1日のもち時間は誰でも等しく24時間。けれど、時間の使い方や過ごし方にはその人のスタンスや個性が現れます。この連載では子どもをもち働く女性の“1日の時間割”を軸に、ひとりの女性の中の女・妻・母の3つの顔に迫ります。
竹内由恵さんの「女の時間割。」
Vol.1「女」時間〜ひとりの女性として仕事に向き合う時間〜 ←この記事
Vol.2「妻」時間〜妻として夫に向き合う時間〜
Vol.3「母」時間〜母として子どもに向き合う時間〜
タレント・35歳
竹内由恵 さん
竹内由恵さんの「女」時間をClose up 10:00@Studio
子どもが小さい今は家族の協力が不可欠。丁寧なコミュニケーションを心がけます
「東京で仕事があるときは、シッターさんに子どもを預けて夕方には静岡に戻るように予定を組みます。子どもが小さな今は周囲の協力が何より大切。まずは夫に仕事が入った相談をして、場合によっては夫の両親や私の母にも協力をあおぎます。前もってスケジュールを確認しておいたり細やかなコミュニケーションをとりながら、みんなに気持ちよくサポートしてもらえるように心がけています」
「女」時間 竹内由恵さんのとある月曜日
この連載では事前に“ある日の時間割”についてアンケートに回答してもらい、撮影シーンを構成しています。竹内さんの「女」時間を紹介します。
4:30 授乳のタイミングで起床、洗濯、シャワー、身支度、コーヒーを飲む
6:30 子どもの授乳、シャワーを浴びさせて保湿クリームを塗る
7:20 夫の実家に子どもを預けにいく
8:20 新幹線で東京へ
9:30 一時間半ほどで到着
10:00 撮影へ
12:00 昼食
14:00 撮影終了
15:00 新幹線で静岡へ
16:30 実家に子どもを迎えに行く
17:30 授乳、洗濯を取り込む、子どもの相手
19:00 子どもをお風呂に入れる、授乳
20:00 子ども就寝
21:00 つくり置きのおかずなどで夕食づくり
22:00 夫帰宅、夕食
23:00 白湯を飲んで私だけ先に就寝
新生活に飛び込んでみて改めて気づいた仕事への熱い想い
“個人のキャリアの8割は、予想しない偶発的な出来事によって決定される”。これはキャリア理論の第一人者、クランボルツ教授が説いた言葉。テレビ局アナウンサーを経て、新たな道を歩み始めた竹内由恵さんも、偶然のタイミングや起きた出来事を活かしながら仕事人生を切り開いてきた。入社以来、音楽番組やスポーツ番組で活躍したのち、報道番組のメインキャスターに抜擢。33歳になった年の3月に結婚。“ここでの仕事はやりきった”という思いから12年勤務してきたテレビ朝日の退社を決意して、9月に『報道ステーション』のメインキャスターを卒業。12月には会社を辞めて夫の勤務地である静岡での暮らしをスタートさせた。気持ち的につらいこともあった妊活を経ての妊娠、出産。子育てをしながらの再始動の中で、仕事に対するビジョンも変わったという。
「これまでの人生も予想外の展開やタイミングで、何かを選んだり覚悟を決めたりすることを前向きに楽しむところがありました。人との出会いによって思いがけず邁進してきたアナウンサーの道でしたが、自分の中ではもっと新しい境地にたってみたい、違う景色も見てみたいという気持ちが高まっていたんです。そんなときに“自分の家族が欲しい”と考える、ある意味すごくぴったりなタイミングで夫と出会って、静岡行きを決断しました。遠距離勤務は現実的ではなく、しかし仕事を辞めることに迷いもありました。でも、“ここで新しい道を歩んでいくのも楽しそうだな”という自分の心の声に、思いきって従ってみたのです。周りからは“絶対に大変だよ。人生の100%をつぎ込んできた仕事がなくなって、友達もいない土地でご主人も仕事で忙しそう。落ち込むことも多いんじゃないかな”と心配をされました。でも、たとえそうであっても経験したい。エイヤッ!と踏み切るような気持ちで新生活に飛び込んでみたのです」
いざ始めてみると、竹内さんの周囲や友人の想像どおりに落ち込む日も少なくなかった。“暇になったこの時間をどうすればいいのか”“今日も何もしないで1日が終わってしまった”と、ひとり悶々とする時間の中で、仕事に対する想いを再確認する。
「退社したときには“優先すべきは結婚して家族になること。だから一緒に住むことがとても大切”と考えていました。でも、やっぱり仕事はしていたい。自分にとって仕事があるのはむしろ心身のバランスがとれることだとしみじみ実感をしたんです。そこで静岡を拠点に、まずはフリーアナウンサーとして再始動。もともと子どもができても仕事は続けたいと考えていた気持ちが、ここではっきりした感じがしました」
何気なく始めたエッセイ漫画は自分の新しい可能性
自分が本当にやりたいことは何なのか。心地のよい生き方とはどういうものなのだろう。立ち止まって悩む中で見つめ直し、じっくり考えることで発想が転換。視野も大きく広がった。
「与えられた無限な時間をどう活かすのか。とにかく新しいこと、やったことのないことに次々チャレンジしてみたんです。たとえばパッチワークなどの趣味をしたり、大好きなカフェめぐりをしてみたり。コーヒーを焙煎から学んでドリップマスターの資格も取得しました。いつか景観が良い場所に自分のカフェを開きたい。心地のいい空間で、おすすめの生豆で、美味しいコーヒーを提供してみたいと、夢もいろいろふくらみました(笑)。
中でも大きかったのは、インスタグラムでエッセイ漫画を描き始めたことでした。実は局アナ時代から、うっすらとエッセイを書きたい思いがありました。ちょっとやってみようと軽い気持ちでふだん感じていることを発信したら、どんどん楽しくなってきて。“共感しました”というメッセージをいただいたときに、逆に私が勇気づけられたことにはっとしました。また、読んでくれた方がくすっと笑ってくれることにも意味があるのだとも。正直なところ、それまで少しカッコつけた発信をしていたのですが、肩の力を抜いた、こんなにのんびりした漫画でもいいんだ。素の私も受け入れてもらえたんだという、発見と喜びがありました」
局アナ時代は世の中の動きや人の魅力を伝えるアナウンサーの仕事が大好きで、“担当番組をひとつでも増やしたい”と、仕事外の時間にスポーツの現場に何度も足を運んで、ガッツをアピールしたことも。それが『世界水泳2011』など多くのスポーツ番組のキャスターを任される、ひとつの分岐点になったと振り返る竹内さん。静岡暮らしの今は、自分が描いたエッセイ漫画を通じて、社会との新しいつながり方を実感している。
「20代までの自分は、どんな形であれ、より早く、より多くの人に認められたいという一心で仕事をしていた気がします。今は、自分の考えや気持ちを発信するエッセイ漫画が生活のハリになっている。また少し別のフェーズにあることを感じています。これからは子育てや家事と仕事を両立させながら、自分のペースで自分のできることを丁寧にやっていきたい。静岡暮らしでのさまざまな経験を、仕事につなげていけたらいいなと思っています。それにつれて、これまでなんとなく自分の中でもっていた“自分はアナウンサーであるべきだ”という意識は、もう違うんじゃないかと思えてきました。とらわれていた自分自身を解き放てるかもしれないという期待も込めて、これからは幅広い活動をしていきたいと考えているところです」
自分にとって仕事とは、自己実現を通して社会とつながること。その形が静岡での暮らしを通して新しいものになった、と語ってくれた竹内さん。Vol.2の「妻」時間では、夫との生活から見えてきた“妻としての顔”を明かしてくれます。
竹内由恵
1986年、東京都生まれ。子ども時代に父の仕事でアメリカやスイスで海外生活を5年経験後、高校は日本の進学校で学び、慶應義塾大学に入学。2008年にテレビ朝日アナウンス部に入社。同年『ミュージックステーション』のサブ司会に抜擢され、『やべっちFC』や『世界水泳2011』などスポーツ番組のキャスターを経て、『スーパーJチャンネル』や『報道ステーション』などのニュース番組のキャスターとして活躍。33歳で結婚を機に退社し、夫の勤務地である静岡での暮らしをスタート。35歳で長男を出産。妊娠中からインスタグラムでマタニティライフや静岡での暮らしをイラストエッセイとして発信。その率直でユニークな内容が注目を集めている。趣味はカフェ巡り。大好きなコーヒーについて学ぶため、昨年UCCドリップマスター資格も取得。
インスタグラム:https://www.instagram.com/yoshie0takeuchi/
撮影/眞板由起 スタイリスト/瀬上裕香 ヘア&メーク/窪田健吾(aiutare) 構成/谷畑まゆみ
ジャケット¥35,200・フレンチスリーブのシャツ¥26,400・スカート¥28,600(DES PRÉS<デ・プレ>)ネックレス¥24,200・ピアス¥17,600(petite robe noire<プティローブノアー>) リング(竹内さん私物) 〝メゾン ヴァンサン〟のバッグ¥24,200・〝ネブローニ〟のパンプス¥51,700(フラッパーズ)
<協力社リスト>
DES PRÉS 0120-983-533
petite robe noire 03-6662-5436
フラッパーズ 03-5456-6866