情報通信サービスおよび製造業の5%リーダーは、チームの定例会議で冒頭2~3分の雑談をルール化していました。仕事とは関係ない話しをして、場を盛り上げるのです。
会議冒頭での雑談は、対面集合型よりもオンライン会議のほうが場を温めることができていました。リーダーが一人で話すのではなく、なるべく多くのメンバーに発言させるようにカジュアルな話題を振っています。
例えば、「お昼って自炊しているの? コンビニで買ってくる派? 私はコンビニの塩おにぎりが好きでね……」と食に関する話題だと、誰もが話しやすいようです。
自分のことも披露するので、双方向の会話になります。プロ野球やゲームなどの趣味の会話には参加できないメンバーもいますが、飲食や天気の話は誰でも参加できます。
5%リーダーは、雑談をすることが目的なのではなく、雑談を通じてメンバー同士の共通点を探っているのです。何か共通点を見い出せたら一気に距離感を縮めることができるからです。
会議冒頭の雑談をふる役は、チーム内で順番に回していました。メンバーたちに順番に会話をリードさせ、自ら発言もすることで、「ファシリテーション力アップ」と「メンバーの孤立化防止」の2つの効果を狙っていました。
「雑談ルール」の効果を検証してみると…
雑談ルールを、クライアント企業25社に展開しました。定量的なルールのほうが実行しやすいと考え、「社内会議の冒頭2分は雑談をする」ということにしました。
ある流通業のクライアントでは、雑談で家族の話をしたくない人が24%いたので、他のクライアントでも家族の話題は避けるようにしてみました。比較効果を検証するために、雑談をしない会議もランダムに織り交ぜました。検証前に会議の様子を録画した企業もあるので、ルール適用前後の比較もしました。
2か月にわたるトライアルを行い、以下の結果が出ました。雑談ありの会議は、雑談なしの会議に比べて、発言数が平均1.7倍多く、発言者数は1.9倍増加。それでも予定された時間内で会議が終わる確率が45%高かったのです。
冒頭2分の雑談を入れたにも関わらず、時間内に終わるということは、以前よりも効率的に運営できているということです。
はじめに空気が温まれば発言しやすく、アイデアも出るので、意思決定が進みます。会議後に発言して、改めて議論をすることも減り、腹を割って話せる状態になると、時間効率が高まることもわかりました。
空気を読まずに発言して場を凍らせてしまうケースもありましたが、デメリットよりも、会議の効果・効率が上がるというメリットのほうが大きかったのは事実です。
「冒頭2分」という数字を入れたことで、実践しやすく、多くのクライアント企業で定着・浸透しました。
「雑談をしてください」と依頼するよりも「最初の2分だけ雑談してください」のほうが精神的ハードルが下がり、実行に移しやすかったようです。そして、この効果が口コミで社内で広がると、ルールではなく文化になっていきます。
AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
クロスリバー社長
越川 慎司(こしかわしんじ)
クロスリバー代表取締役社長、アグリゲーター、キャスター執行役員。
国内外の通信会社に勤務し、ITベンチャーの企業を経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやOffice365などのOffice事業部を統括。2017年に働き方改革の支援会社であるクロスリバーを設立。
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