「幸甚に存じます」を使うときの注意点
「幸甚に存じます」を使うときには、いくつか注意すべき点があります。ここでは2つご紹介しましょう。
口語ではなくメールや文書で使う
「幸甚に存じます」はビジネス文書や公の文書、またメールなどの書き言葉として使います。同じ意味の言葉を口語として使う場合は、「嬉しく存じます」が一般的です。「幸甚に存じます」はある程度、使い方が決まっているので、先ほど上げた例文を参考にするとよいでしょう。
社外や目上の人に使う
「幸甚に存じます」は上司や目上の人に使う言葉で、同僚や部下に使うにはふさわしくありません。
また、ビジネスシーンで使う言葉とはいえ、社内で使うことはほとんどないでしょう。社内においては「〜してくれてありがとうございます」や「〜してくださって嬉しく存じます」で十分です。ただし社内であっても、役職がかなり上の滅多に顔を会わせることのない上司であれば使っても構いません。
「幸甚」は基本的に社外の人に向けて使います。とはいえ社外であっても、普段から関わりの深い取引先の上司に対してはやや仰々しすぎるでしょう。社外で使う場合は、普段からあまり親しい付き合いのない人、取引先企業の役職が上の人、また挨拶文のような改まった言葉を使うべきシーンに限られます。
良い意味の言葉ですが、使うシーンや相手を考えて使う必要がある言葉であることを知っておきましょう。
「幸甚に存じます」を英語に訳すと?
「幸甚に存じます」は「〜していただけると」という仮定の意味を含んでおり、そのため英語も、wouldやcouldを使った仮定法を使います。
I should be very happy if you could come to lunch tomorrow.
(明日ランチに来てくださると幸甚に存じます)This will be held during the busy end-of-the-year season, but I would appreciate it if you could attend.
(年末の忙しい折ですが、ぜひお越しいただけましたら幸甚に存じます)
「幸甚に存じます」を言い換えると?
「幸甚に存じます」は使う場面が限られる言葉で、普段の会話や直属の上司、同僚や部下に使うには向いていません。同じ意味でより使い勝手のいい、ほかの言い回しをいくつかご紹介しましょう。
「ありがたいです」「ありがたく存じます」
「ありがたいです」や「ありがたく存じます」も、相手が自分のためにしてくれる(してくれた)行為について感謝する言葉です。また、相手に何か依頼する場合にも使います。
たとえば「連絡をください」とストレートに依頼するよりも、「ご連絡くださるとありがたく存じます」と丁寧に伝えると印象がよくなるでしょう。社内の上司や目上の人には、「ありがたいです」ではなく「ありがたく存じます」が適しています。次に、いくつか例文を挙げましょう。
・本日中にこの文書に目を通してくださるとありがたく存じます
・明日のミーティングにご一緒できるとありがたいです
・素敵なお祝いの品をありがたく存じます。大事に使わせていただきます
「光栄です」「光栄に存じます」
「光栄です」や「光栄に存じます」は、立場や年齢を問わず名誉に思う気持ちを伝える言葉です。たとえば「お会いできて光栄です」は、「あなたに会えてとても嬉しく思います」という意味の定番表現ですが、これは年下や立場が下の相手であっても、会ったことを誇りに思うような人物であれば使うことができます。
また、自分の行動や業績をほめられる場面でもよく使う言葉です。
・ご一緒のチームで働くことができて光栄です
・このような場所でお会いできましたこと光栄に存じます
・このような名誉ある賞をいただき光栄に存じます
「幸いです」「幸いに存じます」
「幸いです」も相手に何かを依頼したりお願いしたりする場面で使います。「〜してくれると助かります、嬉しいです」という意味で、ストレートに依頼するよりも「〜してくださると幸いです」のほうが柔らかい印象となるでしょう。
「幸甚です」と同じような意味ではあるものの口語調になるため、滅多に会わないような人や格式が高い人には向いていません。このような場合は「幸甚です」がよりふさわしいでしょう。 また、「幸いです」よりも「幸いに存じます」がより丁寧です。相手やシーンによって使いわけましょう。
・お忙しいところ申し訳ありませんが、ご都合のよいときにご連絡いただけると幸いです
・明日の朝一番でお電話いただけると幸いに存じます
「幸甚に存じます」を正しく使えるようになろう
「幸甚に存じます」は普段の会話では使わない言葉ですが、ビジネスシーンではメールや公の文書でよく目にします。「嬉しいです」とポジティブな意味ではあるものの、相手に何かを依頼するときに使うこともあるため、使うときは注意が必要です。
「幸甚に存じます」のように、「相手が目上の人だからとりあえず丁寧な言葉を使えばいいだろう」と安易に敬語を使うと間違いやすいもの。またあまりにも丁寧すぎると、ちぐはぐな印象を相手に与えてしまいます。普段からの付き合い方や相手の役職、どのような場面なのか、相手やシーンに合わせて使いわけることが大切です。
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