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LIFESTYLE子育て

2019.06.17

ある国民的番組に出演した8歳の男の子の話。【しまおまほのおしえてコドモNOW!】

エッセイシストのしまおまほさんが、今を生きるバラエティに富んだ子どもたちに出会い、話を聞き、限られた時間で彼らの本音を引っ張り出す新連載。第3回がはじまります!

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第3回:ひなたくん(8歳)

「男前パーマ」と書かれた大きな看板がひなたくんのおじいちゃんとおばあちゃんの家の目印です。お父さんが単身赴任中のひなたくん一家は毎日のようにお母さんの実家であるこの家で過ごします。なぜ家に大きな看板がかかっているのか。それは、ひなたくんのおじいちゃんとおばあちゃんが自宅の1階で床屋さんを営んでいるから。「男前パーマ」というのがどういうパーマなのか、それはわかりませんが……

お宅へお邪魔するとお母さんが出迎えてくれました。

まほ:おじゃまします~。あれ、ひなたくんいませんね。

母:すみません、人見知りをするので……。

ひなたくんは居間の襖を挟んだ隣にある子ども部屋で弟のこうきくん(5歳)と妹のひまりちゃん(1歳)と遊んでいました。テレビを観ながらフラフープをしたり、バランスボールでボンボン跳ねたり、こちらを意識しつつもなかなか居間に入ってこようとしません。襖は開いているのですが、部屋の境界線を越えようとはしません。

合唱してくれない、体育でペアになってもこちらを向いてくれない、机をくっつけてくれない、誘ってもすぐ返事しない……。

そうそう、小学生の時、男子ってこんな風だった。

一方、次男のこうきくんはお客さんが来てテンションが上がったのか、走ってお兄ちゃんにダイブ。肘を床で擦ってさっそく負傷。泣きながらお母さんに絆創膏を貼ってもらっています。ヨチヨチ歩きのひまりちゃんはお煎餅を手に持ってあっちをウロウロ、こっちをウロウロ。マイペースです。

母:ひなた! そろそろこっちいらっしゃい! お姉さんたちはひなたの話を聞きに来てるんだよ!

ひなた:……。

ある国民的番組に出演!?

なかなか話すタイミングを見つけられないひなたくん。わたしは、事前の連絡の中で強烈なエピソードがあったことを思い出し、ひなたくんに聞いてみることにしました。

まほ:ひなたくん、仮装大賞の写真見せて!

なんと、ひなたくんの家族は「欽ちゃんの仮装大賞」に2年連続出場を果たしているのです! ひなたくん、やはりその話題には答えずにはいられないようで、襖の境界線ギリギリに立って話し始めました。

まほ:ひなたくん、いつ仮装大賞に出たの?

ひなた:……年長の時。

まほ:ビデオ撮ってないの?

ひなた:あるよ。

後で気づいたのですが、もう「ビデオ」っていう言い方は古いですよね~。じゃあ今の子ってなんて言うんだろう? データ?

でも「ビデオ」でも通じている。子どもが大人の感覚にあわせてくれているんでしょうか。仮装大賞の「ビデオ」。ひなたくん、いつのまにか境界線を越えて居間のソファーに座っています。

まほ:どんなテーマの演(だ)し物(もの)だったんですか?

母:3年前が「花火」、2年前が「続・浦島太郎」です。

まほ:「続・浦島太郎」……仮装大賞っぽい~! 去年は出なかったんですか?

母:審査で通らなかったんです。

まほ:今年は応募するんですか?

母:考えてます(笑)。

仮装大賞の出場は、芸術系大学出身のお母さんが言い出しっぺだったとか。1年目の演目「花火」で幼稚園の仲間たちと出場した際、満点を取ったはいいものの、ひなたくんはインタビューをしてもらえず悔しい思いをしたそうです。2年物出場はそのリベンジです。

お母さんがハードディスクのデータから、「仮装大賞」の文字を検索します。

まほ:「動物戦隊ジュウオウジャー」「モンキーパーマ」「あまちゃん」……人のうちのハードディスクはもしろいなあ。

ひなた:あった!

まほ:おっ、ちゃんと出場した場面から見られるようになってる。あれ? 会場がなんか違わない?

母:今は後楽園ホールじゃないんですよ。

まほ:え~、なんか雰囲気違いますね……。えー!? 審査員が仮装してない!

母:今はしないんですよ。

まほ:うっそ~! してよ~!

「花火」は団体芸で、たしかに個人が目立つのは難しい。ワーッと始まってワーッと終わってしまいました。続いて翌年の「続・浦島太郎」。ひなたくんの家族とお友達の家族のチームで臨みました。物語は玉手箱を開けたらおじいさんになってしまった浦島太郎(ひなたくん)が、竜宮城の乙姫さまに玉手箱を貰い直すところから始まります。玉手箱を開けると煙が出て……女の子に変身。その女の子が「あら? もうひとつ玉手箱があるわ! 」ともうひとつの玉手箱の蓋を開けると今度は3歳だったこうきくんが赤ちゃんの扮装で出てきて「こんなに若くなっちゃった! 」と、決め台詞でオチ。会場大ウケ。こちらも見事満点でした。

まほ:すごい、よくできてるねえ。(香取)慎吾ちゃんにも褒められてたねえ。

ひなた:うん。

まほ:嬉しかったんじゃない? SMAPのファンにもなったでしょ。

ひなた:いや、別に……。

まほ:そう? 会うと好きになったりしない?

ひなた:うーん……。

母:スマスマの最終回、観てたじゃない。

まほ:あ、あの録画ばっかりのヤツ? 長かったよね。

ひなた:うーん……。

母:最終回観て、「ありがとう」歌ってたじゃない。

ひなた:……。

まほ:それは、好きだね(笑)。それにしても、最初から台詞が多い役をがんばってたね。

ひなた:うん、大変だった。

まほ:こうきくんもすごいね。オチの台詞が重要な台本だもんね。3歳でよく言えたよ。

ああ、長男はつらいよ。

そう、オイシイ役割はいつも弟。ひなたくんはお兄ちゃんになってからガマンすることが多くなっています。

まほ:こうきくんのこと、どう思う?

ひなた:わがまま大魔王。

まほ:大魔王なんだ(笑)

ひなた:毎日泣くし。

まほ:さっきも泣いてたもんね。

ひなた:こうきが勝手にオレの足のひっかかって泣いても、オレが怒られる。

まほ:長男の苦悩だ……。

ひなたくん、話の合間に未妹ひまりちゃんの落としたお煎餅を拾ってあげたり、ソファーにかかっているキルティングのカバーの位置を直したり、いろんなところに目を配っています。おばあちゃんがやって来て、ひなたくんを褒めました。ひなたくんはおばあちゃんを「ばぁ」、おじいちゃんを「じぃ」と呼んでいます。

おばあちゃん:本当に優しくて、気がつくんですよ。

まほ:年よりも、ずっとお兄さんにみえますもんね。

おばあちゃん:でもね、ひなた。

ひなた:ん?

おばあちゃん:いつもばぁに抱っこしてもらってるのよ。

ひなた:おえー。

おばあちゃん:いつも言ってるじゃない。「抱っこで元気になる」って。

ひなた:無理矢理だろ!

自由な1日があったら、何して過ごす?

照れて突き放すひなたくんですが、おばあちゃんが来ると顔が緩みました。おばあちゃんのこと、大好きみたい。お父さんが単身赴任中ということもあって、弟妹の面倒をよく見ているひなたくん。もし、自由な時間があったらどうするんだろうと思い、聞いてみました。

まほ:もし、お金も時間も自由にできる1日があったらどうする?

ひなた:え?

まほ:いっくらお金使ってもいいの。おもちゃ買ってもいいし、好きなものを食べてもいい。

ひなた:うーん……。

まほ:好きなこと、なーんでもしていいんだよ。

ひなた:ばぁのウチに来る。

まほ:えっ?

ひなた:ばぁのウチで遊ぶ。

まほ:ばぁのウチって、ここ?

ひなた:そう。

まほ:今日と同じじゃん!

ひなた:そう。

まほ:お金、いくらでも使っていいんだよ!?

ひなた:うん。

ひなた:本屋行って好きな本たくさん買うとか……。

ひなた:オレ、『コロコロ』しか読まないし。

まほ:トイザらスで好きなだけおもちゃ買うとか……。

ひなた:トイザらス遠いし。

まほ:ばぁの家、好きなんだね。

ひなた:うん。お風呂のお湯、熱いけど。

まほ:(笑)。じゃあ、食事は? 三食、なんっでも好きなもの食べていいの。

ひなた:えーっと……。

まほ:朝は?

ひなた:カレーパン。

まほ:いいね。飲み物は?

ひなた:お水。

まほ:いくらでも好きなの飲めるのに~(泣)。昼はどうしよ?

ひなた:マック。チーズバーガーピクルス抜き。

まほ:抜きか。子どもはそうだわな。

ひなた:ポテトも。

まほ:つけるよね。そりゃ。飲み物は?

ひなた:クゥ~(高い声で)。

まほ:ははは! 何その言い方。

大人しくて冷めた印象のひなたくんですが、何故かジュースの「Qoo」の言い方だけ、CMのかわいい声を真似してました。

まほ:さあ! 夜は? 夜は豪華なもの食べよう!

ひなた:たこパする。

まほ:たこぱ?

ひなた:たこ焼きパーティー。

まほ:あ~、それは楽しそう。

ひなた:大阪でやったことある。

お父さんの赴任先・大阪でたこ焼きパーティーをして楽しかった思い出があるようで、夢の1日の締めくくりは「たこ焼きパーティー」でした。横で遊んでいたこうきくんも思わず「たこパ!」と叫びました。

まほ:こうきくんも好きなもの食べられるとしたら、何食べる?

こうき:みかん、ごはん、ポテト!

つづく

「しまおまほの教えてコドモNOW!」連載一覧はこちら

文・絵:しまおまほ 編集:小川知子  デザイン:根本真路

エッセイスト、イラストレーター

しまおまほ

1978 年生まれ。主な著書に『ガールフレンド』『マイ・リトル・世田谷』(共にスペースシャワーブックス)などがある。

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