絶対起こるべきではないことが万が一起こってしまったとき
CAの仕事には、快適な空の旅を提供するということ以外にもフライトを安全に遂行させるという大切な任務があります。
そのため、いちばん最初に受けるイニシャルトレーニングでは、機内で想定されるさまざまなケースの対処方法を学びます。
その中でもいちばん危険とされているケースのひとつが火災。万が一機内で火災が発生し、自分たちでの消火が難しいと判断されるようなことがあった場合、そのタイムリミットは約20分だといわれています。
そのため絶対に火災を起こさせないということが大前提のもと、それでももし予測できない事態が原因で何かが燃えてしまうようなことがあった場合、もっとも重要になってくるのが火元の早期発見。
そこで飛行中、CAたちが客室パトロールするとき頼りにしているのが、自分の「聞 (Wén)」の力。
中国語で「聞 (Wén)」には「におう」という意味も
客室で煙をいち早く察知するためには、やはりまず「におい」に気づくとをいうことが大切になってきます。
「有煙味! 你有沒有聞到? (煙のにおいがする! におうでしょ?)」
このように、煙らしきにおいに気づいたときには、まわりのCAたちにもすぐさまそのことを伝え、においの原因究明に急ぎます。
ちなみに、中国語の「聞 (Wén)」には「聞く」という意味以外にも「におう」という意味もあります。どちらかというと、中国語で「聞 (Wén)」という言葉を使うときには「におい」のことを指していることが大半で、「聞く」といいたいときには通常「聽/聴 (Tīng)」という言葉を使います。
また、日本語でも感覚を働かせて識別するとき、たとえば「香をきく」や「酒をきく」というときには「聞」という字を使うことも。
この起こるべからず事態に備え、CAたちは1年に一度行われるライセンスの更新訓練で、化粧室での火災、貨物室での火災を想定した緊急着陸/着水のシミュレーションを行います。
高度1万メートルの密室での火災、いくら訓練とはいえ、毎回みな気をしっかりと引き締めて挑んでいたことをこの「聞 (Wén)」という字を見ると思い出します。
【続】
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ライター
有田 千幸
外資系航空会社のCA、建築設計事務所の秘書・広報を経て美容ライターに。ニュージーランド・台湾在住経験がある日・英・中の トリリンガル。環境を意識したシンプルな暮らしを心がけている。プライベートでは一児の母。ワインエキスパート。薬膳コーディネーター。@chiyuki_arita_official