【目次】
ママがハッピーであることがすべての基本
「私も元々は赤ちゃんのねんねに悩むママの一人だったんです」と愛波さん。「長男がとにかく寝ない子で。私は妊婦のときから出産するまで、赤ちゃんは置いたら寝るものと思っていたんです。ところが現実は全然違いました。添い寝しても寝ない長男を抱っこして、ひたすらバランスボールで寝かしつけ。三時間寝かしつけに時間がかかり、置いた途端にぎゃって泣き出すこともしばしば。本当に苦労し、育児ノイローゼ気味になりました。当時はサンフランシスコに住んでいたので、周りに友達もいなくて、このままでは私がおかしくなる、このままではダメだなと思いました。そこで、同じような環境にあるママ友を作ろうと思い、facebookのコミュニティで同じ月齢の子どもを持つ現地のママ達と会うことにしたんです」
プレイデートの当日。お互いに眠れないよねという会話で盛り上がると思っていた愛波さん。ところが周りのママ達からは、「昨日はジムに行った」とか「友達とご飯を食べにいった」とか「旦那さんと映画を見た」と言った話ばかり…。「『え?』という感じでした。そのとき,『文は?』と聞かれ、この子をずっと寝かしつけていて、ぼろぼろで疲れているといったところ、What are you doing?(何やってるの?)と言われてしまったんです。『ママがハッピーじゃないと子供もハッピーじゃないわよ』と。そのときにもらった一冊の本が、小児科医が書いた科学的根拠に基づいたねんね本。それを読んで、このままじゃいけない! 子どもの睡眠について勉強しようと思いました」アメリカには赤ちゃんの睡眠に関する本がたくさん出版されているそう。そこで愛波さんは多くの専門書を読み、医学論文を調べ、勉強を始めたと言います。
「そして、10ヶ月の時に息子にセルフねんねを教えて実施。すると、今まで全然寝なかった息子が4日で夜通し寝るようになったんです。そのときに初めて我が子を心から可愛いと思えました」その日を境に育児がとても楽しくなったという愛波さん。そこから、息子さんが毎日7時には一人で寝てくれるので、夜に時間ができたこともあり、もっともっと赤ちゃんの睡眠のメカニズムについて勉強しようと思ったことが、今の資格を取得に繋がったそう。
こうしてねんねコンサルタントとして活躍し始めた愛波さんの基には、子どもの睡眠に様々な悩みを抱えた女性が訪れるようになったという。「寝かしつけ、夜泣き、早朝起き…悩みは様々ですが、まずは睡眠の土台を整えること」と愛波さん。
睡眠の土台をきちんと作ることが一番大切
睡眠の土台というのは(1)睡眠環境、(2)ねんねルーティン、(3)幸福度、の3つだといいます。「まずは睡眠環境を整えることが大事。室温は肌着+ロンパース+スリーパー(スワドル)を着て20〜22度、湿度は40〜60%くらい、寝室は肌寒いくらいがいいんです。日本のお母さんは着せすぎです。それから音に敏感な子はホワイトノイズをかけたり、光に敏感な子は遮光カーテンを付けたりします。
それから、きちんとしたねんねルーティンがあること。これはお風呂→歯磨き→本を読む→ハグ→電気を消す、などシンプルで毎日続けられるものでOK。ルーティンがあることで、身体が自然と眠りに向かいます。それから、お母さんと赤ちゃんの幸福度。これはお母さん自身もハッピーでなくては、それは子どもに伝わりますし、赤ちゃんの幸福度というのはお母さんに愛され、満たされているという充足感。起きている時間に、お母さんと遊んだり触れ合うことで赤ちゃんは満たされ、良質な眠りに繋がります。睡眠の土台を整えるだけで、子どもが寝てくれるようになったという方が少なくないんですよ」
復職したワーママと赤ちゃんに起こりがちなねんねトラブル
仕事に復帰したママからの相談も多いそう。「今まで一人寝ができていたのに、復職したら一人で寝られなくなってしまったという悩みが多いですね。また、一歳くらいで復職すると、保育園での昼寝のタイミングが一回になってしまい、寝足りなくて、夕方迎えに行くと疲れでぐずぐず。お迎えから就寝までが機嫌が悪くて大変、という話も。それからご飯中に寝てしまって、起こしておくのが大変なんですというお母さんも」なんだか、どれも心当たりがある話ばかり…。
「夕方のぐずり対策としては、お迎え時に抱っこ紐やベビーカーで30分〜45分寝かせてしまう。そうすることで、お風呂もスムーズ、ご飯もスムーズ、寝かしつけも逆にスムーズになります」夕方寝かせると夜寝てくれないと心配して、頑張って起こしっぱなしにしてしまう人が多いそう。その気持ち、よく分かります! でも、子供は眠すぎのまま起きていると寝ぐずりや夜泣きにも繋がるそう。
「気をつけてほしいのは、30〜45分くらいで起こすこと。ついつい静かだから…などと1時間も2時間も寝かせてしまうとこれは夜寝られなくなるので気をつけて。赤ちゃんが寝ている間に、ご飯の準備、お風呂の準備、寝る準備までしましょう。そして起こすときには、好きな音楽で起こしたり、お気に入りの人形やぬいぐるみを持って起こしたり、と気を紛らせて起こすとぐずらずに済みますよ」
子どもとの時間が減ったことが夜泣きの原因!? と自分を責めないで
復職した途端、夜泣きが増えた…という悩みも少なくないそう。夜一人で寝なくなった、という悩みにも通じるそうですが、育休中は子供とたっぷり時間を過ごしていたのに、復職したことで、子供が寂しい思いをしているのではないかと心配になるお母さんもいるそうです。けれど、そんな悩めるお母さん達に愛波さんは「赤ちゃんとのふれあいは量ではないし、長くやればいいというものでもありません」ときっぱり。
「家に戻ってから、1対1の時間が取れるのであれば、きちんと向き合ってあげてください。ご飯を食べながら、とかテレビを見ながら、ではなく、子供がやりたいことを集中して一緒にやってあげる。例えば、1歳前後で積み木が好きだったら、一緒に積み木遊びをしてあげる。理想はそんな時間が20分くらいあるといいのですが、どうしても忙しくて時間がないという人は寝る前の3分でもいいから、大好きだよと伝えてあげたり、肌と肌のふれあいを大切にして、ハグやタッチをしてあげて。それでも十分安心につながります。
世の中の働くママは「私が働いているから」って罪悪感を感じてしまうんです。でも、そうではなく、カッコいい、働くママの姿を見せてあげることもとても大事。一日中一緒にいたとしても、20分向き合って遊ぶって意外になかったりしませんか? ワーキングママの方がその部分、メリハリがあって上手ですよ」その他、お風呂に一緒に入って、ゆっくりお話したり、お風呂上がりにベビーマッサージをしたり、寝る前にお気に入りの本を一緒に読む、などでも良いそう。忙しい毎日、そのくらいならば、無理なく続けられそう、というワーママも多いのでは??
「私のところに相談にいらっしゃる方の中には、お子さんのねんねトラブルがひどすぎて、自分もほとんど眠れず、いっそ自分が仕事を辞めてしまおうかというところまで悩んでいる方もいます。そんな時、私は『絶対辞めないで下さい、睡眠は絶対に改善しますから』とお伝えします」
日中仕事をしていて、夕方お迎えに行ったら、子どもの機嫌が悪く、夜は夜泣き…なんて、お母さんはたまったもんじゃありません。無理、と思ってしまう気持ち、分かります。「特に、今年はコロナ禍で精神的にも、生活リズムが今までと変わったことで物理的にも変化が生まれ、鬱状態に陥る方が増えています。赤ちゃんのねんねを改善することは、実はお父さんお母さんの睡眠を整えることにも繋がるので、ひいては心の安定へも繋がります」赤ちゃんの睡眠を整えることで、家族皆がハッピーに過ごせる、そんな毎日を目指したいですね!
睡眠の土台などに関して、詳しく書かれた愛波さんの著書「ママと赤ちゃんのぐっすり本 「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド」。愛波さんが監修した「ママにいいこと大全」。
本文中写真:(C)Ryoko Konami
乳幼児睡眠コンサルタント
愛波 文
日本人初乳幼児睡眠コンサルタント。米国IPHI(International Parenting & Health Institute)公認資格を日本人で初めて取得。二人の男の子の子育てをしながら、企業やイベント講演、子どもの睡眠に悩む保育者向けに睡眠・子育て・教育を専門とするSleeping Smart子育てサロンとぐっすりLIVEを運営している。
公式サイト▶︎https://aya-aiba.com/ 来月には2020年12月4日(金)「花まる子育てカレッジ」にてzoomによるオンライン講演を開催。https://edupla20201204.peatix.com Instagram▶︎@aya_aiba YouTubeはこちらから
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