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「感謝します」の敬語表現を紹介
「感謝します」という言葉は、名詞の「感謝」と、動詞の「する」という言葉の丁寧表現「します」を組み合わせたものです。そのため、丁寧な印象は与えますが、感謝する相手への明確な敬語表現ではなく、相手を尊敬する気持ちを伝える場合には適した表現とはいえません。
■感謝いたします
「いたします」という言葉は「する」という言葉の謙譲語である「いたす」に丁寧表現の「します」を組み合わせたものです。「感謝いたします」と言えば、感謝する自分を低めて相手を尊敬することができるので、敬語表現としてもふさわしいといえるでしょう。例えば次のように使用します。
・今日はお越しくださり、ありがとうございました。感謝いたします。
・素敵なカードとお花を送ってくださり、感謝いたします。
■「感謝致します」は間違い
文章でも「感謝いたします」という言葉は用いることができますが、「感謝致します」と漢字で表現するのは誤りです。ひらがなで「いたします」というときは名詞などにつけて動作を示す補助動詞であり、この場合のように「感謝」という名詞につけて「感謝する」という動詞を表現することができます。
しかし、漢字で「致します」と表現するときは補助動詞ではなく通常の動詞「致す」の丁寧形になってしまい、助詞などをはさまずに「感謝」などの名詞に直接つけることはできません。「致す」という言葉は「届くようにする」や「引き起こす」、「全力で行う」などの意味がります。例えば「努力を致す」や「祖国に思いを致す」、「不徳の致すところです」などのように使うため、「感謝致します」とするのは誤りといえるでしょう。
なお、パソコンなどで「いたします」という言葉を打つと、本来の「致す」の意味ではないときにも「致します」と変換されることがあります。また、「いたします」と変換されても「あまりひらがなばかり使うのは幼稚に思われるのではないだろうか」とあえて「致します」に変換し直すケースもあるでしょう。しかし、漢字を多用することが正しい日本語表現ではありません。変換後に必ず意味を確認し、正しいシチュエーションで「致します」を使うようにしましょう。
■感謝申し上げます
「いたします」は謙譲語表現なので、話し手を低めることで結果として相手を高めます。「いたします」をさらに丁寧にした表現として「申し上げます」があり、より丁寧かつへりくだった印象を相手に与えることができるでしょう。
例えば「感謝いたします」よりも「感謝申し上げます」というほうがより丁寧な印象のため、公共の場で話すときや、目上の人や取引先の人に話すときにも用いることができます。次のように使ってみましょう。
・この度はお集まりくださり、真に感謝申し上げます。
・本当にありがとうございました。重ねて感謝申し上げます。
「感謝します」を最上級の表現にするには
「感謝します」という表現を敬語にした「感謝いたします」や「感謝申し上げます」を用いれば、相手に対する感謝の気持ちとへりくだる気持ちを同時に表現できます。さらに最上級に相手に対する感謝の気持ちとへりくだる気持ちを表現するためには、「感謝いたします」や「感謝申し上げます」に強意の言葉を付け加えたり、別の表現を使ってもよいでしょう。主な表現を6つ紹介します。
・深く感謝いたします
・心より感謝いたします
・心からの感謝を申し上げます
・感謝に堪えません
・心よりお礼申し上げます
・お礼の申し上げようが(も)ございません
■深く感謝いたします
感謝の気持ちが深いことを示すために、「深さ」を強調できます。「深く」と付け加えることで、一通りの感謝ではないこと、また、ありがたいという思いが強いことを示せるでしょう。例えば次のように使ってください。
・皆さんのご尽力でスケジュール通りに作業を終えることができました。深く感謝いたします。
・この度はご連絡いただき、このような素敵なパーティーに参加できました。深く感謝いたします。
■心より感謝いたします
「口先だけで感謝しているのではない」ということを示すために、「心より」をいう言葉を付け加えられます。ぜひ「心より感謝いたします」と使ってみてください。
・こんな素敵なペンダントをいただくなんて……。心より感謝いたします。毎日使います。
・今日は本当に楽しかったです。心より感謝いたします。
■心からの感謝を申し上げます
あまりにも短い言葉では、感謝を十分に伝えることができないと感じることもあるでしょう。特に文章にして表現するときは、「感謝いたします」のようにあまりにもシンプルに書いてしまうと、文法的には間違っていなくても、丁寧さに欠けると感じることがあるかもしれません。
感謝するという言葉を丁寧に表現したいときは「心からの感謝を申し上げます」と伝えます。例えば次のように使ってみてください。
・この度はお祝い金をいただき、心からの感謝を申し上げます。子供も喜んでおります。早速、欲しがっていた通学バッグを買わせていただきました。
・本当にチャーミングな人を紹介してくれて、楽しい会話ができました。心からの感謝を申し上げます。
■感謝に堪えません
「感謝する気持ちが大きい」ということを「感謝に堪えません」と表現できます。文章としても使えますので、メールやお礼状などに用いることもできるでしょう。
・細かなところに至るまで、お気遣いを感じました。感謝に堪えません。本当にありがとうございました。
・家に帰ったら大きな花束が届いていて、驚きました。今日は素敵なディナーをご馳走になったことだけでも感謝をしておりましたのに、本当に感謝に堪えません。
■心よりお礼申し上げます
「申し上げます」という言葉は「する」だけでなく「言う」の謙譲語表現としても使えます。ぜひ適切なシーンで「お礼を言う」の謙譲語表現である「お礼申し上げます/お礼を申し上げます」を使って表現してみましょう。
・この度は本当にお世話になりました。心よりお礼申し上げます。
・遠いところまで足を運んでくださり、心よりお礼を申し上げます。
■お礼の申し上げようが(も)ございません
「感謝しすぎてお礼の言葉が出てこない」という意味の言葉を使うことでも、「感謝いたします」を最上級に伝えられます。もちろん「お礼が言えない」=「感謝していない」という意味ではありませんから、安心して使ってください。
なお、「言葉も」ではなく「言葉が」でも同じ意味として使えます。
・今日は本当に何から何までお世話になりました。お礼の申し上げようが(も)ございません。
・素敵なワンピースを仕立ててくれてありがとうございます。本当にお礼の申し上げようが(も)ございません。
「感謝します」の言い換え表現
「感謝します」とは感謝をしているという状態を示す言葉ですので、厳密に言えば、お礼の表現かどうか分かりにくくなってしまいます。分かりやすくお礼の気持ちを示すためには、次の2つの表現を使えるでしょう。
・ありがとうございます
・お礼申し上げます
■ありがとうございます
「ありがとうございます」はもっともシンプルなお礼の言葉です。「ありがとう」という言葉には丁寧な表現が含まれないので、お礼を示すことはできても、相手に対する尊敬の気持ちを示すことはできませんが、「ございます」をつけることで感謝と尊敬の両方を表現できます。日常的に使用できる言葉ですので、目上の人や先輩、取引先の人などに感謝の気持ちを伝えたいときは「ありがとうございます」を使うようにしましょう。
・資料を準備してくださったのですか!本当に助かります。ありがとうございます。
・発表会にお越しいただき、本当にありがとうございます。