向と新製品の戦略について」です
・このプロジェクトの費用は、おおまかに見積もって100万円程度になります
・スケジュールがおおまかに固まりましたので、後ほど詳細をお送りします
「おおまかに」は、「概ね」と同じようにビジネスシーンで使えます。「概ね」のバリエーションとして活用しましょう。
だいたい・大体
「だいたい・大体」は、「ほとんど全部」「あらかた」を意味する言葉です。漢字の「大体」はビジネス文書でも使われますが、基本的には話し言葉のようなカジュアルな表現とみなされます。改まった場では使うのを避けた方がよいでしょう。
【例文】
・今日の会議は、だいたい30分ほどで終わる予定です
・プロジェクトの全体像は、だいたいつかめました
・今回のトラブルの原因は、大体判明しております
・当社の顧客は、大体30代から50代の層が中心です
「概ね」が8~9割程度を指すとされるのに対し、「だいたい・大体」は主要な部分を捉える意味合いが強いという違いがあります。「概ね」よりはカバーする範囲が小さい言葉です。
ほぼ・ほとんど
「ほぼ」は「概ね」よりも100%に近く「完全ではないが、それに近い状態」を表します。「ほとんど」も「全体のうち、わずかな部分が欠けている様子」という意味ですが、よりカジュアルな表現です。
【例文】
・新商品の販売準備は、ほぼ整いました
・今回のトラブルは、ほぼ解決したと見て問題ありません
・この会議の参加者は、ほとんどが営業部のメンバーです
・プレゼン資料は、ほとんど手直しが必要ありませんでした
「概ね」の類語にも多少のニュアンスの違いがあります。それぞれの言葉がカバーする範囲を押さえておきましょう。
まとめ
-
「概ね」は「ほとんど」「完全に一致しなくても許容できる状態」をいう
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約8~9割だと見なされやすいが、正確にはどこまでの範囲を指すか決まっていない言葉
- 重要な決定をする場面や具体性が求められる場面では、使用を避けたほうがよい
「概ね」は、進捗状況や合意状況について報告するビジネス文書などでよく使われます。細かな問題や違いを省いて、大筋ではうまくいっていることを簡潔に示せる言葉です。ただし、正確さが求められる場面では、行き違いを防止するためにも使わないことをおすすめします。
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Domani編集部
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