「酔生夢死」の意味とは？由来や使い方、関連語・反対語も解説

「酔生夢死」とは

酔生夢死という四字熟語は、生き方や日々の過ごし方に関連する言葉です。字面からはどのようなニュアンスが込められているのか、わかりにくいように感じるかもしれません。まずは言葉の意味と由来を解説します。

酒に酔ったように無為な生涯を終えることを指す

酔生夢死という言葉は、中国の宋代に活躍した兄弟の儒学者、程顥（ていこう）・程頤（ていい）の思想に由来するものです。彼らの言葉は「程子語録」にまとめられています。

すいせい‐むし【酔生夢死】
《「程子語録」から》酒に酔ったような、また夢を見ているような心地で、なすところもなくぼんやりと一生を終わること。
小学館『デジタル大辞泉』より引用

ぼんやりとして何もなさずに生涯を終えることを指し、基本的には否定的なニュアンスが強い言葉です。儒教的な価値観を背景としており、一時的に欲を満たしてその場を楽しんでも、後には何も残らないという戒めの意味も込められています。

「酔生夢死」の使い方と例文

酔生夢死は、どのような場面で使えるのでしょうか？ 誰かの生涯について触れる場合と自分の生きざまについて触れる場合に分け、主な使い方と例文を紹介します。

誰かの生涯について触れる場合

誰かの様子や生き方を見て、ぼんやりと何も成し遂げず一生を終えると感じた場合に「酔生夢死」という言葉を使います。ただし、基本的には悪い意味として捉えられるため、誰かに対して発言する場合にはタイミングや言い方を考えたほうがよいでしょう。

【例文】
・最近の彼はあまりにも無気力で、このままでは酔生夢死のような生涯を送ってしまうのではと心配になった
・あの人の人生を一言で表すとすれば、酔生夢死なのかもしれない

相手への忠告や生き方への非難などが含まれる背景があるため、本人に対して直接伝えることは少ない言葉です。

自分の生きざまについて触れる場合

自分の生きざまに対して、「意味のない人生を送っている」と感じたときにも酔生夢死という言葉が使えます。主な例文を見てみましょう。

【例文】
・毎日あまりにも退屈で、酔生夢死の生涯を送るのでは？ と感じるようになってきた
・仕事で疲れ果てしまった結果、酔生夢死という生き方でもよいのではないかと思えてくる

自分の生き方について触れるときは、自嘲や反省のニュアンスが含まれることもあります。ふだんの生活にやりがいがないときや、ぼんやりとした様子を表現するときに使えるでしょう。

「酔生夢死」の関連語・類語

酔生夢死には、関連語や類語があります。状況によっては、言い換えを検討したほうが伝わりやすいこともあるでしょう。主な関連語と類語を紹介します。

ただ遊び暮らすことを意味する「無為徒食」

無為徒食（むいとしょく）は、何もせずに過ごすという意味を持つ「無為」と、働かずに食べて暮らすという意味を持つ「徒食」が組み合わさった言葉です。つまり、仕事をせずぶらぶらと暮らしている状況を表します。

【例文】
・当面食べていくお金はあるので、仕事を辞めて無為徒食の生活を送っている
・無為徒食はあまり望ましい状態ではないとわかっているが、現状抜け出せそうにない

酔生夢死が働いている場合でも使えるのに対し、無為徒食はあくまでも仕事をせずに遊び暮らしているときに使う表現です。生活費の出所がどこであっても使えますが、悪いイメージも含まれています。

遊興にふける「流連荒亡」

流連荒亡（りゅうれんこうぼう）は、古代中国の思想家・孟子に由来する表現で、遊興や酒などにおぼれだらしなく遊び暮らすことを指します。「流連」はあちこちで遊びにふける様子、「荒亡」は酒などにおぼれて荒れた生活を送る様子を意味する言葉です。

【例文】
・彼は昔ずいぶんと流連荒亡していたようだが、今は落ち着いている
・あの人は流連荒亡の果てに、仕事を失ってしまったと聞いた

酔生夢死よりも遊興にふけるという意味合いが強いため、ぼんやりとした様ではありません。しかし、遊ぶばかりで大切なことをせずにいれば、何もなさずに生涯を終えてしまうことにつながるでしょう。

「酔生夢死」と反対の意味を持つ言葉

酔生夢死には、反対の意味を持つ言葉もあります。ぼんやりとして何も成し遂げず、夢のように生涯が終わってしまう状況とは真逆の〝真面目さや変化〟を表す言葉を紹介しましょう。

一生懸命働くことを指す「薪水の労」

薪水の労（しんすいのろう）は「人に仕え、身の回りの仕事を一生懸命行うこと」を意味します。ぼんやりと夢のように生涯を終える酔生夢死とは異なり、日々を精一杯生きていることがわかる言葉です。

【例文】
・この地域では夏と冬の気候が厳しく、薪水の労が身にこたえる
・薪水の労をねぎらうために準備をしているところだ

薪水とは火を起こすための薪と生活用の水のことで、これを汲みに行き炊事をする労働から、日常の家事や労働全般を指すようになりました。

変化に富んだ「波瀾万丈」

波瀾万丈は、物事に激しい変化があることを表す四字熟語です。酒に酔ったようにぼんやりとしている酔生夢死とは真逆で、常に大きな変化があって落ち着くことがありません。

【例文】
・祖父の生い立ちを聞いて、波瀾万丈とはこのことだと思った
・あの人は芸術家として素晴らしい才能を持っていたが、波瀾万丈な人生を送ったことでも知られている

この「変化」には良いことも悪いことも含まれるため、常にすばらしい出来事ばかりが起きるわけではないのがポイントです。困難も待ち受けていることから、激しくドラマチックな人生を表します。

まとめ

酔生夢死は、何事も成し遂げず、ぼんやりと生涯を終える様子を表す言葉です。通常は、そのような人生を送らないように戒める目的で使われます。なかなか強い言い回しの上に関連語も多いため、その場に応じた適切な言い換えを検討するのもよいでしょう。また、誰かの生涯について語るときだけではなく、自分の生きざまを表現するときにも使えます。

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