第5回「子どもに言われて気づいた、親の価値観の刷り込み」
みなさんこんにちは、心理カウンセラーのヌンサリです。さて、働く女性のライフワークバランスについてアレやこれやお話させていただくことらの連載、第5回目は、「家族への無意識の刷り込みに気づく」大切さがテーマ。
皆さん、昔親に言われたことを、意識してないのにうっかり自分が言ってるな、という場面はないでしょうか。私、あります、口調まで似てたりして。言い方や表現など、養育環境からうける無意識の価値観の刷り込みの多さたるや。
自分の知らず知らずの固定観念や、偏った価値観、発見するたびガクガクと震えます。しかもそういうのって、うっかり出ちゃう!自分では「普通」と思ってたりする無意識下の刷り込み。これに自分自身で気がつくってかなり大変…だって無意識なんだもの。
そんな時家族や友達や周りの人が優しく教えてくれたりすると本当ありがたいな、としみじみ思ったお話を。今回は主役として、わたくしヌンサリの子ども“ルー“が登場します!
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子どもを自立、自律を即すため、なるべく手を貸さないようにする、っていう考えには解釈も色々あると思います。
私には、保育園児の子ども“ルー“がいます。
ルーに対して私は、「自分でできることは自分でできるように」と意識的に働きかけていました。ちっちゃな子どもに対しても、「ああっ!手助けしてあげたい、でもでも手を出しすぎてはいかん!」と、モヤモヤしながらも簡単に手助けしてはいけないと自制していたのです。
例えば我が家では、ご飯のとき、「自分で落としたものは自分で拾うんだよ。」と言ってたり。自分でできることは自分でできるようにする働きかけ、まさにそれです。
その刷り込みの結果が、予期せぬ形で現われました。先日、子どものルーと出かけた時のこと…。
ルーとお友達のレカちゃん、レカちゃんママと私、みんなでお菓子を食べようと袋を開けたとたん、ボロボロと落としてしまう私(反省)。それを見てルーが、「ママ、自分で落としたものだから、自分で拾うんだよ」と言いました。見事なまでに、ばっさり!
う、うわ。なんだろう、グサッとくる…。
すると一緒にいたレカちゃんママが、さっとかがんで、私の落としたものを拾ってくれて。ささっとホコリを払い、「あはは、ルーちゃんの言い方、ヌンサリかと思ったよぉ」なんて笑って一言。ああそうか、ルーの一言は、私が普段言っていることなんだ。さっと動いて優しくケアしてくれるレカちゃんママが、私の「『自分で拾って』で自立を促す!」みたいな観念のダメな部分を、柔らかく気づかせてくれたのです。
…いや〜ほんと、自分と言い方似てるわ〜とつくづく感じたのと同時に、やっぱり気にかけて拾ってくれようとするレカちゃんママの対応が、そのとき、とても優しくて嬉しかった。
反省した私は夜、「ルーちゃん、今日さ…」と話しかけました。
「ママがお菓子とか落とした時、
レカちゃんのママが拾ってくれたよね。
ママ、嬉しかったんだ。
自分の落としたものは自分で拾うんだよ、ってママが言ったから、
ルーちゃん、ちゃんと聞いててくれたんだよね。
ごめんね、ママそう言っちゃったけど、
やっぱり気づいて拾ってあげる優しさは大事だと思ったよ。
反省しました」
と謝りました。
5歳児の子ども、そこは、とてもあっさりです。「いいよ!今度からお友達が周りの人が何か落としたら拾ってあげる!助けてあげる!」と言って合意してくれたのでした。自分は失ってしまった、なんとも純粋な素直さを目の当たりにして感動するヌンサリ。
それ以来「ママ、落ちたよ!」と拾ったり「お手伝いしましょうか?」と以前よりも考えて言ってくれるようになったので、母は役者の如く、「わぁっ、ありがとう!気づいてくれたのかい!助かるなぁ!」と喜ぶのでありました。
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もう私たち大人ですから、素直に間違いを認めて、子どもに謝ることを難しく感じることもあるかもしれません。結構長く生きてきたし、子どもはまだ小さいから教えてあげなくちゃ、という気持ちが先立っているかもしれません。
でも私たちも人間だから感情に左右されたり、なんだか変なこと言っちゃったな…っていうときはありますよね。そのあと落ち着いてよく考えてみて、ちょっと違かったなぁということがあるなら、
「こう思ったよ、ごめんね!」
…と言ってみる価値はあり!
理由を丁寧に説明することによって、子どもも謝り方を素直に学ぶことができます。
親がちゃんと向き合ってコミュニケーションを取ろうという姿勢をもつことは、子どもも自分の気持ちや考えを自然に伝えられる手助けになりますよ。
これまでの【元国連勤務カウンセラー・ヌンサリが解説する働く女のライフワークバランス】
まずは自己紹介あれやこれや
第2回 「お酒は誰が注ぐのか?」世界と日本の事情の違い
第3回 「なにが基準で、良い奥さん?」
大学講師/研究者/カウンセラー
ヌンサリ
日本生まれ。北アメリカ、東ヨーロッパ、西アフリカなどの国連機関での勤務を経て、現在は大学講師、研究者、カウンセラーとして働く。カルフォルニア大学バークレー校、ニューヨーク大学大学院卒。東京大学大学院医学系研究科卒・博士。家族は夫と保育園児。