選挙を戦うための「呉越同舟」
政治理念が違う政党が、普段は互いの政策の批判や指摘などばかりをしている様子に、うんざりしている有権者も多いかもしれません。しかし、ひとたび選挙となれば、大きな敵(例えば与党)と戦わないといけないので、互いに協力し合うということは、度々見られる現象です。成功するかどうかは別として、このような状況は「呉越同舟」と言えます。
苦境に立たされる業界においては、「呉越同舟」で協力しなくてはならない
業界そのもののピンチの中では、同業同士でいがみ合ったり、足の引っ張り合いをすることは命取り。このような場合には、「呉越同舟」で乗り越えなくてはなりません。業界そのものが衰退や消滅してしまえば、元も子もないからです。
普段は仲が悪い部長同士も、悪だくみする時だけは、「呉越同舟」で協力しあう
これは、普段は対立している2人も、良からぬことを計画する時だけは、協力しあう状態を表しています。時代劇でよく聞かれる「おぬしも悪よのう…」というセリフが聞こえてきそうな状況です。
「呉越同舟」の類語や⾔い換え表現は?
「呉越同舟」の類語や言い換え表現、よく似た四字熟語についても、チェックしておきましょう。
楚越同舟
「楚越同舟」は、「呉越同舟」の「呉」が「楚」に置き換わった言葉です。楚も国の名前で、呉と同じように越の国と仲が悪かったことから、「楚越同舟」は「呉越同舟」と同じ意味として使われます。
同舟相救う
「同舟相救う」は、「どうしゅうあいすくう」と読み、同じ舟に乗り合わせた者同士は互いに助け合うという意味です。
昨日の敵は今日の友
昨日までは敵同士だったのに、事情が一変して今日は味方になっているという意味の言葉です。人の心、人間関係が移ろいやすいものであることを言い表しています。
英語表現は?
「呉越同舟」の英語表現にはどのようなものがあるのでしょうか。「Woes unite enemies」、「Woes unite foes」は、「災いは敵同士を団結させる」という訳となり、「呉越同舟」と同じ意味です。この「woes」は「woe」の複数形で、災難を意味します。また、「enemies」、「foes」は敵という意味で、それぞれ「enemy」、「foe」の複数形です。
中国語表現は?
「呉越同舟」は、もともと中国の『孫子』に由来がある故事成語です。では、中国ではこの「呉越同舟」は、どのように表現されるのでしょうか。
「呉越同舟」は、中国では「吴越同舟」と書きます。日本で「呉越同舟」は、仲の悪い者同士が協力するという意味の他、仲の悪い者同士が居合わせるという意味も。ですが、中国の「吴越同舟」には、仲の悪い者同士が協力するという意味はありますが、仲の悪い者同士が居合わせるという意味はありません。両者には、このような違いがあります。
発音についても少し触れておきましょう。中国語には4つの声調(高くて平らな第1声、上がり調子の第2声、低くおさえる第3声、下がり調子の第4声)があり、この「吴越同舟」を中国語の発音pinyin(ピンイン)を使って表すと、「Wú Yuè tóng zhōu」となります。
まとめ
大きな目的のためには、敵同士であっても、手を携えて困難に立ち向かう「呉越同舟」。社会に出れば、たとえ不本意でも、このような状況に遭遇することがあるかもしれません。厳しい社会では、大人の事情と割り切って、協力して乗り越えることも必要です。