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「画竜点睛」の意味や読み方とは?
大学の入試問題にも出題されることが多くある「画竜点睛」。読み間違いやすい熟語でもあります。まずは、読み方や意味をチェックしていきましょう。
■読み方や意味
「画竜点睛」は「がりょうてんせい」と読みます。「がりゅうてんせい」と読むのは誤り。また、字は「晴」ではなく「睛」と書きます。読み方や漢字は間違いやすいポイントなので注意してください。意味は以下の通りです。
最後の大事な仕上げ。また、ほんの少し手を加えることで全体が引き立つこと。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
「画竜」は「竜の絵」のことをいいます。そして「点睛」は「瞳を描くこと」。「点睛」の「睛」は、「瞳」という意味を持ちます。つまり「画竜点睛」とは、「竜の絵に瞳を描き入れること」を表し、瞳を描き入れることは絵に表情を与え、魂を吹き込むようなもの。そのことから「最後の大仕上げ」や、「少しの手を加えることで、仕上がりがいちだんと良くなること」を表す熟語として使われています。
■「画竜点睛」の由来とは?
「画竜点睛」は中国の古事成語。『歴代名画記』に記されたものから由来します。そこには「点睛即飛去」と記されており、「睛を点せば即ち飛び去らん」、すなわち「瞳を描けばすぐに飛び去ってしまう」という意味の文です。
それは中国南北朝時代。梁(りょう)に、張という画家がいました。絵の名人として名高かった張は、ある寺の壁に竜を描くことに。そこに張は4つの竜を描きます。よく描かれた竜でしたが、よく見ると瞳が描かれていません。
そこで、「なぜ瞳がないのか?」と人々が張に聞くと、「瞳を描くと、竜が飛び去ってしまうから」と答えます。しかし、人々はそれを信じず、張に「瞳を描いてほしい」と懇願します。張はそれを聞き入れ、2つの竜に瞳を描き入れました。
そうすると、たちまち瞳が描かれた竜は、壁から飛び去ってしまったのです。寺の壁に残されたのは、瞳が描かれなかった竜のみ。そんな物語から、物事の大切な仕上げを、瞳を描き入れることに喩えた、「画竜点睛」という言葉が生まれました。
「画竜点睛」の使い方を例文でチェック
「画竜点睛」は、実際にはどのように使うのか例文をみていきましょう。
1:「せっかく良い作品なのに、見せ方が悪い。まさに画竜点睛を欠くとはこのことだ」
「画竜点睛」の使い方で最も多いのが、「画竜点睛を欠く」という表現です。「欠く」は「不足する」や「怠る」という意味。よって「画竜点睛を欠く」とは、「最後の仕上げができていない」というネガティブな意味になり、「詰めが甘い」などというニュアンスで使われます。このフレーズは、見せ方が悪いせいで、せっかくの良い作品が台無しになったことを表しています。
2:「ケアレスミスを防ぐために点睛を意識することが大事だ」
「画竜点睛」の「点睛」だけでも使うことができます。意味は、「画竜点睛」と同じ。最後に仕上げる重要なポイントをいいます。
3:「彼女が優秀なのは画竜点睛を怠らないからだ」
最後まで気を抜かず、物事を成し遂げる人は優秀な人といえるでしょう。
「画竜点睛」の類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
「画竜点睛」の意味や使い方がわかったところで、次は類語や言い換え表現についてみていきましょう。
1:点睛開眼(てんせいかいがん)
「点睛開眼」と「画竜点睛」の意味と由来は、同じ。中国の故事『歴代名画記』より由来し、「最後の重要な仕上げ」という意味です。
2:肝(きも)
「肝」とは肝臓や腎臓、心臓を表しています。臓器は人体にとって欠くことのない重要なもの。そのことから、特に重要で、物事の要となることを「肝」と表現します。また、「肝心」や「肝要」も同じ意味合いで用いられます。
3:入眼(じゅがん)
物事を完成させること。成し遂げることをいいます。
「画竜点睛を欠く」の類語は?
「画竜点睛を欠く」の類語は「仏作って魂入れず」と「九仞の功を一簣に虧く」が挙げられます。
・「仏作って魂入れず」
物事がほぼ完成しているのにもかかわらず、最後の重要な仕上げが抜けていることを表すことわざ。「仏像を作っても肝心な魂を入れないことには、その辺の木や石と同じこと」ということから由来します。
仏像に魂を入れる作業とは、眼を描き入れること。それを「開眼」といいます。「仏作って眼(まなこ)入れず」も同じ意味で用いられます。
・「九仞の功を一簣に虧く」
「九仞(きゅうじん)の功(こう)を一簣(いっき)に虧(か)く」とは、「長い間、努力し続けてきたことが、あともう一歩のところで水の泡となること」。
「仞(きゅう)」は、古代中国で使われていた高さや深さの単位。「九仞」は、非常に高いことを表しています。「簣」は土を運ぶカゴのこと。「虧く」とは、「欠く」という意味です。つまり「高い山を作るのには、最後のかご一杯の土なしでは完成しない」ということから由来します。
「画竜点睛」の対義語とは?
「画竜点睛」の対義語は、「蛇足(だそく)」です。「蛇足」とは、「重要ではないもの」「無くてもよいもの」という意味です。由来は中国の故事。
その昔、蛇の絵を描く競争が行われ、ある男が一番先に描き終えました。しかし調子にのったその男は、完成していた自分の蛇の絵に足を付け足してしまいます。それがもとで敗れてしまう、という物語が由来です。
また、「蛇足ですが…」と補足で何かを説明することがありますよね。これは他人に対してへりくだった言い回し。「必要ないかもしれませんが…」や「余計なことを言いますが…」というニュアンスで使われます。
「画竜点睛」の英語表現とは?
「画竜点睛」は英語で表現するならば、「finishing touch 」。「最後の一筆」や「最後の仕上げ」という意味です。一方で、「画竜点睛を欠く」は「lack the finishing touches 」。「lack」は「不足している」や「欠いている」という意味があります。
最後に
「画竜点睛」は、読み書きともに間違いやすい熟語です。言葉の意味や由来を理解していても、読み方や書き方を誤ってしまうと、それこそ「画竜点睛を欠く」ではないでしょうか。今一度、正しい表現を確認しておきたいものですね。
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