「五体投地」とは仏教の最高の敬礼
「五体投地」とは仏教徒にとっての最高の敬礼方法です。
【五体投地:ごたいとうち】
仏教徒が行う最高の敬礼法。
両ひざ・両ひじを地に着けて伏し、さらに合掌して頭を地につける。
接足作礼(さらい)。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「五体投地」は地面に額、両ひじ、両ひざをつけるもっとも丁寧な拝礼とされています。日本では僧侶以外の一般の人間が行うことはほとんどありません。しかし、近年はヨガのポーズとして一般的に広まっているため、「五体投地」という呼び方も浸透してきています。
ここでは「五体投地」の概要や、正しいやり方からヨガにおける「五体投地」を解説します。
「五体投地」の正しいやり方
「五体投地」のやり方は宗派によってさまざまですが、チベット仏教の「五体投地」の基本を説明しましょう。まず直立し、胸の位置で両手を合わせて合掌のポーズをとり、次に合わせた両手を頭の上に持っていきます。
さらに両手を眉間、喉、胸の位置へと順にゆっくり下ろします。体が曲がらないように、真っ直ぐ立った状態を維持するのがポイントです。続いて両手と両足を地面につけ、さらに額を地面につけます。
この状態はあまり長くは続けません。立ち上がったら、胸の位置で合掌のポーズをとります。ここまでで1回の拝礼が終了です。このポーズを3回、7回、21回、108回など、定められた回数分、繰り返し行います。
注意すべきポイントは体を揺らさない、緩慢な動きにならないようにするなどです。
宗派によって異なる「五体投地」
「五体投地」のやり方は仏教の宗派や寺によって異なります。例えば、奈良の東大寺で開催される二月堂の修二会で練行衆が行う五体投地はかなり独特です。
一般的な「五体投地」は額と両ひじ両ひざを地面につけて拝みますが、練行衆の「五体投地」は跳びはねるように体を浮かし、片方のひざを激しく板に打ちつけます。その振動が脳天に伝わるくらい激しく動いて、しびれた状態で観音菩薩に祈る荒々しい拝礼が特徴です。
映画『ラサへの歩き方』に登場する「五体投地」
チベットのカム地方マルカム県プラ村の11人の村民が「五体投地」をしながら巡礼の旅をする様子を描いているのが映画『ラサへの歩き方』です。「五体投地」し続けた期間は約1年間で、距離は約2,400キロでした。
ロードムービーは数多くありますが、「五体投地」で進んでいく作品はおそらくは他にはないでしょう。映像からはチベット仏教の根底にある「他者のために祈る」という教えやチベットの人々の生き方がどのようなものかということも伝わってきます。「五体投地」の本質が見えてくる作品といえそうです。
ヨガのポーズとしても普及
「五体投地」はヨガのポーズとしても広く普及しています。もともとヨガは古代インド発祥の心身訓練法であり、「五体投地」は古典的なヨガでも行われていました。
シンプルな動作で構成されていて、誰でも簡単にできるものでありながら、足腰を鍛えられるなどの効果があるため、多くのヨガ教室でレッスンの一環として取り入れられています。
「五体投地」の使い方と例文
「五体投地」という言葉が登場するのは、たいていは宗教的な行事やヨガの健康法にまつわる話に関連してでしょう。謝罪を態度で表すという文脈で使われることもあります。「五体投地」の使い方と例文をご紹介しましょう。
【例文】
・最近通い始めたヨガ教室では【五体投地】を108回繰り返すのがノルマとなっています。
・彼女を裏切ってしまったことへの反省の意を表すために、彼は【五体投地】のポーズで彼女にひたすらあやまり続けていた。
「五体投地」の類義語
「五体投地」にはいくつかの類義語があります。基本的には額や両ひじ両ひざを地面につけるのと似た姿勢、もしくは同じ姿勢を表す言葉です。ここでは「接足作礼」「土下座」「稽首」という3つの類義語をご紹介しましょう。
それぞれの言葉の意味とともに、どんな姿勢を表しているのか、どんな意味を持っているのかということも含めて説明します。