否定的な表現で使うのが基本
「一朝一夕」は、後ろに「〜ない」という打ち消しの表現を加え、否定的な意味で使うことが一般的です。「わずかな時間で行なうのは不可能だ」「簡単にはできない」というニュアンスを含みます。
なお、「一朝にして〇〇した」と「一朝」のみで表す場合は、ポジティブな意味で使うこともあります。「一朝一夕」の使い方を例文で確認しましょう。
・万里の長城は【一朝一夕】では完成しない。
・難関な目標を達成することは、【一朝一夕】にはいかない。
・新たな言語を習得することは、【一朝一夕】の努力ではできない。
・この問題は【一朝一夕】で解決できるものではない。
・彼は【一朝】にして歌手としての名を知らしめた。
「一夕一朝」「一旦一夕」と言うこともある
「一朝一夕」の代わりとして、「一夕一朝」や「一旦一夕」を使うケースもあります。「一旦」は一朝と同じ役割をもつ言葉で、一日や一度、ひと朝という意味です。どちらも「一朝一夕」と同じ意味をもち、わずかな時間やほんの短い期間について述べる際に用いられます。
短い時間で成し遂げるのが難しいと伝える際は「一朝一夕」を使うのが基本ですが、言い換えのレパートリーとして、「一夕一朝」や「一旦一夕」も同じ使い方ができると覚えておきましょう。
「一朝一夕」の類義語と対義語
「一朝一夕」には、意味が似ている言葉や反対の意味をもつ表現が多数存在します。代表的な類義語・対義語には以下が挙げられます。
【類義語】
・迅速に
・たちどころに
・朝飯前
・お茶の子さいさい
【対義語】
・おいそれとはいかない
・ローマは一日にして成らず
「一朝一夕」の意味や使い方を理解したら、類義語や対義語の知識も身につけておきましょう。ここでは、それぞれの意味などを解説します。
類義語「迅速に」「朝飯前」など
「迅速に」は、行動や物事の進捗がスピーディーな様子を意味する言葉です。「迅速に対応する」といった形で使われることが多いです。
「たちどころに」は、すぐに実現するようなことについて述べる際に用いられます。わずかな時間を指す表現ですが、「一朝一夕」のようにネガティブなニュアンスで使われるわけではありません。
「朝飯前」や「お茶の子さいさい」は、簡単にできることを意味する表現です。「〇〇するなど朝飯前だ」「その作業は、彼にとってはお茶の子さいさいだ」といった形で使われます。
対義語「おいそれとはいかない」など
「おいそれとはいかない」の意味は、簡単には応じないことです。そもそも「おいそれと」には「言いなりになる・簡単に了承する」という意味があり、否定の言葉をともなうことで簡単には引き受けないというニュアンスに変化します。
「ローマは一日にして成らず」は慣用表現の一つです。「一朝一夕」が短い時間を表すのに対し、長きにわたって努力しなければ成し遂げられないことを意味します。
まとめ
「一朝一夕」は時間の長さを表す四字熟語で、短い時間や期間という意味です。中国の書物に由来することから、音読みで「いっちょういっせき」と読みます。
「一朝一夕」を使う際は、後ろに打ち消しの表現をプラスし、否定的なニュアンスで用いるのが基本です。似ている言葉に「一長一短」がありますが、「一長一短」は人や物事の長所・短所を表す言葉です。「一朝一夕」とは意味がまったく異なるため、誤用しないように注意しましょう。
「一朝一夕」の使い方や例文を理解し、適切な場面で使ってみてください。
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