スピンオフとは“派生作品”を意味する言葉
スピンオフとは、派生作品を意味する言葉です。もとになる作品があり、新たに作られた作品を意味しています。
好評を博したドラマなどではスピンオフと称した作品が作られているため、このような意味で用いられることが多いでしょう。他方でスピンオフは派生作品とは別の意味で、ビジネスシーンなどでも使われています。
ここでは、スピンオフの意味について見ていきましょう。
■ドラマやアニメ、漫画などで使われる
スピンオフはドラマやアニメ、漫画などでよく使われる言葉です。派生作品や番外編という意味で使われます。ドラマやアニメがヒットすると主人公以外の登場人物も人気になることがよくありますが、これら登場人物を主人公にして作られたのがスピンオフと呼ばれる作品です。
スピンオフ作品はアメリカなどの海外ではドラマで、日本ではアニメや漫画で多く制作されています。スピンオフの言葉が普及する前は、番外編とも呼ばれていました。
■語源は英語の「spin-off」
スピンオフは英語で「spin-off」という表記です。「spin」は「回転する」という意味で、「離れる」という意味の「off」と組み合わせ、「振り落とす」と訳されます。
物が回転すると遠心力により一緒になっていたものが離れることにちなんだ言葉です。これがのちに「派生作品」や「副産物」といった意味を持つようになりました。
■類義語2つの意味と使い方
ドラマなど派生作品を意味するスピンオフには、「スピンアウト」「スターシステム」という類義語があります。スピンオフが本編に基づき、その世界観を継承して作られる作品であるのに対し「スピンアウト」は本編とは異なる世界観で、非公式に第三者が制作しているものです。
「スターシステム」とは漫画などで同一の作者が同じ絵柄の登場人物を俳優のようにして、さまざまな作品で演じ分けさせることを指します。元になる本編があるという点ではスピンオフと同じですが、スターシステムは作品ではないのが異なる点です。
“ビジネス”で使われるスピンオフの意味と事例
スピンオフは、ビジネスシーンでも使われる言葉です。ドラマなどのスピンオフとはまったく異なり、「会社から独立した別組織を作る」「子会社化する」といった意味で使われます。
戦略に基づいて組織再編を実現する方法として、特定の事業部門や子会社を切り離す方法です。独立は親会社からの出資に基づいており、お互いの資本関係は続いています。スピンオフが行われるのは「大きくなりすぎた組織をグループ企業に再編する」「リスクの高い新規事業を切り離して子会社化する」といった目的があります。
ビジネス用語としてのスピンオフにも、スピンアウトという類義語があります。この場合のスピンアウトは、切り離された別会社が元の会社と資本のつながりがなく、完全な独立企業になるという意味です。
■国内におけるスピンオフの事例
スピンオフは、古くから大企業が行ってきた方法です。代表的な事例では、1937年に豊田自動織機から独立したトヨタ自動車が挙げられます。近年では、日本電信電話から切り離されたNTTドコモ、ソフトバンクが子会社化したヤフー株式会社などが挙げられます。
スピンオフは新しい事業を創出して経済を活性化するものです。社内ベンチャー制度を設けるなど、大企業の多くがスピンオフを推進する動きを見せています。
スピンオフ税制について
2017年には、スピンオフに対する課税を繰り延べする「スピンオフ税制」が制定されています。
スピンオフは日本の経済を活性化するものですが、新会社に移転する資産の譲渡などに対する課税があり、スピンオフが広まる妨げになっていました。そこで国はスピンオフを奨励するため、一定の要件を満たしたスピンオフには元会社に対する課税を繰り延べする制度を設けたのです。
スピンオフが持つその他の意味
スピンオフは派生作品という意味以外にも、経済用語、人材マネジメント用語、科学技術用語など、さまざまな意味で使われます。
経済用語として用いられるスピンオフは前にご紹介した「元の会社から特定の事業や部門を切り離すこと」という意味で「派生作品」の意味よりも先に広まり、経済界で使われています。それぞれの意味についてご紹介しましょう。
■経済用語の場合
経済用語として使われるスピンオフは「社内の特定の事業部門や子会社を切り出して独立させること」です。スピンオフの方法には「分割型分割」と「株式分配」の2つあります。
「分割型分割」とは、特定の事業部門を分割して新しく作った会社に移転し、新規株式のすべてを元の会社の株主に交付する方法です。一方の「株式分配」は、完全に子会社を切り離して別会社とし、完全子会社の発行済株式を完全親会社の株主にすべて分配する方法です。
■人材マネジメント用語の場合
人材マネジメント用語として使われるスピンオフは、大企業で社員が持つアイデアなどに資金の支援をして事業展開するという意味があります。
企業は変化の激しい市場において業績を上げるため、社内にある人材を有効活用することも必要です。優れたビジネスアイデアに資金の支援などを行い、企業として独立・子会社化させることで事業展開を行うことをスピンオフと呼んでいます。
その具体的な取り組みが、新事業や新製品を作り出すための社内ベンチャー制度です。幅広い事業分野を持つ大企業を中心に、多く大企業で設けられています。
■科学技術用語の場合
科学技術の分野でも、スピンオフが使われます。「特定分野で開発された技術を民間に向けて転用する」という意味で使われ、軍事技術などの民間転用が代表的です。
例えば、缶チューハイに採用されている「ダイヤカット缶」とよばれるアルミ缶は、NASAの研究で生まれた極超音速機の胴体の破壊モデルを缶のデザインに応用したものです。
スピンオフの意味を正しく理解して使おう
スピンオフは「派生作品」という意味です。ドラマや漫画などの番外編といった意味で使われます。ビジネスシーンでのスピンオフは、「企業の特定の事業部門や子会社を切り出して独立させること」という意味です。
スピンオフは、新しい事業を展開して経済を活性化させる方法として、積極的に行われています。「スピンオフ」はそれぞれ異なる意味で使われるため、正しく把握して使うようにしましょう。
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