「杜若」ってどんな植物?
初夏になると水辺に紫色の可憐な花を咲かせる「杜若」。日本の四季を彩る植物の一つですね。あやめや菖蒲と見た目がそっくりなので、植物園などで見かけてもイマイチ違いがわからないという方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、「杜若」の特徴や花言葉、あやめや菖蒲との見分け方のポイントを紹介します。
特徴
「杜若」は「かきつばた」と読みます。「杜若」はアヤメ科の多年草で、5月〜6月の初夏に花を咲かせます。花の大きさは中輪、背丈は30cm〜90cm程度。青紫色や白色で、花の中央あたりに白い筋が入っています。主に湿地や水辺に群生し、日本以外にも中国や朝鮮半島、シベリア東部にも分布します。葉の形は細長く、葉脈があまり目立たないことも特徴です。
名前の由来は、古来花の汁を使って布を染めたことから「書き付け花」と呼ばれ、それが転じて「かきつばた」になったといわれています。アヤメ属の植物の中では、最も古くから栽培され、俳句の季語や家紋にも用いられています。特に江戸時代には園芸品種が多く作られ、尾形光琳が描いた「燕子花図屏風」では、「杜若」が印象的に描かれ、国宝となっています。
また、能にも『杜若』という演目があることは知っていますか? 伊勢物語を題材にしたもので、諸国をめぐる僧侶が沢辺に咲く「杜若」を愛でていると、杜若の精霊である一人の女性が美しい姿で現れ舞うといったストーリーです。凛とした「杜若」の姿は、古くから多くの人の心を捉え、イマジネーションを与える存在となっていたことが感じられますね。
育て方と種類
「杜若」には、50種類ほどの園芸品種があります。耐寒性・耐暑性ともに優れた植物です。アヤメ属の中でも最も水を好み、日当たりの良い水辺が適しています。自宅で育てる場合、水の深さは、5cm〜15cmくらいで、一年中乾かさないことがポイントです。夏場は、水温が上がりすぎないように注意しましょう。
主な品種には、「舞孔雀」「裕美」「朝の袖」などがあり、「舞孔雀」は、濃い青色で、花びらの中央は白く優美な花を咲かせます。「裕美」は、紫色の花で、葉にクリーム色の模様の入った品種です。「朝の袖」は、赤みの強い紫色で、大輪の花を咲かせます。茎や葉も太く、花びらも分厚いことが特徴です。
「杜若」の花言葉とは?
「杜若」の花言葉には、「幸運が訪れる」「高貴」「思慕」などがあります。色別の花言葉は特にないようです。また、英語では「杜若」を含むアヤメ科の植物が「アイリス」と呼ばれ、「メッセージ」「希望」「信頼」という花言葉がつけられています。ちなみにイエローアイリスには「復讐」という怖い花言葉が名付けられていますが、日本の「杜若」には、そのようなものはないようです。
幸運が訪れる
「かきつばた」は、漢字で「燕子花」とも書きます。その花姿が「ツバメ(燕)」に似ているからだそうです。ツバメは、幸せを運んできてくれる縁起のよい鳥ということから「幸運が訪れる」という花言葉が生まれました。
高貴
「杜若」の花言葉には、「高貴」もあります。濃い紫色の花姿と、すらっと伸びた茎は品の良い言葉がよく似合いますね。「杜若」は、最古の和歌集『万葉集』にも登場するほど、昔から日本人に親しまれてきた植物です。かつて紫色は、高貴な身分の人のみが身に付けられる特別な色でした。このことから「杜若」にも「高貴」という花言葉がつけられたとされています。
メッセージ
こちらは「杜若」を含むアヤメの英語の花言葉です。この花言葉はギリシア神話が元となっています。神々の伝達役を務める神イリスは、自分の姿を虹に変えてもらうために、ゼウスの妻ヘラに聖酒をかけて欲しいと頼みます。そして地上に溢れた聖酒からアヤメの花が咲いたという神話が「メッセージ」という花言葉の由来となっています。
「杜若」とあやめと菖蒲の違いとは?
「いずれ菖蒲か杜若」という言葉があるように、「杜若」と菖蒲、あやめの花は見た目がそっくりですよね。なおかつ花が咲く時期も重なるため、植物園や公園で見かけても、どの花なのか見分けがつかない方も多いはず。ここでは、見た目がそっくりな3種類の花の特徴と見分け方のポイントを紹介します。