賽は投げられた(さいはなげられた)
「乾坤一擲」と同様に、運命をかけた一大決断を表す類語として「賽は投げられた」という言葉があります。これは、古代ローマの英雄カエサル(シーザー)が、ルビコン川を渡る際に発したとされる有名な言葉です。「一度決断を下し行動を起こした以上、もはや後戻りはできない」という状況を意味します。
決断の結果がどうであれ、最後までやり遂げる覚悟が必要だという点で、両者は非常に似た意味を持つといえるでしょう。大きな挑戦や勝負に挑むとき、どちらも強い決意を伴う言葉です。
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一六勝負(いちろくしょうぶ)
「一六勝負」は、「サイコロを使った博打で目が1が出るか、6が出るかを賭けた大勝負」のことです。そこから転じて、「運に任せて勝負や冒険をすること」を意味します。
伸るか反るか(のるかそるか)
「伸るか反るか」は、「結果はわからないが、天に運を任せて挑戦する」という意味です。なお、「乗るか反るか」という表記も見かけますが、こちらは誤りです。
語源には諸説ありますが、そのうちの一つを紹介しましょう。南方語で地獄をヌルカ、天国をソルガといっていました。そこから転じて日本語になったといわれています。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
対義語にはどのようなものがある?
「乾坤一擲」にはそのものずばりの対義語はありませんが、反対のニュアンスを持つ表現はあります。ここでは、2つ紹介しましょう。
石橋を叩いて渡る
「石橋を叩いて渡る」の意味は、以下のとおりです。
堅固に見える石橋でも、なお、安全を確かめてから渡る。用心の上にも用心深く物事を行うことのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
頑丈そうに見える橋であっても、おそるおそる渡ることから、物事に対して慎重な様子を表しています。運命をかけた大勝負をする「乾坤一擲」とは、真逆の意味と捉えることができますね。
小心翼翼
「小心翼翼」は、「しょうしんよくよく」と読みます。意味は以下のとおりです。
[ト・タル][文][形動タリ]《「詩経」大雅・大明から》
1 気が小さく、いつもびくびくしているさま。「―として相手の顔色をうかがう」
2 細かいことにまで気を配り、慎み深くするさま。
「―謹で守らざる可らず」〈福沢・学問のすゝめ〉
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「小心翼翼」は、気が小さいこと、慎み深いことなどの意味がある四字熟語です。失敗を恐れ、あらゆる行動に細心の注意を払いながら進めることを意味します。安定を優先し、リスクを避けながら用心深く行動する姿勢は、大勝負に出る「乾坤一擲」とは正反対といえるでしょう。
英語表現とは?
最後に、「乾坤一擲」の英語表現は、どのようなフレーズがあるのかを一緒に見ていきましょう。
an all or nothing contest
“an all or nothing contest”は、「一か八かの勝負」という意味を持ちます。もちろん、「乾坤一擲」のニュアンスも含んでいるといえるでしょう。
take a chance/take chances
“take a chance/take chances”は、「一か八かやってみる」という意味。「乾坤一擲」の英語表現としても使える言い回しです。
最後に
「乾坤一擲」という言葉は、人生やビジネスにおいて、一度の大勝負にすべてをかける大胆な決断や行動を象徴する表現です。大きなリスクを取ることには不安も伴いますが、時にそれが大きな成功への道を切り開くこともあります。挑戦を恐れず、自分の信念に基づいて一歩踏み出す時、まさにこの「乾坤一擲」の精神が求められるのではないでしょうか。リスクを伴う行動には勇気が必要ですが、その先に待つ成果を信じて、果敢に挑戦してみるのもいいかもしれませんね。
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