早春に、公園やお庭でふわっと「沈丁花」のいい香りを嗅いだことがあるという方も多いのではないでしょうか? その上品な香りを嗅いで、春の訪れを感じることもありますよね。しかし、香りばかりが記憶に残り、詳しい生態については知らないことも多いかもしれません。
そこで本記事では、沈丁花の特徴や育て方、花言葉などを解説します。「沈丁花の香りが好き」という方は、ぜひこの機会に沈丁花について詳しく知っておくのはいかがでしょうか?
「沈丁花」の由来や読み⽅
「沈丁花」の基本情報からチェックしていきましょう。
由来と読み⽅
「沈丁花」は「じんちょうげ」と読みます。「ちんちょうげ」と読んでも間違いではありません。漢名は「瑞香」、別名は「輪丁花」とつけられています。
「沈丁花」の名の由来は、香りが「沈香」に似ていること、十字型の蕾の形が「丁子(クローブ)」に似ていることから付けられました。「沈丁花」は、中国ヒマラヤ地域が原産で、漢方薬としても用いられてきた植物です。
【沈丁花】じんちょうげ
ジンチョウゲ科の常緑低木。よく分枝し、つやのある倒披針形の葉を密につける。早春、紅紫色または白色の香りの強い花を多数開く。中国の原産で、雌雄異株であるが、日本のものはほとんど雄株で実を結ばない。名は、花の香りを沈香(じんこう)と丁字(ちょうじ)にたとえたもの。瑞香。《季 春》「―春の月夜となりにけり/虚子」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「沈丁花」の特徴
「沈丁花」が花を咲かせる季節は、2月から3月にかけて。春の季語としてもよく使われます。「沈丁花」は、寿命があまり長くはありません。短ければ10年、長くても30年ほどで枯れてしまいます。
ですので、枯れる前に挿し木で増やしておく必要のある花でもあります。それでは、どんな特徴があるのか見てみましょう。
三大香木
「沈丁花」は夏の「梔子(くちなし)」、秋の「金木犀(きんもくせい)」と合わせて三大香木に数えられ、香りがいいことで知られている植物です。
香水で「沈丁花」の香りと謳われているものがあります。ただ、毒を含んでいることから精油の抽出が難しく、「沈丁花」の香水といわれているものは、人工成分で作られています。天然由来の「沈丁花」の香水を作成するのは、困難なのだそうです。
また、この香りには「リナロール」という成分が含まれ、鎮静や抗不安、抗菌効果があるといわれています。多くの人が、この香りに癒されるのは、成分からも証明されていますね。
花びらのない花
「沈丁花」は、花びらがありません。花弁のように見えている部分は、肉厚な萼(がく)なのです。この為、「沈丁花」は長持ちするのです。
また、「沈丁花」は剪定をしなくても、丸くこんもりとした樹形を保つことが出来る植物。全体的に育て方は難しくなく、鉢植えでも育つので、チャレンジしてみるのも良いでしょう。昔から民間療法で、花の部分を煎じて、歯痛や口内炎の薬として用いられていました。
雌雄異株
「沈丁花」は、雄株と雌株に分かれている雌雄異株の植物です。日本では基本的に雄株なので、雌株を見られることは稀ですが、雌株は赤い実をつけます。この赤い実は猛毒ですので、決して口にしてはいけません。毒があるからこそ、魅惑的な香りがするともいわれていますので、鼻で香りを嗅ぐだけにしておきましょう。
耐寒性が高い常緑低木
沈丁花は、1年中葉が落ちない常緑低木で、冬の寒さにも比較的強い耐寒性を持っています。日本各地の気候に適していて、寒冷地でも元気に育つため、多くの庭や公園で見かけることが多いですね。葉は濃い緑色で光沢があります。
品種
沈丁花にはいくつかの品種があり、それぞれに特徴があります。代表的なのは、白花沈丁花と赤花沈丁花です。白花沈丁花は、純白の花を咲かせ、香りが特に強いのが特徴です。赤花沈丁花は、外側が赤紫色で内側が白い花を咲かせ、コントラストが美しい品種です。また、斑入り沈丁花という品種は、葉に白や黄色の斑が入り、観葉植物としても人気がありますよ。
「沈丁花」の育て方
沈丁花は、日当たりのいい場所や半日陰で育てるのが一般的です。直射日光に長時間さらされる場所は避けて、特に夏の強い日差しは軽く遮るようにしましょう。土壌は、水はけが良く、適度に湿り気を保ってください。植え付けは春か秋が適期で、植えた直後はたっぷり水をあげて、根がしっかり張るまで乾燥させないようにしましょう。
また、沈丁花は寒さに強いですが、極端に寒い地域では冬の間、根元をマルチングして保護することをお勧めします。肥料は、春と秋に緩効性のものを少量与えるといいですね。病害虫の心配は少ないので、比較的手入れが簡単です。
「沈丁花」の花言葉
「沈丁花」の花言葉は、たくさんあります。中には英語名からつけられた花言葉も多いので、そちらも次の項目で紹介しますね。